物語りの愉しみ~摩訶不思議な南洋の島で~
『マシアス・ギリの失脚』池澤夏樹 著:新潮社文庫
1994年に刊行された池澤夏樹ロングインタビュー『沖にむかって泳ぐ』(インタビュアー新井敏記)によると、この小説の構想は、外から見た日本を描くということと、それをファンタスティックに書きたかったところから始まっているのだそうだ。その方向への促しとしてあったのが、ラテン文学のガルシア=マルケスの『百年の孤独』。マコンドという原始的な村で奇想天外な出来事が起こりまくる、いわゆるマジック・リアリズムの世界である。あのマコンドのよ