見出し画像

赤い墓標のカルマ

君はいつも僕の後ろにいる。
そして僕を見ながらいつもケタケタと笑っている。

僕が君に気づいたのは、ある晴れた後のことだった。
湖畔の水面を見ながら、午後の散歩を楽しんでいるときだった。

君は木陰から僕をじっと見つめている。
その時君は、唇をしっかり閉じたまま目は僕のほう向いていた。

その日は爽やかな風が山から湖畔にかけて吹いており何とも気持ちがいい日だった。

僕は君を見て怖がるわけではなく、ただ少し驚いた風だったと思う。

それから何日か君を見かけるようになった。そう決まりきった午後に。

友達になったわけではなかった。
だって、話したことがないんだもの。
僕はいつも湖畔の方から君を見つめ、君はいつも木陰から、僕を見つめていた。

でも僕は君のことを忘れてしまった。。

ある日を境にして。


それから何年何年も思い出すことがなかった。赤い墓標を見るまで。

あの日、真っ赤に染まった君の顔見た。
僕は必死になって家にかけ戻った。

次の日も次の日は僕は湖畔行くことはなかった。忘れようと忘れようと。僕はその町を離れた。

そしてある町に湖畔があると聞いて、久しぶりに行くことになった。
とても清々しい風が吹くところだった。
空は青くそして気持ちよく雲が流れる。僕の心を洗うかのようだった。

でも近くに真っ赤な真っ赤なとても真っ赤な墓標のようなものを見つけ、僕は咽びながら、泣いた。ずっとずっと泣いた。

ごめんねごめんごめん。

そんな僕をケタケタと笑っているんだろう君は。

#ショートショート #小説 #空想 #カルマ
#短編小説 #ショートストーリー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?