AIと賞罰 汝はヒトなりや?

なにか発明があって特許を出願する時に、発明者の名前を明記する必要があるんだけど、そこにAIの名前を書いたってんでそれは認められるのかどうなのかでやんやもめているそうな。

AIが独自の発明をした時、発明者と呼ばれるのは、人間なのかAIなのか。この問題をめぐって、各国の特許当局、裁判所を舞台に議論が続いてきた。

その議論に対して、オーストラリアの連邦地裁が7月30日、「AIを発明者として認める」との初めての司法判断を下した。

国によって特許法の細かい点は異なるんだろうけど、どの国も発明者を明記するってのは変わらないみたい。
ただしそれが人間でなくてもいいかどうかは国によって分かれる。
アメリカ、ヨーロッパ各国は発明者は人間に限ると判断してるとのこと。

発明者の表示は、自然人に限られるものと解しており、願書等に記載する発明者の欄において自然人ではないと認められる記載、例えば人工知能(AI)等を含む機械を発明者として記載することは認めていません。

これは、この件が発表された後の日本の特許庁の通知。
なので日本もAIを発明者とは認めませんよっていう立場だね。


そもそも本件の特許出願者はAI企業のCEOスティーブン・テイラーさん。
なんで発明者に自分の名前を入れなかったかについては「自分にはその発明の知識がなく、発明したのはAIだから」とのこと。

なんだか変に正直者だね。
まさかAIが後から「アノ発明ハ、ワタシの成果デス」なんて主張したりするわけないんだから、自分が考えたってことにしちゃえばいいと思うんだけどなにか別の目論見があるのかな?

そもそもこういう形で特許を得たとして、権利としてはどういうことになるのか?

AI「ダバス」が発明者だとすれば、特許を受ける権利はAIが持つことになるが、テイラー氏はその権利を譲渡されたとして、出願人になっている。

会社員が職務を通じて発明をした場合に、特許を受ける権利を会社に譲渡し、会社が出願人になることがあり、その仕組みに似ている。この会社員の立場を、AIに置き換えた考え方のようだ。

基本的には発明者=特許権利者、だけれどもこういう形で譲渡することもできる。
日本の場合だと雇用契約のときに明記されていれば社員の発明は会社に帰属する形になるみたいだし(その代わり社員には相当の利益を付与しなければいけない)

なので発明者と権利は切り離して考えることができると。
こうなってくるとなおさら、テイラーさんの名前書いときゃもめなくてよかったじゃんってなる気がする。

テイラー氏らが主張するのは、人が関与しない自律的なAI主導の発明で、AIが発明者としては認められない場合、特許性のある発明が「発明者不在」として拒否されるリスクがある、という点だ。

先に書いたように、AIの所有者であっても、その発明の中身を理解しているわけじゃないから厳密には発明者たりえない。
そういったことが理由で特許が拒否されるかもってのはまあわからんでもないけど……。


私はこれ、一つのターニングポイントなのかなって思いました。

この記事のタイトルにもした賞罰。
今回の発明者にAIの名を冠するっていうのはある種、賞にあたる。
そして、AIが賞を得ることを認めるならば罰を受けることも(責任を負わせることも)認めるのか?って議論が今後どこかで起こると思う。

例えば予測できそうなところとしては、自動車の自動運転システムかな。
人間の運転手が操作しなくても目的地まで自動で運転してくれる車。
現在、実現に向けて各社が切磋琢磨してシステムを構築しているけれど、法整備をどうするかって話も進めなくちゃいけなくて。

大きなところとして、人間が運転に全く関与していない状態で交通事故が起きた場合、責任はどこにあるのかって問題がある。

とりあえず運転はしてないけど乗ってる人間の責任にする?
でもそうしちゃうと例えばタクシーが事故った時、乗ってるだけの客にも責任があるの?って話になっておかしくならないだろうか?

製造者の責任にするか?
妥当っぽいけど、無制限に責任負わされる状態で販売する会社は出てこないんじゃないかな。

そしたらAIの責任ってことで、そのAIを破棄して終わりにする?
それで事故られたほうは納得するかな?

などなど。

AIが我々人間の認識が及ばない部分の判断までして、それでいて成果を出し始めている。
その成果を享受する場合、賞罰をどのように取り扱うか。
それはひいては「人権」のような権利をAIにも付与するという話に発展するんじゃないだろうか。

今回のニュースはそんな話の第一歩なんじゃないかなぁと感じました。



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