当たり前の話 骨盤編

前回の当たり前

「当たり前の話」を書きました。十日ほど前の話です。
そこでは腕の当たり前を書きました。少しだけおさらいをします。

腕の始まりは鎖骨です。腕を使う時、
鎖骨→肩甲骨→上腕骨→肘
という流れを意識して使おう、という話でした。

骨格をみればどう考えても当たり前な事ですが、ついつい、肘から先を使いすぎて、この鎖骨・肩甲骨・上腕骨の流れを忘れてしまいがちです。
また、かっこいい力こぶを作る二の腕の筋肉を意識しすぎるのも、流れを狂わせる大きな要因。
安易な筋トレは本当にやばい!見かけは良くても、流れが出来ず、よくありません。注意注意注意して取り組んで欲しいものです。

繋がりはパイプだし、チューブ

今、お伝えしている「当たり前」とはつながりという当たり前です。
磁石や電波、ネットなど、離れていても働きがたくさんある時代を私たちは生きています。
車はまだ空を飛びませんが、ドローンは当たり前になりました。
頭は急速に、遠隔作用を我がものにして、つい、それを基本に物事を考えがちです。

しかし、その遠隔作用も、「繋がり」があってこそです。
電話が働くのも、そこに電波の繋がりがあるからです。
心をみれば、人と人との間にテレパシーと言える繋がりがあるとも言えます。
テレパシーのような話は不思議にも見え、多くの人の興味を引き付けます。それだけ私たちの頭は進化をしています。

ただ、だからといって、直接的な繋がり、触覚的な繋がりをおろそかにしていいはずはありません。
私たちの右手と左手はある意味、テレパシーの力を持ちます。
頭で考えなくても、自然と両手が合わさり、拍手を打ちます。背中でだって、大丈夫です。
ただ、その手が自然と動くうちには良くても、イザという時、ピンチの時、頭がパニックを起こしそうな時には、無邪気で自然な左右の手の連動が亡くなったりします。
これは、筋肉が緊張し、骨の動きを邪魔しているからです。

改めて、骨の作る当たり前を自覚して、その骨の通りに使っていく。それを確かめてみてください。
その繋がりを学ぶのに、鎖骨から始まる腕は本当にわかりやすいもの。
鎖骨、肩甲骨、上腕骨、そして、肘へと力が流れるパイプが見えて来るかと思います。

骨盤は起こさない

さて、今日は腕の繋がりで学んだ感覚の応用です。
腕にあるのであれば、脚にもあるだろう。そんな話です。
ただ、肩甲骨は左右が分かれ、それぞれの腕が自由に動き、パイプ感を見つけやすいですが、脚となるとそうはいきません。

骨盤はしっかりと塊を作り、下半身の安定を与えてくれます。
骨盤がしっかりする事で、腰椎にも力を得られ、色々な事が出来るようになりますが、今日はあえて、その骨盤をばらします。

よく、ボディワークでは「骨盤を起こせ」と言われます。
これは西洋人と比べて猫背傾向にある日本人に必要と思える教えですが、形だけを西洋人に真似ても、それは後々苦労がやってくるものです。
西洋人には西洋人の進化の仕方があり、日本人には日本人の行く道があるはずです。

今日は脚の繋がりについて話をしていますが、西洋人の作る姿勢は背骨の繋がりだと思っています。
ただ、背骨の繋がりは脚や腕の繋がりを理解した先にあるものです。
今でこそ私たちの暮らしは西洋と変わらなくなりましたが、無意識に受け継がれてきているものは簡単には無くなりません。
むしろ、変に混ざってしまっているのが現代です。

西洋人になり切りたいのなら骨盤は起こした方がいいでしょう。
ただ、その前段階として、脚に繋がりを見つけ、そこに有難さを感じておきたいものです。
骨盤を起こし背骨を立たせる動きが高校生ならば、脚の流れを自覚するのは小学生みたいなもの。ちなみに腕は中学生になります。
腕や脚の繋がりからくる働きを自覚し、そこに「飽きてこそ」、次にやっと、背骨の繋がりへと行けるのです。

脚をちゃんと使い、立ち上がる。
その脚の力がなければ、無理に骨盤だけを起こす事になり、元力が足りず、背骨に負担をかける事になります。
若いうちならまだやれても、歳を重ねていき、もともと持っている日本人のDNAが発揮されるようになった時、理屈がなければ大きな怪我にもなりかねません。

とにかく、骨盤は起こさない。
常識から離れていくからこそ、見えてくるものがあります。

膝には力が溜まる

さて、骨盤を塊と見ずにばらしていく。それをしていきましょう。
腕であればこんな感じでした。
鎖骨→肩甲骨→上腕骨→肘
脚でいえばこうなります。
恥骨・座骨→腸骨→大腿骨→膝
です。

並べて書いてみますね。
鎖骨→肩甲骨→上腕骨→肘
恥骨・座骨→腸骨→大腿骨→膝
腕も脚も構造は似ています。うまく感覚をすり合わせれば、そんなに難しい事ではありません。

恥骨座骨が腸骨を「持ち上げ」、腸骨の先っぽから、ジェットコースターのように大腿骨を通って、膝に向かって「落ちて」いきます。
膝は骨盤の下にあるのが普通ですから、「腸骨から落下」という感覚はわかりやすいはずです。
恥骨座骨から腸骨へと持ち上げられれば、膝への流れは案外簡単にわかると思います。

胴体の重さが恥骨座骨に伝わり、腸骨で持ち上げられ、膝へと落下します。
するとわかるのは「力が溜まる」感覚です。
よく、「膝に水が溜まる」といいますが、力も溜まるようです(笑)。
膝に力が溜まり、それが維持される働きを私たちの脚は持っていました。

昔の日本人は膝を伸ばさなかった、と言われますが、それは、胴体の力が膝へと溜まっていたからではないか、と推察します。

すり足文化

膝に力が溜まっていると、体幹部分に動きがなくなります。
体幹部分は重さとして働きますので、動く必要がありません。だからこそ、着崩れをしやすい着物であっても、平気だったのでしょう。
ただ、動けないとなると不便です。自然と膝下が働いてきます。

膝にたまった力を用いて動こうとすると、自然に現れるのがすり足です。
この外国人から奇妙に見える所作も、出来るべくして出来たのだ、と思えます。

脚に生まれるすり足はそのまま、腕にも現れます。
もちろん、腕をすり足、とは言いませんが、体幹を使わず、手だけを働かせて仕事をする事で、「器用さ」を生む土台になったのかもしれません。

膝や肘に力が溜まる。
流れを見つけて、その流れが溜まる場所を自覚する。
この二つを気にする事で、自分は「困らない」という気持ちが生まれてきます。

感情は姿勢が作り出すものです。
肩に力が入り上がれば、心も騒ぎます。ぎゅっと窮屈な身体は困る私を作ります。
膝に力が流れず、腹へと逆流をすれば骨盤を歪ませ、背骨が窮屈に。当然、心は落ち着きません。
逆にちゃんと肘や膝へと体幹の重さが流れていけば、体幹部の窮屈さは消えていきます。
結果を生むのは肘先の手や、膝先の足です。結果が出る前に、気分のいい自分でいられる、そんな事が出来るのだ、とわかってきます。

欧米人と日本人

もともと欧米人と日本人は違うのだ、というのが身体を観察してきて感じる事です。
魂が作り出す心はどんなものにもなる事が出来ます。
そして現代は心の時代。私は○○だ、と自認をすれば、心はどんなものにもなれ、気分は変わります。
ただ、肉体という身体はそうはいきません。

形は欧米人へと近づけます。
努力をすれば筋肉もつき、柔軟性も得て、姿勢もメイクしていく事が可能です。
しかし、そこにどうしても、努力というか、頑張りが必要であれば、それはいつか手放さなくてはいけなくなります。
欧米人は生まれた時から欧米人。遺伝子的な部分においてはもう、どうにもできません。

ある意味、日本人が未熟、といういい方も出来ますが、それはより、「自然に沿った」といういい方も出来ます。
自然に沿って、脚に流れを見つけ、腕にも見つけて、そしていよいよ、背骨にも見つける。
脚は膝に、腕は肘に力を溜めます。
そして、背骨はどうなのでしょう?

背骨が力を溜める先にあるのは頭蓋骨の中にある脳である。

これが今、私がたどり着いた場所です。
これを「当たり前」と言っていいかはわかりません(笑)。
腕の骨ほど、わかりやすく繋がりが見えないからです。
ただ、実験稽古を重ねていくと、同じような感覚が生まれてきました。
そして、考えもしなかった働きも。

この一月、観察した結果、これは「同じ」である、と結論付けました。
背骨に見つける繋がり、次回はこれを当たり前の続きの2、として書こうと思いますが、きっと、とんでもなく、わかりにくいものになるはずです(笑)。

ただ、わかりにくくても、私には確信があります。
自分にしかわからないのかもしれない、そんな事が山ほど出てくるのが身体感覚を手掛かりにした一人稽古です。

それでも、同じ構造である身体を手掛かりにして出てきたアイデアです。
機会と時間があれば、「必ず」実感できるものでもあります。
もし、ちょっとの興味とお暇があるなら、稽古会へとお越しください。
一生懸命、伝えさせていただきます!

「つくば稽古」

稽古日時:2023/9/3(日)13:00-20:00(入退室自由)
今回もロング稽古です。稽古の中身も楽しんでもらいたいですが、それ以上に「過ごす」という事を感じてもらえたら、と思っています。
会場:つくばカピオ リフレッシュルーム
参加費:10000円
申込、詳細はこちらのページから

「浜松稽古」

稽古日時:2023/8/26(土)13:00-18:00(入退室自由)
会場:浜松市武道館/会議室
参加費:6000円(当日払い)
申込、詳細はこちらのページから

「甲野善紀先生名古屋稽古」

稽古日時:2023/9/23(土祝) PM1:30~PM4:00(最終退出4:30)
稽古場所:名古屋市西生涯学習センター/第2集会室
会場住所:名古屋市西区浄心一丁目1-45
地下鉄:鶴舞線「浄心」下車6番出口 徒歩約1分
参加費:8000円
申込、詳細はこちらのページから


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