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逃げ恥新春SP:めんどくささエンタテインメント
すっかり期を逃した感があるが、逃げ恥新春SPの話。
何を隠そう僕は、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」がテレビドラマのオールタイムベストに近いくらい大好きで、この新春SPもとても楽しみにしていた。
当日はキャストが出演するモニタリングの時間からチャンネルをTBSに合わせ、今回のSPを見た。
正直言って、連続ドラマのときほど作品に乗り切れていない自分がいた。
連続ドラマ時のオリジナルキャスト総出演で、連続ドラマ以上に社会問題を盛り込み、コロナの状況にまで踏み込んだ今回のSPになぜ乗れなかったのか。
それはおそらく「ムズキュン」しなかったからである。
これは別に「成就した恋ほど語るに値しないものはない」(森見登美彦)ということではない。
連続ドラマ「逃げ恥」でキャッチコピー的に使われていた「ムズキュン」という言葉。僕はこのコピーが示すのは「めんどくささエンタテインメント」のことだと解釈した。
好き同士が結婚すればそれが幸せなんだ、家事は女性がやるものなんだ、男と女が愛し合うものなんだ、若い人の方が美しく価値があるんだ…など、「逃げ恥」は社会の思い込みをもう一度考え直さずにはいられない人々の物語だった。
妄信よりも思考を選ぶこと。
分断よりも対話を選ぶこと。
「もう!好きなんだから好きって言っちゃえばいいのに!」「もう!お互い好きってわかったんだから“普通に”結婚したらいいのに!」こういう視聴者の思い込みに、いちいち立ち止まって、考えて、話し合って、ゆっくりとしか進んでいかない二人を見る気持ちに「ムズキュン」という名前が付けられた。
僕はこの「ムズキュン」こそが「逃げ恥」の面白さを表す肝だったと思う。
プライムタイムに放送するドラマで、今も残る社会の思い込みを「呪い」として取り上げたことはもちろん新しかった。
でもそれ以上に新しかったのは、「呪い」を解いていく過程を、めんどくさくて、だからこそ面白いものなんだ、と表現したことだった。
例えば「家事は妻がやるものだ」という思い込みは明らかに呪いだ。
でもその呪いを解く時には「では誰がどう家事をやっていくのか」という問題が必ず生まれる。
呪いを解く時に必ず生まれるめんどくささ(考えなくてよかったことをもう一度考えて、話し合わなきゃいけなくなること)を真正面から描いた上で、「ほら、こっちの方がおもしろいでしょ?」としたことに、僕は本当に感動していたのだ。
完全に余談なのだが、僕はぺこぱの漫才も「めんどくささエンタテインメント」の一種だと思っている。
M-1の決勝でぺこぱが漫才をした時、「否定しないツッコミ」が新しいとしてSNSなどがすごく盛り上がっていた。
でも松蔭寺のツッコミのおもしろさは、否定しないから生まれるものじゃないと思う。
常識に沿って訂正しようとするのに、ついもう一度考えてしまって、否定できなくなってしまう。その一連のめんどくさい葛藤が面白いのだ。
(「そうだね」という肯定じゃ笑えない。「そんなわけねえだろ!…とも言い切れない!」という葛藤だから笑える。)
今回の新春SPでは本当に多くの社会問題が取り上げられていた。
選択的夫婦別姓、セクシャルマイノリティーと結婚、男性の育休、計画的無痛分娩、そしてコロナ。
でもその項目の多さに反比例するようにその問題に向き合う時に生まれるはずの悩みやめんどくささへの言及は減っていた。
出されていたテーマは100%正しいものだったと思うんだけど、僕はテーマを列挙して欲しかったんじゃなくてテーマのめんどくささにふたりがどう向き合って行くのかが見たかった。
でもこれはきっと放送尺の問題が一番大きいと思う。
問題ひとつひとつについてじっくり時間をかけられなくても、今このタイミングで取り上げておかなければならないという判断だろう。
連続ドラマを見終わったときには、そのあまりに完璧なラストに「続編はつくらないで!」と思っていたが、今回の新春SPを見てなぜだかふたりの今後の人生も全部見てみたいと思うようになった。
こうなったら2年に1回、じっくり連続ドラマで10シリーズくらいやって欲しいなあ。
サイトウでした。
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@いえもん
ほんものダウンそんなにあったかいのか…!
寒さ、まじで行動力を奪うのでいい投資になりそうですね…!
@きっちゃん
知識って自分の中で体系化できると、圧倒的におもしろいし学びやすくなるよね!
そこまで行くのが大変なんだけど…。
エンタメソン、僕もやってみます。
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