松雪泰子さんについて考える(42)映画『古都』

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松雪さん出演シーンの充実度:7点(/10点)
作品の面白さ:6点(/10点)
公開年:2016年
視聴方法:FOD
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
とにかく映像の美しさにこだわった、そんな印象。
 
原作となっている川端康成の同名小説からは、換骨奪胎とまではいかずとも、テーマや雰囲気が大きく変わっている。小説の登場人物が大人になったという設定で、現代版として描かれている。
 
一人二役の主演・松雪さんは、生き別れとなった双子役。それぞれの娘が、将来の道に迷い、悩む。2人が自分なりの手がかりを見つけたのは、同じ“古都”であるフランス・パリだった。
 
朝菌は晦朔を知らず。京都という限られた世界の中で生きていては、どれだけその伝統美を周りから羨望され、持て囃され、海外観光客の人気を博そうと、かえって感覚が麻痺してその本当の価値を忘却してしまう。その逆もまた然り。解決策はただひとつ、外から内を見ること。
 
2人の娘は対照的。一人は自分の腕試しでパリへ。もう一人は、京都を支配する伝統と旧習、それに囚われている家族の窮屈さから逃れるきっかけとして。2人は、そこで何に気づいたか。
 
京都、パリ。当たり前だが、風景がいちいち瀟洒で見応えある。ロケ撮影だけでもかなりの時間・労力・制作費を使っているはず。その執念には頭が下がる。
 
ただ、その映像の素晴らしさに対して、作品のテーマ(上述)とストーリーが若干弱いと思った。ドラマチックな映像には、多少なりとも劇的で派手な展開が必要ではないか。
 
とはいえ、真面目に丁寧に作っている姿勢は十分伝わってくるので、その真摯さは買いたい。
 
呉服屋の女将・千重子を演じる松雪さんの着物姿は、今さら言うまでもない美しさ。京都の風景と相俟って、これだけで映画として成り立っている。
 
座ったときの横からのカットが複数あるが、とにかく姿勢がきれい。姿勢以前に骨格が真っすぐ整っているから、余計にそう見えるのではないかと思った。素人考えだが。
 
一人二役として、もうひとり、北山杉の里で暮らす苗子を演じている。声色と話し方の微妙な匙加減によって、双子だが別人、別人だが双子という難役に違和感が無い。

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