『からこといのち通信 №13』7月号2021/6/11 発行

『からこといのち通信 №13』7月号(人間と演劇研究所 瀬戸嶋 充 ばん)2021/6/11 発行


先々週は京都から丹波谷川へと、旅回り(ドサまわり)のWS。
京都では『ManaViva』(マナビバ)という、京大院生の立ち上げた町場のスペースで、野口体操のレッスンと講演会を行った。
8畳2部屋ほどの広さに5名の参加者。壁一面の大きなモニターに、ZOOMを映し3名の参加。野口体操の基本レッスンを2時間。そこでの体験をもとにした講演と対談を2時間、その後は懇親会を深夜まで。
ともかく盛り上がった。笑い声が弾み、途切れなく談話が続く。最後にはZOOMの向こうでギターの弾き語り。手持ちのアート作品の披露まで。モニターをまたいで、京都から埼玉・広島へと広がる空間が一つになっていた。
場の一体感が、ZOOMでここまで成り立つのか!と、驚いてしまった。
前半の野口体操は、実技レッスンだ、初めての人にとってZOOMの窓越しに教室を覗き込むようなことでは、どの程度の学びが可能になるのか?
ふたを開けてみれば、ZOOMの向こうの人が、レッスンの主役になって体操を披露し、会場の注目を集めたり、逆にZOOM参加者が食い入るような眼差しで、会場のメンバーの体操の動きを見ていたり。ZOOM参加者の立つビル屋上の風が、こちらに吹き抜けてきたり(笑)。後半には、ZOOM背景の自作アート作品が話題になったり、ギターの弾き語りまで。
大きなモニターには、向こう側の映像だけではなくて、会場で体操実技を学んでいる、自分たち一人ひとりの姿も一緒に映し出されている。そのことによって会場のメンバーも実はモニターの中に取り込まれてしまうのではないだろうか。この会場の中で体操を学んでいると同時に、鏡に映った鏡像の向こうに踏み入るように、モニターの世界=リアルを超えた世界に入り込んでいるのではないだろうか?
子供のころ、鏡を見つめていると、鏡面の向こう側に世界が広がっているように感じたことがある。鏡の中の世界、そこに多数の人と一緒に入っていくことができるのが、ZOOMの特徴かもしれない。鏡の世界では、自分のからだの動きが変化を生み出す。その上、自分が常に他者との関わりの中にあることを意識させられる。
新たなコミュニケーションの世界が開けたのかもしれない。ビデオゲーム(ファミコン)が生まれたころ、ブラウン管テレビの画面の中に、自分が手を入れて、キャラクターを動かせる、ゲーム世界への参入感が嬉しかった。それと同じようなことがZOOMでは成り立っている。
ZOOMを会議のためのみのツールと見るのは残念なことだ。言葉を音声によるテキスト文として発言の意味を届け、識別のために自分の動画を貼り付ける。或いは一方通行のライブ配信、小さなマス目の中の自分。普通にはそんなところだろう。
動画を使うことは、個人の細やかな表情や動作(からだ)の変化、その感受性の妙までを映し出すことが可能になる。同時にその変化を映し出す力を、自分自身にも注ぐことになる。
よりリアルな世界へと私たちを導き、その世界の中で互いの出会いを可能にするツールとなることだろう。その上で、リアル(現実)の世界を見直し、より明らかなものとして、自分たちの生きている世界を見直すことへと道を開くはずだ。
私の「からだとことばといのちのレッスン」は演劇的な手法によって、想像力を駆使して、宮沢賢治の描く空想世界へと飛び込み、その非日常の世界の中で、日常を超えた地点で、人と人との或いは人と自然との深い交流を体験する。ZOOMの利用の可能性は、そのことと響きあうのかもしれない。
囲炉裏端の語り部や、旅回りの芝居一座、サーカスのテント、怪しい見世物小屋などなど、私たちの生活と接するように、非日常は日常の中に居場所を与えられていた。それが実生活の場からは見事に駆逐されてしまった。そしてどこに行ったかといえば、どうやらネットの中に、それも最先端のZOOMやYouTubeの中に復活してきているのかもしれない。楽しみだ!
翌日、京都を早朝に立ち、大阪から福知山線にのって丹波の山脈の中、JR谷川駅から竹岡農園に入り、一泊二日の合宿WS。まるで「ナウシカ」の「風の谷」のような竹岡農園での合宿の報告は次回(かな?)。

瀬戸嶋 充 ばん

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【1】 呼びかけ(話しかけ)のレッスン
【2】 琵琶湖和邇浜 夏のWS合宿(20210723_25)開催
【3】 レッスンのご案内
【4】 あとがき
【5】 note バックナンバー

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【1】呼びかけ(話しかけ)のレッスン

竹内レッスンに、呼びかけ(話しかけ)のレッスンというのがある。自分の発する言葉がそれを受け取る相手にとって、どんなふうに受け取られているか、それを吟味していくレッスンである。「背後から相手に短い言葉で話しかける。」その瞬間の出来事を吟味していくのである。
ふだん私たちは言葉を、その意味内容(知識)を伝えるためのもの(記号・信号)としてコミュニケーションに利用している。
話し方教室・発声練習などでは、いかにしてよどみなくクリアーに言葉を発するか?さらに声の響きを工夫して、他者にとって如何に心地よく美しい声を聞かせるか?話の内容をどのように構成したら良いか?どうすれば相手の理解に訴えかけることができるか?効率的に相手の理解を促すことができるか?などなど、どれも「言葉の意味内容を他者に伝える」ことに重点を置いて、言葉を虚飾しているように見える。
必然的に意識主導で、発語を工夫することになる。言葉の持つ、、、(ここでは話し言葉を表すときに時々便宜上ひらがなで「ことば」と記名する。)、、「ことば」の持つリズム(息づかい)=感情は無視され、言葉を色づけるために声の抑揚(ニュアンス=感情もどき)を利用をすることはあるが、あくまで主役は文章としての言葉の意味内容である。
「この前、ああ言ったのに、聞いていなかったのか!」という言い分は、言葉の意味内容を過剰評価するところに出てくる。心が通う云々は切り捨てられてしまう。
この意識主導が進んでいくと、言葉は「からだ」から乖離していく。他者とのふれあいの中、瞬間瞬間に生ずる心の揺れ(息づかいの変化)や表情(からだ)の変化は、意識的に作られた言葉を発するにあたって邪魔となり、意志的にコントロールされなければならないこととなる。そのため話し言葉が、意に反して他者との自由な交流の妨げとなる。型にはまった言葉のやり取りが、「ことば」を発することへと置き換えられてしまう。「ことば」と「からだ」の分断分裂である。
竹内の提案した「呼びかけのレッスン」では、ここのところが鮮明に浮かび上がってくる。簡単に言えば「意識では相手に話しかけているつもりであるが、実際には相手に「ことば」が届いていない。」という現実(現象)が浮かび上がってくる。「ことば」は相手の「からだ」(存在)に全く触れていないということが、その場の皆に共有される。思い(意識)と実際の行い(行動)の不一致があらわになる。自分では「~しているつもり」「~出来ているつもり」が他者にとって、実際には成り立っいない、そのギャップを突きつけられる。
そこが「ことば」の成り立ちに向かう、スタート地点になる。「話しかけることが出来ていない」「人に触れてることが出来ていない。」をスタートに、「話しかけることができた!」「触れることができた!」地点に向かって、旅は始まるのだ。私の師匠、竹内敏晴は青年期にろうあ者(聴唖者)であった。彼は話しかけることの出来ないことの自覚をスタートに「ことば」を獲得していった。その立場から見て、逆に一般の多くの人たちが、時代の流れの中で、話しかける「ことば」を無自覚のうちに放棄していくのを見ていた。
「ことば」は、原石を磨くように、時々に繰り返し手入れされねばならない。実態を忘れた「つもり」=意識の世界に居ながら、「信じる」ことのできる自分=「からだ」という存在を忘れないために。
「未完の完成」という言葉が好きだ。この言葉のおかげで、未知の新たなそれでいて懐かしい、旅が可能となる。完成で終わって満足するのではなく、新たな完成への道程が繰り返えし訪れる(笑)

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【2】琵琶湖和邇浜 夏のWS合宿(20210723_25)開催

琵琶湖畔の合宿所(ユースホステル和邇浜青年会館)に着くと、いつも故郷に帰ってきたような気分に包まれます。湖水の畔から徒歩20秒、波の音とトンビのこえ、遠く山々を見晴らす岸辺。
琵琶湖に湛えられた深く大きな「水」の揺らぎが、私たち一人一人のからだに包まれた小さな小さな「水」に共振共鳴を促すのでしょう。心身のこわばりは、湖水の働きによって溶きほぐされ、都市生活の中で負った窮屈さが溶け落ちていきます。
自分のからだの中にある深いくつろぎを求めて、「からだとことばといのちのレッスン」が進んでいきます。琵琶湖の力を借りて。
琵琶湖畔での合宿開催は、夏冬を合わせて10回を超えます。ここまで続いているのは、いのちの洗濯を求めてのこと、その必要を参加するみんなが感じてくれているからでしょう。
今年も開催します。どうぞいらして下さい。

日程:2021年7月23日(金)JR湖西線和邇駅12時41分 集合~25日(日)JR湖西線和邇駅17時1分 解散
会場:ユースホステル和邇浜青年会館(滋賀県大津市和邇南浜403 TEL.077-594-0244)
定員:8名
参加費:45,000円 ( 2泊3日、レッスン費用・宿・食・懇親会費 )
申込み問合せ:人間と演劇研究所 (瀬戸嶋まで)
メール karadazerohonpo@gmail.com 電話 090-9019-7547
人間と演劇研究所HPでも、詳細をご案内しています。
https://ningen-engeki.jimdo.com/%E7%90%B5%E7%90%B6%E6%B9%96%E5%92%8C%E9%82%87%E6%B5%9C-%E5%A4%8F%E3%81%AEws%E5%90%88%E5%AE%BF-20210723-25/

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【3】 レッスンのご案内

● オンライン・レッスン『野口体操を楽しむ』のご案内はホームページ、
https://ningen-engeki.jimdo.com/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%95%99%E5%AE%A4/

● オンライン・プライベート・セッション開始
http://karadazerohonpo.blog11.fc2.com/blog-entry-370.html

● 琵琶湖和邇浜合宿
恒例になっています琵琶湖合宿、今年も開催します。
・7月23日~25日 琵琶湖夏合宿(開催決定受付開始です)
・2022年1月8日~10日 琵琶湖冬合宿

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【4】 あとがき

・「どこか新鮮でどこか不思議と懐かしい時間でした」こんな感想をいただきました。レッスンへの最上の褒めことばです。青年のころ、少年のころ、子供のころ、喜びにつけ悲しみや苦しみにつけ、全ては新鮮に私の心に印象を刻みます。大人になると無色透明なクッション越しに、目の前にやってくる物事を受け取るみたいになってしまう。世界が、他者が、直接に(直に)私たちの心(=感受性=からだ)に踏み入って(討ち入って)くる機会が失われてしまう。「懐かしい」とは、今では遠く離れてしまったように感じられる、感受性豊かな頃の自分が思いがけず浮かんで来たということでしょう。
レッスンはクッションを取り払い、「いのち」むき出しにして、他者や世界とふれあい、生身の交流を生きることです。合宿は小難しい知識の優劣を競うのではなく、ともに勝手に語り合い、唄い、踊り、眠る。そんなひと時の中に身を置くことに意味があるのです。
そして、そんな場から何かが生まれて来るであろうことを夢見て、私はレッスンを繰り返しています。クッションに裂け目を入れることで、「いのち」の側からどんなその人らしさが生まれて来るか、楽しみでならないのです。
・これからは、1~2泊の合宿を中心に「からだとことばといのちのレッスン」を開催していきます。短時間でのレッスンはオンラインで開催していくつもりです。私(瀬戸嶋ばん)は、旅が好きです。東京を離れてあっちこっちと旅をして回りたいと思っています。どちらへでも足を運びますので、開催協力のお誘いをいただければと思っています。ご協力よろしくお願いします。
・琵琶湖和邇浜合宿(20210723_25)ですが、からこといのち通信№13を書いている間に、定員残席が1名になってしまいました。夏以降の開催について検討を始めたところです。万一キャンセル待ちの時も、今回ご連絡いただければ、次回開催を早めに案内するようにします。よろしくお願いします。
・たくさんの人生の重さを詰め込んだクッション。様々な生きる手立てが詰め込まれたクッションを、さらにあらたな手立てで膨れ上がらせていき、足取りの重さに苦しんでいる。たまには、そんなクッションを道端におろして、吹く風を感じながら「いまここ」の豊かさに「こころ」と「からだ」をゆだねてみませんか。
・コロナをはじめ、様々な不安材料にいとまない時代ですね。みなさまどうぞそれぞれの元気でお過ごしください。陰ながら皆さんの幸せをお祈りさせていただきます。

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【5】 note バックナンバー

当通信のバックナンバーをご覧になりたい方は、ばん/note
https://note.com/kara_koto_inochi/m/mdc4d18c059db
をご覧ください。

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● 私、瀬戸嶋 並びに 人間と演劇研究所『からだとことばといのちのレッスン教室』の 活動と情報は、ホームページで告知しています。
レッスンへ参加頂く際は、ホームページをご確認ください。
https://ningen-engeki.jimdo.com/

● 問合せ・申し込みは、メール karadazerohonpo@gmail.com 又は 電話 090-9019-7547 へご連絡ください。。

     人間と演劇研究所代表 瀬戸嶋 充 ばん     

『からこといのち通信 №13』7月号 2021/6/11 発行

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