見出し画像

「金融機関のメタバース」について

金融機関がメタバース(仮想空間)を活用したサービスを模索しているという記事を目にしたが、何が面白いのか、あまりピンと来ない。

リアルの店舗と同じような感覚で、個人の利用者がアバターを使って金融機関の担当者のアバターと会話することができるということであるが、前にも書いたことだが、金融機関の対面営業など、できればゼロになれば良いと思っている僕のような横着な人間にとって、アバターだろうがリアルな人間だろうが、金融機関の担当者と会話したいなどと少しも思わないのだ。

コンサートやスポーツ観戦のようなエンターテイメント領域においては、リアルな体験に次ぐ選択肢として注目されて良いと思う。コンサートホールやスタジアムの収容人数に制約されることはないし、何人詰め込んでも「三密」の心配もないからだ。僕はやらないが、ゲームなども臨場感のある世界に没入することが可能になるだろう。

その他のビジネス領域でメタバースを活用するとなると、物珍しさがなくなったら、あまり面白いとは思わない。実務は実務として、限られた時間で効率よく済ませたいというニーズの方が勝るはずである。アバターが顔を突き合わせなければ済まないようなことであれば、リモート会議をやれば良い。顔出ししたくなくてアバターを使いたいという人もいるかもしれないが、そうなると特に金融取引の場合は本人確認の問題が不可避となる。NFT(非代替性トークン)の活用により技術的な解決策はありそうだが、何かと面倒くさい話である。

不動産取引などは物件の内覧等でメタバースを活用するという選択肢はありそうである。今ならば移動時間を考えると、1日で見て回れる物件数には自ずから限界があるが、ヴァーチャルな世界であれば、いくらでも納得いくまで見て回ることが可能であるし、繰り返し何度も見直すこともできる。

銀行取引に関しては、残念ながら、そういうのとは異なるような気がする。メタバースで話題づくりをする前に、もっと本業の効率性や堅確性の追求をやった方が良い。所詮はあと何年かすれば「土管」になるのである。まずは信頼できるインフラになってからというのが正しい優先順位であろう。

100千円まで無料に送金するためだけに専用アプリをダウンロードして、本人確認をやり直さなければならないような面倒くさい作業を顧客に要求するような業務フローをまずは何とかしてもらいたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?