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【小説】  私と猫   第1話

第1話

別世界に手を伸ばせたなら。
そんな勇気があったら、私は変わるのだろうか。


私は美しいものが好きだ。
 
 
幼い頃から、可愛いもの、美しいものが好きだった。
キラキラしたものが好きだった。
 
私は子供の頃から、お姫様に憧れていた。

フワフワと広がるドレスに、キラキラと光る装飾の施された美しいお城で毎日を過ごす。

きっとベッドはフワフワで、とても良い香りがする。

可愛くて美味しそうなちょこんとしたケーキと、綺麗なカップに注がれた紅茶でティータイムをする。
あとは……
お姫様になった事が無いから何をしたら良いのか、分からない。

あっ! 舞踏会を開く!


今の私には、遠いお話だ。
でもいつかそんな風になれるかもしれないと、今でも少し思っている。

みんなは笑うかもしれないけれど。
 
幸せな物語を考えて紙に描くのも好きだった。
お話を考えるのは楽しい。

お姫様のお話は、まだ上手く想像出来ないから描けていない。
けれど暇な時は、ペンを持ってこうやってぼんやりと考えていた。
 
中学校では、だいたい決まった女の子の友達と一緒にいた。

お昼ご飯の時は、恋愛話や流行り物の話で盛り上がった。
私はいつも笑っていた。
休憩時間になると、みんな髪を整えたりして可愛かった。
私はそんな可愛い友達を眺めているのも好きだった。

恋愛話をする時、恥ずかしそうに話すのも可愛かった。
私は、かっこいいなと思ってドキドキする先輩はいたけれど、先輩の事を好きなのかは分からなかった。
どこからが恋愛として好きなのか、私には基準が分からなかった。
かっこいい人も可愛い人も、眺めるのが好きだった。
 
私は今日も学校の帰り道に、いつもの川沿いの道を歩いていた。
そこには沢山の木が並んでいてお花も咲いてた。そして、とても良い香りがした。

私は川沿いのベンチに座って一人でぼんやりするのが好きだった。

太陽もキラキラで、風がそよそよ吹いていて気持ちが良かった。
今日は絶好のぼんやり日和だ。
楽しみに歩いていると、いつものベンチにカップルが座っていた。

私はすごく残念な気持ちになりながら、ベンチを横目にそこを通り過ぎようとしていた。
そこにタタッと、ベンチの後ろから私の目の前へと何かが急に飛び出してきた。

白猫だった。私はびっくりして立ち止まった。

ベンチに座っている女の子は、
「可愛い!見て、猫だ!」
と、はしゃいで彼氏に話しかけていた。

飛び出してきた綺麗な白猫にも劣らない、真っ白なワンピースを着た彼女は、とても美人だった。話しかけられている彼氏も、すごく整った顔立ちで綺麗だった。

そのカップルは、立ち止まった私を気にも止めていなかった。
同じ世界にいるのに、別世界にいるような人たちだった。

 
私は家に帰り、今日の川沿いでの事を思い出していた。

あの真っ白なワンピースを着た彼女。素敵だったな。
私もあんな可愛い真っ白なワンピースを着て、あの川沿いを歩いてみたいな。
隣には素敵な男の子。どんな人かは……まだ想像がつかない。とりあえず、あの先輩で想像しとこう。
とりあえずにしても贅沢な想像だった。

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