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年末の風物詩『満員劇場御礼座』(通称:満劇)の「事情があります」を鑑賞してきた。

手帳を買い替え、今年もそろそろ残り少なくなってきたな〜と思う頃に「今年の満劇の公演案内」のメルマガが届くと、本格的に年末が近づいて来たな〜と思いはじめる。個人的には、なんだか年末の風物詩的イベントなのです。

2017年満劇大阪ぎりぎり公演
「事情があります」@道頓堀ZAZA

日時 2017年 12/7(木)19:00~、12/8(金)14:00~・19:00~、12/9(土)14:00~・18:00~、12/10(日)14:00~

今年は大阪公演で、4年ぶりに行きました。

はじめに『満劇』を知らないかたにとても簡単紹介すると「サラリーマン劇団」となるかな。本職を持っておられながら、演劇活動しておられる。それもみなさん、めっちゃ忙しいクリエーター職。いつもどのくらい練習しておられるんだろうか??練習時間とれるのか??と不思議に思っています。

満員劇場御礼座

満劇について
古くは1976年に京都大学にて結成された「劇団・卒塔婆小町」が母体だった。その後「関西ドラマチックツアー」を経て、「満員劇場御礼座」という長い名前に改名。いくら言ってもお客さんに覚えてもらえないので、今は「満劇」という略称を使っています。
1980年代半ばになって、就職したメンバーが再結集して、サラリーマンが会社を舞台にした物語を自ら演じる「サラリーマン劇団」として活動を開始。大阪の阪急ファイブオレンジルームなどで活躍し、一時は新聞に大きく取り上げられ、ラジオでレギュラー番組を持つほどの人気劇団となった。(以下略)

「事情があります」観劇、感激レポートしてみます。

今年は、12月9日(土)の14時の公演に行ってきました。

第1話「ハンカチ男」
定年後、誰でもできるいい仕事があった。
ただし、プライドを捨てさえすれば。

ほとんどひとり芝居的なはじまりから。衣装にいろんなハンカチをつけてあり、雇い主のハンカチになりきるというもの。日給3,000円という職。
雇い主とは顔をあわせず、お手洗い後のハンカチとなる。
ハンカチ職に満足しており、他のティッシュや通信?(忘れたw)職はぜったい嫌と言い切る。
「クイックアンドドラーイ」っていう絶叫的セリフが特徴。
最後は雇い主さんが、トイレから出てきて、その後ろをティッシュに徹した男性が追いかけるというオチつき。

ちょうどその前日かに韓国の高齢者が、ダンボール集める仕事などをしていて持ち込み料金が300円とかくらいのを観ていたため、身につまされる。

高齢化社会になって、定年後第二の人生を歩むにあたって、仕事に対してプライドを捨てられるかどうか??を問われる。なんだか、日本の高齢化社会も定年後もまだ働かないといけない社会で、その時にじぶんも仕事があるのだろうか??とか、すごく考えさせられた社会問題提起作品でした。

* * *

第2話「はなしあい」
業績不振の会社に現れたコストカッター。
彼女が提示した、もっとも民主的な人減らし策とは。

資材部の3人に突然言い渡されるリストラ候補選び。それも3人のうち1人をリストラにすることを、自分たちで民主的に話し合いで決めろとのお達し。決めるのもたった10分間の話し合い。

それまで仲良く雑談をしていたのだけど、一気に空気が悪くなり、それぞれが個人の事情を話しだします。1人は離婚が成立、養育費を払う立場に。唯一の女性社員は、息子が就活に失敗し大学院に進みたいからまだ学費がかかる。一番の若手中途社員は、この会社に再就職するまで時間がかかり病みそうになって、もうあんな期間は二度とヤダと。その後、会社への貢献度の話になり、勤務中の態度からやがてお互いの悪口になり。。。時間がないので投票制にするのだが、結果の途中でコストカッター登場で、エクセルの表を見直したら、リストラは他部署との兼ね合いで決めることになったと一件落着。

なんだかふだんは和気あいあいと話している会社の仲間や部署も、苦境に立たされた時こそ人間性が出るよね。あと、会社内のコミュニケーションがきちんとできているところが良い業績につながるんではないですかね!?と思ったりしました。

* * *

第3話「あの日の人魚姫」
海で王様を助けてから、時は過ぎ去り20年。人魚はいまだに恋心をつのらせていた…。
長すぎた片思いの顛末は。

人魚姫はがっつり衣装がつくられてすごかった。
名前は「アリエル」。ディズニー観てないですけど、そんな名前でしたっけ??
王様は王妃に不倫され、しかももともと王妃が助けたのという話は嘘だったとか。離婚して、本当に命の恩人である人魚を見つけて、結婚したいという。それを知った家来が、王様と人魚が結婚するなんてあかんと人魚姫にプロポーズを断ってくれるように懇願する。

王様が人魚に会い、命の恩人であるか確かめる。その際に「アリエル」を「アリエール」(もちろん洗剤のネーミング)と勘違いするわ、記憶を辿るために人魚の膝枕の試す時に(人魚の鱗の膝枕だからね)「あ、この生臭いにおい覚えてる、懐かしい」と叫ぶところは爆笑。洗剤CM、アリエールじゃなくてもこんなんありましたっけ??あるある内容盛り込まれまくり。

満劇のセリフは、ところどころお笑いネタを仕込んであるのです。

王様は結婚するのに、身分や見た目の違いなど全然気にならないと主張します。これまた結婚に何がたいせつか??を案に問うような感じもありました。
が、人魚には3000ほど子どもがいて、産卵したって話をしたらドン引きされたというオチつき。家来が鮭方式なんですねツッコミとかほんと笑える。
なんか人魚がひとり、最後さみしそうにしていて、自身とも重ねてしまいましたw

* * *

第4話「風変わりな未来」
新たなビジネスを模索する職場で、「未来が見える」と言い出した男。
だがその「未来」はあまりに奇妙すぎた。1991年に生きる彼らにとっては。

超バブリーな時代、ある文房具の会社で新しい企画をあげないと会社の経営が危ないぞと。未来が見えるという男性社員が、今わたしたちの日常生活、しかも世界で当たり前となったいろんなサービスを提案する。

それはブログの投稿型サービス、Facebook、twitter、Instagramのようなソーシャルサービス、YouTubeなどなど。じぶんの日記を公開したりすることにビジネスがこんな風に発展したり世界的な企業になるって誰が未来を予測できただろう??
ほんと個人日記もいつの間にか日常的に公開してますもんね。実名投稿に抵抗があったひとも、わりと慣れてきているのではないでしょうか??

上記のような提案に、会社の若手社員はその企画にめっちゃノリノリなんだけど、少し年齢がいったベテラン社員たちは、思いっきり新しい企画に抵抗を示しまくります。本当に会社でのあるある内容すぎ。斬新な企画はこれまでの既にある平凡なサービスやアイデアと比較され上層部に潰されやすい。

結果ベテラン社員たちは、ゴルフ会員券とリゾートホテル開発の提案を役員に提案することで落ちつきランチに出かける。
男子社員は、最後に提案した自撮り棒でひとり芝居でエンディングとなります。
ちなみに、道頓堀思いっきり外国人だらけで自撮り棒で撮りまくりでした。

* * *

第5話「あなたの妹」
男の家に、突然「あなたの死んだ妹です」と名乗る女が現れる。
新手の詐欺なのか、それとも…?

男の家にやってきたのは、死んだ妹が生身の人間に今だけ魂だけ入れ替わったと主張する女性と、妹がかつてお世話になっていたという印刷会社の社長さん。
妹は生前残した700万円を今困っている印刷会社の社長さんに役立ててほしいと兄にお願いに来たとのこと。どっちにしても兄は妹の遺品整理に手をつけてないくらいだし、この先も使う予定ではないでしょ??と。

兄と中身は妹というなんだか信じられなく、オレオレ詐欺ならぬ、じぶんが妹詐欺的な疑いを兄はずっと持つ。
思い出の話テストみたいなことをすると、兄と妹の回答は違うのが出る。
その際は「お兄ちゃん、もの忘れひどすぎるー」とかわされる。

ちなみに印刷会社の社長さんとは親しい間柄ではないけれど、子ども食堂という社会的貢献活動をしてはって、それを支援したいとのことでした。
それを聞き、気持ちが揺れ動く兄。
最後通帳とキャッシュカードを渡す兄。お別れの言葉のやりとりは、本当の妹かどうなのか??の疑問を残しながらエンディング。

◆相手をどこまで信じることができるか??
◆たいせつなひとの生き方の尊重。
◆生きたお金の使いかた。

これまた社会的な問題を問う感じでした。

* * *

第6話「巡査部長 二宮ソンタク」
交番に日参する男が持ち込んだ、あやしい情報。
あらゆることを忖度する巡査部長・二宮ソンタクが事件を華麗にややこしくする。

今回のタイトルからしてぜったいにおもしろいだろうと予測しており、一番楽しみにしていた作品。ちょうど2017年度の「新語・流行語大賞」の年間大賞をとったばかりの「忖度」ですからねー。

とある派出所にまいにちやってくるおじさん。情報提供やと来るのだが、全く根拠がない感じ。きちんと調書をとっていると、次回の巡査部長の昇進試験を受けたい警官は、つい迷惑な人だなーと思ってしまう。

そこに登場した巡査部長。「君の態度が彼のはなしを長くする。もっと空気を読まないとあかん。」と。じぶんは不祥事を起こしたり、勤務中(実は今酒飲んでた)けど、巡査部長になってるのは、すべて相手のして欲しいこと、喜ばせる術、空気を読んで行動しているからだと主張します。ペーパーテストなんておまけ。いかに上司を喜ばせたかで、今の出世があると。

これがまたほんといい加減な感じの上司で超おもろい。数年前に「肯定ペンギン」という作品で何ごとも「うんうん、そうやね」と頷くペンギンの話があった。その肯定ペンギンも演じていた淀川フーヨーハイで、これを彷彿させる動きとセリフまわし。待ってました!!とばかり、爆笑の嵐。

今回はその情報提供のおじさんが、キャリアのお父さんじゃないか??橋下さん(大阪だけにうまい)て名前が怪しいってところから、おじさんをいかにもてなして、出世街道のための恩を作るかみたいな忖度がはたらきます。

忖度のきほん(そんなのがあるか知らんが)は、相手のして欲しいこと、願っていることの本意を掴むことだと。

結果、いろいろ調べたらキャリアの橋下さんとはなんら関係ないおじさんだったが、息子に似た警官に出世してほしいと思っていることが判明。そのための情報提供だった。これまた泣かせる展開、やはりほろりとさせるところがあるのが「満劇」の醍醐味ですね。そして社会的風刺作品。

日本人の美徳とする空気を読むって行動は、今のビジネスにおいてはどうなのでしょう??つい先走って行動したりすると、行き過ぎた、違うかったといったこともあるので、空気を読むコミュニケーションはたいせつですが、言葉でのやりとりも重要かなと思います。なにより、若いひとはきっともう忖度的なことは通用しないでしょうし。

『満劇』は、時代を読む年末の風物詩的劇団。

いつも満劇を観劇してみると、あっという間に時間が過ぎていたことが実感します。今回は2時間20分らしい。

演劇って敷居が高いってイメージですが、他の演劇をあまり観たことない(なんせあとは友達が女優をしていた劇団のしか行ったことない)わたしからすると、『満劇』実は演劇初心者が入りやすい作品が多いかな〜と思います。

ほんと時代を捉えた作品が多く、クリエーターさんたちなので、お笑いも細部のセリフに盛りだくさん。ただおもしろいだけでなく、時々ホロっとさせられたり、切なくなったり、考えさせられるテーマがあったりするのが『満劇』の素敵さなんです。

毎回挨拶で、来年はわかりません的なことをされますが、最近は東京・大阪公演が交代で開催されている感じですので、お近くのほうで観劇してみてはいかがでしょうか。

ちなみに最後にチラシの協賛コピーまで「事情があります」。





プランナー、コピーライター。生活者に寄り添い、ファンをベースとしたプランニング、広報支援致します。2017年加西市制50周年キャッチコピーに選ばれました。「ともに創り、ともに育む。」さとなおオープンラボ関西二期生。広告・カフェ・北欧・紙モノ♡地域遊びとローカルメディアも挑戦中!