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甘くて、ほくほくなにんじんのしりしりスープ

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いろんな料理で、脇役をつとめることの多いにんじん。でも真骨頂は単独で食べることだそうです。しっかり炒めることで独特の匂いが消え、甘みが十分に生かされたにんじんスープをぜひお楽しみください。
スープ作家の有賀薫さんによる、旬の野菜をたっぷり食べるベーシック・スープのレッスンです。

この記事は2017年のcakes連載の再掲です。

甘くて、ほくほくなにんじんのおいしさに目覚めるスープ

沖縄の郷土料理に「にんじんのしりしり」という料理があります。千切りにしたにんじんの炒め物で、「しりしり」とは野菜をスライサーですりおろすときの音だそう。

卵やツナを入れて仕上げるのが一般的なしりしりのレシピですが、今回はにんじんだけで作ってスープへと展開しましょう。

このうえなく甘く、千切りなのにほくほくした食感があって、にんじんがこんなにおいしいなんて知らなかった!と思わせる一皿です。

にんじんのしりしりスープ

材料(2人分) 所要時間約20分

にんじん 中2本(約400g)
なたね油 大さじ3 ※サラダオイル可
塩 小さじ1/2
牛乳 100mL
水 250mL

作り方

1.にんじんを切る
にんじんはよく洗い、へたと尻尾を落として、千切り器で千切りにする。★1

2.にんじんを炒める
にんじんをフライパンに入れ、分量の塩からひとつまみを加え、強火にかけて2分ほどでしんなりしてきたら、なたね油大さじ3を加えて中火に落とし、焦げないようにさらに3~4分炒める。★2

3.スープにする
炒めたにんじんの半量を鍋に入れ、水250mLと牛乳100mL、残りの塩を加えて強火にかける。沸騰しかけたら弱火に落として約4分煮る。★3
※炒めたにんじん「しりしり」の半分は、常備菜としてご利用ください。

レシピのポイント解説

・にんじんと千切り器について
・にんじんの火の入れ方
・スープへの展開

★1 にんじんと千切り器について

にんじんは、千切りにします。
野菜の千切りを大量に作るときは、野菜の千切り器がおすすめです。

さまざまなタイプのものがありますが、お持ちのものがあればそれを使ってください。何種類か持っている方は、太く切れる方を選びます。

さまざまなタイプがある千切り器
貝印の「細せん切り器」(写真左)と「せん切り器」(写真右)

もっともおすすめなのが、通称「しりしり器」と呼ばれる調理器です。にんじん専用というわけではありませんが、しりしりによく使われます。刃が大きいため、やや幅広の千切りになります。

私が使っているのは、小柳産業「ジュジュ野菜調理器 蜂の巣」

また、しりしり器で切ったにんじんは、切り口が少しギザギザしているのが特長。油や調味料のしみ込みがよくなり、食感も包丁で切ったものとは少し変わります。
千切り器のタイプで仕上がりのイメージは変わりますが、どれを使ってもできます。

もっとしりしり器や千切り器のことを知りたい方は、私のnoteでくわしく書きましたので、こちらをご覧ください!

さて、千切り器の使い方です。

皮をむいたにんじんをしっかり持ち、千切り器にこのぐらいの角度で当ててスライスしはじめます。

最初はみじかくなってしまうが…
このぐらいまでおろすと、長めの千切りができるように

受けの容器を下に置き、しっかり固定させて使いましょう。

にんじんが小さくなってきたら、手を切ってしまわないようゆっくり丁寧に

千切り器がないという方は包丁で!

斜めに薄切りしてから
にんじんを少しずつずらしてまっすぐ置き
端から千切りにする
このぐらいの細さに。多少不揃いでもOK!

★2 にんじんの火の入れ方

にんじんは、2本分で約5分、炒めます。多くのしりしりのレシピでは長くても2~3分ほど、さっと炒めるものが多いのですが、もう少し長く炒めてください。にんじんの色がぐっと濃くなり、穀類のような香りや味わいが出てきます。にんじんのおいしさがそこにあります。

まず、フライパンににんじんを入れ、塩をひとつまみいれます。味付けのためではなく、水分を早く出すためです。
2分ほど、ときどきフライパンをゆすりながら強火で加熱し、水分が出はじめたところで油を加えます。

油は、クセのない油のほうが、あとでいろいろ使いまわせます。私はなたね油を使っていますが、サラダオイルで十分です。

油は多めだが、にんじんが吸ってくれる

あまりかき混ぜ過ぎるより、へらで平たくならして、あまり触らないようにしているほうが火は通りやすいです。

中盤までは、あまり動かさず、しばらく火を入れたら大きく混ぜて、上下を返す
後半は、細かく動かしつつ、焦がさないように炒める

だんだん焦げやすくなりますので、様子を見て焦げ付きそうなときは水を大さじ1くらい加えましょう。最後の方はへらや菜箸で動かしながら、焦げを防止します。

炒めていると、色や香りが変わってくるのがわかります。そこまできたら、しりしりは完成。

炒めて1分と5分で、味くらべすると違うのがわかる

半分をスープに使い、半分は常備菜としてとっておきます。
にんじん1本でもできないことはありませんが、5分ほど炒めるには量が少なく、焦がしやすいのでこの分量を単位としています。

しりしりは、とても便利な常備菜です。このままで食べてもおいしいし、炒め物に使っても、ドレッシングやマヨネーズを混ぜてサラダに、またサンドイッチやトーストにと、変幻自在。味をほとんどつけないため、和洋中応用がきき、にんじん2本分ぐらいはあっという間に食べてしまいますよ。
味付けがほとんどないため、作った翌々日ぐらいまでには食べ切ってください。冷凍も可能です。

にんじん2本ぶんのしりしり

★3 スープへの展開

にんじんのしりしりに水や牛乳など水分を加えて煮出せば簡単スープになります。
牛乳が入っているため吹きこぼれやすいので、沸騰しかけたら火を弱火にして煮込みます。

にんじんのオレンジ色がスープにきれいに移ったら完成!

水分は少なめのスープなのでフライパンでも十分にできますが、吹きこぼれに注意しましょう。

脇役じゃない!主役としてのにんじんのおいしさ

さまざまな料理で、脇役をつとめることの多いにんじん。
でも真骨頂は単独で食べることです。

にんじんをしっかり炒めることで独特の匂いが消え、甘みが十分に生かされるようになります。火が通るのに時間がかかるにんじんを千切りにするから、短時間加熱でもおいしくなるのです。

晩秋にかけて輝きを増すにんじんは、カロテンがたっぷり含まれ免疫力を高めるにも効果があるといわれます。主役としてたっぷりと食べてください。

【アレンジ】にんじんと相性のよい副素材をプラス

アレンジには、にんじんのやさしい味わいを、なるべく生かしてくれる素材を選びましょう。かくし味程度に香りのものを入れたり、酸味や苦味を加えたりすると、おいしさがきわだちます。

紹介するアレンジはどれも、牛乳のかわりに水で煮て、副素材を加えたスープです。

にんにく風味のにんじんスープ

しりしり+水だけでシンプルに仕上げたにんじんスープ。牛乳よりもメリハリのある味わいで男性向き。ほんのわずか、にんにくのすりおろしを加えると、味がキュッと引き締まります。入れ過ぎは禁物です。

にんじんと鶏肉、イタリアンパセリのスープ

にんじんは、セリ科の植物です。同じセリ科の植物やハーブと相性よし。鶏肉の細切れ肉をほんの少し加えたスープに、刻んだイタリアンパセリを散らします。パセリのほか、フェンネルやパクチーなどもセリ科です。

にんじんとレーズンのサラダスープ

ビストロなどで出てくるにんじんラペを、ホットサラダにしてしまったようなスープです。レーズンは煮るときに最初から入れ、最後にワインビネガーやレモンなどの酢を数滴たらします。パンを添えて、ワインのおつまみにもどうぞ。

レシピマガジン【スープ・レッスン season2 秋】で、秋のスープをお楽しみください。

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読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。