「しりしり器」という不思議な調理器具
今週の『リアル・スープ・レッスン』では、「にんじんのしりしりスープ」のレシピを公開しました。にんじんのしりしりは、千切りのにんじんを炒めた、沖縄の郷土料理です。
にんじんのしりしり。卵やツナ缶を一緒に炒めるのがポピュラーです。
しりしり、というひょうきんな名前は、沖縄の方言で千切りのことだとも、あるいはにんじんの千切りをするときにシリシリ音がするからそう呼ばれているとも言われています。
そのシリシリという音を立てる調理器具が、にんじんのしりしり器です。
しりしり器というのは通称で、野菜の千切り器のこと。
(キャプ)私が使っているのは、小柳産業「ジュジュ野菜調理器 蜂の巣」。
しりしりをよく作る沖縄の家庭では一家に一個…かどうかは不明です。どのおうちにもあるのでしょうか、沖縄の人に聞いてみたい。
使い方は、野菜を押し付けて擦るように動かすだけ。下から千切りになったにんじんがどんどん生まれます。にんじん2本ぐらいなら、あっという間に千切りにできます。
これがあれば千切りもらくらく!
さて、このしりしり器、普通の千切り器と何が違うの?と思われる方も多いでしょう。
千切りになったにんじんをちょっと見てみましょう。
太さはある程度揃っていますが、不揃いで、切り口がギザギザしているのがわかるでしょうか。実は、思ったより「美しい」千切りではないのです。
ちなみに、普通の千切り器ではどうなるでしょう。
貝印の「せん千切り器」で切ったにんじん。切り口がしりしり器に比べてスパッとしています。(細さは3種類あり、これは真ん中のサイズ)
http://www.kai-group.com/store/products/detail/997
ちなみに、こちらは私が手切りしたもの。
割と切れる包丁を使っているので、切り口はまっすぐ。
でも実は、この不完全な切り口こそが、しりしり器を選ぶ理由なのです。
あまり切り口がきれいだと油や調味料はなじみにくい。断面がギザギザだからこそ油や調味料がしみ込みやすいのです。ラフな食感も作り出してくれます。
ビストロなどで出てくるキャロットラペ(にんじんサラダ)も、しりしり器で作るとよい料理のひとつ。キャロットラペを作るには、切れないスライサーを使えというシェフもいるぐらいです。
キャロットラペ。ドレッシングがよくしみ込むので、作りたてもおいしい。
しりしり器をよく見ると、刃がやや甘いのですが、これが独特の切り口を作ってくれるのです。切れないことが魅力、という不思議な刃物です。
しりしり器と普通の千切り器との使い分けですが、シャキシャキとした食感を楽しみたいときは、よく切れる千切り器を選びましょう。
繊細な細切りのきんぴらごぼうや
千切り野菜で野菜のしゃぶしゃぶなどにはよく切れる千切り器を。
刺身のツマも、よく切れる千切り器で。
千切り器やスライサーは、注意しないと指を一緒に切ってしまうことがあるので、指ガードがついた製品だと安心ですね。
貝印の商品は指ガード別売り。
いろいろなタイプの千切り器があるので、選んでみてください。
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。