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私の読書●小説家志望の読書日記⑥伊藤計劃『虐殺器官』

 非常に非常に面白かった。

 それにしても、この作品もおそらく根っこにはドストエフスキーの問いがある。

 『カラマーゾフの兄弟』における、イワン・カラマーゾフの思索と懐疑をほうふつとさせる展開があるのだ。私が思っていた以上に、ドストエフスキーは現代日本作家のなかの特定の部分に大いなる影響を与えていると思われる。ドストエフスキーは、「答え」よりは「問い」あるいは「懐疑」をとことんまで突き詰めて書いた作家だ。たとえそれが信仰にいたる道を究めようとするものであったとしても、いわば神なき我々にも強烈に迫りくるものがあるのだ。
 ああ、私も書いてみたい。私なりの回答を。いや、それにいたる道を。

 この作家が、『虐殺器官』をデビュー作として、その後わずか2年で没したというのは、日本文学にとって、なんたる損失だったろう。そういう気にさせられる作家だ。本当に、心から、もっとこの作家の作品を読んでみたかったと思う。



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