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私の映画●流行に関係ない映画評『シルミド』(韓国・2003年)

●2003年・韓国・136分

●監督 カン・ウソク

●キャスト
 アン・ソンギ(チェ・ジェヒョン/韓国空軍准尉)
 ソル・ギョング(カン・インチャン/第3班長)
 ホ・ジュノ(チョ2曹/韓国空軍兵)
 チョン・ジェヨン(ハン・サンピル/第2班長)
 他

【感想】


 初めて観た韓国映画。魂を持っていかれた。私の韓国(朝鮮半島)への関心は、ここから始まる。以後、他の韓国映画も好んで観るようになり、独学でハングルまで勉強した。

 映画のポスターを見たときは、アクション映画に毛の生えたようなものかと思ってさほどの関心は持たなかったのだが、のちにテレビ放映されたのを観て、何で映画館で見なかったんだろうといたく後悔。ぜひ映画館の大スクリーンで観たかった映画だ。

 この映画は実話をもとにしている。北朝鮮工作員による韓国大統領暗殺未遂事件をきっかけに、韓国諜報部KCIAが極秘に進めた作戦。担い手は韓国空軍。北朝鮮の金日成の暗殺を敢行するため、元は民間人から成る特殊部隊をシルミド(実尾島)で育成した。
 3年間の厳しい訓練に耐え、強力な部隊に成長した彼ら。いざ北朝鮮への侵入作戦に向かおうとした矢先、南北をめぐる情勢は激変、一転して和解ムードが醸し出される。国家・情報部はこれを受け、用済みになり、かつ機密を知る彼らの抹殺命令を下した。彼らは自らを育てた空軍兵士たちと血みどろの戦闘を繰り広げ、生き残った者がシルミドを脱出、バスジャックして、まっすぐにソウルを目指す。

 名優アン・ソンギ、ソル・ギョングは言うに及ばず、俳優たちの顔つきの良さといったら! イケメンとか、そういうことではないよ。魂のある顔をしている。
 国家による裏切り、隊員たちの反乱。ソウルを目前にして韓国正規軍に囲まれた彼らは、ソル・ギョング演じる第3班長とチョン・ジェヨン演じる第3班長(彼らは以前は敵対していた)の、「(もう)いいか」という万感の一言を合図に、いっせいに手りゅう弾で自爆する。
 彼らは、バスの中に自らの名前を刻み込んでいた

 ラストシーン、この機密事項に関する文書をしまったロッカーの色が、時を経て薄黒く傷んだ色になる。長い間封じ込められたことを暗示するシーン。
 実際、この映画をきっかけにして時の政府内に「真相究明委員会」ができ、史実が明らかにされたという。


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