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私の読書●小説家志望の読書日記④中村文則『掏摸』

 中村文則の『掏摸』を再読していて、気になった言葉がありました。

 主人公の「運命」を「神」のように支配しようとする人物の言葉。

 「……他人の人生を、机の上で規定していく。他人の上にそうやって君臨することは、神に似てると思わんか。もし神がいるとしたら、この世界を最も味わってるのは神だ。俺は多くの他人の人生を動かしながら、時々、その人間と同化した気分になる。彼らが考え、感じたことが、自分の中に入ってくることがある。複数の人間の感情が、同時に侵入してくる状態だ。お前は、味わったことがないからわからんだろう。あらゆる快楽の中で、これが最上のものだ。いいか、よく聞け」

 これって、何かに似てると思いませんか?
 そう、作家です。
 作家の快楽のようにも読めるな、とふと思った次第です。





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