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『ストロング・スタイル』のウラバナシ(2)

  前回のウラバナシでは、『ストロング・スタイル』の主人公、「御子柴大河」の元ネタなどについてがっつりとネタバラシさせていただきました。

 今回は、もう一人の主人公「小林虎太郎」についてのネタバラシ。noteは相変わらずただのプロレスファンとして書かせていただきますので、プロレスを知らない方はちょっと何言ってるかわからないと思う部分が多々あるかと思いますけれども、何卒ご了承くださいませ。

↓↓↓以下、ネタバレあり↓↓↓

■小林虎太郎のキャラクターおさらい

 作中に登場する虎太郎のプロフィールはこんな感じ。

名前:小林虎太郎(こばやしこたろう)
リングネーム:HIKAGE(JUNGLE所属時)
年齢:30歳(作中初登場時点では20歳)
所属:NMBF → PRO-WRESTLING JUNGLE
身長:164~5cmくらい(作中では記述無し)
体重:65Kg(NMBF時代)→79Kg(30歳時)
必殺技:ダブルローテーション・ムーンサルト・プレス
得意技:フライング・フォーアーム、スプリングボード式ラ・ケブラーダ 

 主人公・大河は、恵まれた体格を生かしたパワーファイターでしたけれども、対する虎太郎は、プロレスラーとしてはかなり小柄ながら抜群の身体能力を活かして空中戦をこなすテクニカルなマスクマン、というキャラクター。得意技も多彩で、器用なタイプのレスラーですね。

 「小林虎太郎」という名前は、前回のネタバラシでちょっと触れたんですが、虎ハンター・小林邦昭と、タイガーマスクから。なんかちょっと古風な名前、と思うかもしれないのですけれども、今小学校低学年くらいの男の子だと、「虎太郎」という名前の子が結構いるらしいんですよね。たまひよさんによると、2010年の赤ちゃんの名づけランキング、8位が「虎太郎(こたろう)」、9位が「大雅(たいが)」なのです。

 作中、小学生時代の二人のシーンがあるので、「虎」というイメージを持たせた名前でも現実離れしすぎないように、キャラクターの名づけの際にはこういったランキングを参考にさせていただくこともあります。 

■モデルはレイ・ミステリオJr.など多数。

 「小柄でテクニカルなプロレスラー」というと、僕の中で一番印象が強いのは、かつてのWWEのスーパースター・レイ・ミステリオ・Jr.選手。
 昔から大好きな選手でして、2016年のAAA(トリプレア)日本公演の時に、思いっきり握手してもらったのはいい思い出です。もうね、こう、腕相撲やるみたいな感じでがっつり握ってもらったんですよね。うは!

 虎太郎の場合、基本的なムーヴはメキシカンプロレス(ルチャ・リブレ)スタイルなので、好きなルチャドールのイメージをいっぱい詰め込みました。初代ミスティコ(現カリスティコ)とか、ドラダとか、ドラゴン・リーとか。空中戦を得意とするレスラーたちですね。

 常人離れした虎太郎の身体能力・空間認知能力は、幼いころから通っていた器械体操が原点、という作中の設定がありますが、これは、二代目タイガーマスク、故・三沢光晴選手がモデル。前述のルチャドールに加え、タイガーマスクの要素も入れておきたかったので。

■マスクのイメージ

 虎太郎はインディープロレス団体・NMBF時代は、白いマスクを被っています。これ、原稿段階では「ウルティモ・ブランコ」というスペイン語のレスラー名がついていました。直訳すると「究極の白」で、サンダー真田が色白の虎太郎をからかってつけた名前、という裏設定があります。レスラー名を連呼すると字面的にうるさい、という理由で、本編では「白マスク」としたんですけれども。
 白マスクのイメージは、ドクトル・ワグナーJr.選手の、白一色バージョンのマスク。往年の新日ファンには懐かしい名前かもしれません。

 さて、その後、虎太郎はデスマッチ団体・JUNGLEに入団、紆余曲折を経てまた新しい覆面を被ることになります。JUNGLEでは、NMBF時代と対照的な、黒を基調としたマスク。これは、ベビーフェイスからヒールへのターンをわかりやすくしようとしたのと、虎太郎自身が内包する、相反した人格の表出を象徴したものでした。

  HIKAGEというリングネームは、「闇の忍者」というギミックから、「火影(ひかげ・ほかげ)」というネーミングを考えた、という設定でしたが、同時に「日陰」というイメージも入れました。日の当たる道を走り続ける大河との対比、陰陽イメージです。

 実際のプロレスでも、忍者ギミックのレスラーって、男女とも結構いるんですよね。わかりやすいし、海外で人気者に慣れそうだからですかねえ。
 グレート・ムタももともと忍者ギミックですし、グレート・サスケとかハヤブサもそう。女子プロレス界でも、くノ一ギミックのレスラーがいらっしゃる。フィクションの世界でも、プロレスをモチーフにした漫画「キン肉マン」作中で「ザ・ニンジャ」という超人が出てきますね。

 HIKAGEのコスチューム的なイメージが一番近いのは、元・みちのくプロレスのHANZO(中島半蔵)選手かなあ、と思います。目のところにメッシュ入れたバージョンのマスクの方が、個人的には好きです。

■得意技の元ネタ

 作中、プロレス技がいくつも登場しておりますけれども、多分、一番技を出していたキャラクターは小林虎太郎じゃないかなと思います。
 各技には、もちろんモデルが。

◆フライング・フォーアーム → 内藤哲也選手 
  ロープに振られて、びよーんと戻ってくるアレ。
  作中ではボディアタックと表現しましたけど、実際はエルボー。
◆スペース・ローリング・エルボー → 武藤敬司選手
 天才・武藤敬司の代表的なオリジナル・ムーヴ。
◆ローリング・ソバット → 初代タイガーマスク(佐山聡選手)
 タイガーマスクの代名詞的なムーヴ。中島半蔵選手も使い手でした。
◆スプリングボード式ラ・ケブラーダ  →  TAKAみちのく選手他
 TAKA選手の通称「宇宙人ケブラーダ」。 
 最近だと、飯伏幸太選手も使い手。メキシカンにも使い手が多数。
◆ダブルローテーション・ムーンサルト・プレス → リコシェ選手
 初見の時には度肝を抜かれた、ドラゲ時代のリコシェ選手の必殺技。

 何度見てもとんでもねえ技でございます。


 とまあ、第二の主人公・小林虎太郎のモデルについていろいろネタバラシをしてまいりましたけど、あらためて見ると、ちょっと常軌を逸した天才になりすぎたかなあ。フィクションだからいいっちゃいいんですけど。

 作中で、カルロス志間というキャラクターが、ぴょんぴょん飛び回るプロレスラーは好きじゃねえ、的なことを言うんですけど、実際のファンの方の中にも、そういうことを言う人がたまにいますね。僕はでも、空中戦もプロレスの醍醐味だと思うんですよ。
 パワーファイターっていうのは他の格闘技でも存在しますけど、テクニカルなハイフライヤーというのは、プロレスならではの存在だと思うんです。華がありますし、プロレス初心者にも凄さがわかりやすい。プロレスへの入口として、欠かせないキャラクター。なので、作中にどうしても登場させたかったのです。

 日本のメジャープロレスも面白いけど、CMLLとかAAAとか、ルチャリブレも面白いよ! ということで、今回も趣味丸出しのネタバラシをお届けいたしました。



小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp