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平均点80点以上が5%以下、得点率が1けたの小問 公立高校入試問題(数学)

2022年3月末まで中学校で数学を教えていた私は、
進路を控える中学3年生のために

学校の授業で
いかに高校入試問題に対応できる学力を身につけることができるか

を課題にし、教材研究に取り組んでいました。

しかし、私の住んでいる県教育委員会が毎年公表する
【入学者選抜学力検査の実施結果】を確認する度に、

「授業だけではその問題に対応するのは不可能…」

「大問1の基本問題を解答する力しか
 授業で身につけることができないのでは…」

と、いつもあきらめの言葉が頭をかすめます。

過去5年間の得点データ(数学)

このデータを見ると、
過去5年間で80点以上得点できた受検生は全体の5%以下程度です。
ちなみに平成29年度では1.4%でした。
1000人受検した高校の場合だと、
80点以上の生徒が50人もいないということです。

この割合が90点以上であれば、ある程度納得できるのですが、
全体の90%以上もの生徒が80点以上得点できない入試問題は、

数学の力があるか? ないか?

を判定するのに適切な問題なのかと疑問を抱いてしまいます。
県教育委員会が
80点以上を基準に数学の学力が高いと判断するのであれば、
90%以上の生徒たちは
数学ができない、もしくは、普通の学力しかない
ことになってしまいます。

この難易度の入試問題の場合だと、
学校で行われる定期テストなどで、
いつも80点以上得点できている生徒のほとんどが
80点以下になってしまうということになります。
各学校で

「数学が得意だ」
「数学ができる!」

と思っている生徒たちは、この入試問題で挫折を味わい
自尊感情を損なう要因になってしまうかもしれません。

また、一昔前まで行っていた相対評価による成績では、
全体の7%(100人のうち7人)を「5」で
評価していたことを考えると、
学校のテストにおいて
最低でも7%以上の生徒が80点以上は得点しているはずです。
普通に考えれば、
高校入試においても同様の割合で80点以上の生徒がいても
おかしくないのですが、
このデータから考えると、数学の成績が「5」の生徒であっても、
80点以上得点するのは至難の業になってしまうというのが現実です。

過去5年間の得点分布に大きな変化が見られないので、
生徒の学力が下がったことが原因であるとは考えられません。

学力を検査する入試問題として、果たして相応しいのでしょうか?

小問別得点率(全日制1/40抽出)

次のデータは、小問の最低得点率です。

令和4年度 2.0%(平面図形 線分の長さ) 
令和3年度 1.0%(立体の体積)
令和2年度 0.5%(規則性)
平成31年度 0.7%(円の面積)
平成30年度 2.6%(平面図形の面積)

100人受検して2人程度しか正答しないかなり高難度な問題です。

まず、なぜこのような難易度の問題を出題するのか、
その意図がわかりません。

・満点をとらせないために?
・差をつけて合否判定するために?
・この難易度の問題を解けるように指導しなさいと
 中学校教員へメッセージを送るために?

などと、受け取ってしまいそうです。

どう考えても学力検査の名目通り

【学力を推し量るため】

という目的にそぐわない気がします。

得点率0.5%に至っては、
100人いても1人も正解できない問題を設定していることになるので
一体、生徒の何を推し量るというのでしょうか?

数学嫌いを作るシステム⁉

このような学力検査を続けると大半の生徒たちは、
思っている以上に得点できないため、

(やっぱり自分は数学ができない)
(数学が苦手)
(理系は無理だから、文系に進もう)

と感じてしまい、数学の才能の芽をつみかねません。

だから、私は生徒たちに

「○○県の入試問題は難易度が高いから、
 できなくても落ち込む必要はない」
「できない問題は、ほとんどの人ができないのだから気にしないこと」
「この問題で50点台、60点台を得点できたら、
 数学ができると胸を張っていい」

と、自身の学力に対して正しい認識ができるよう
○○県における高校入試問題の情報を正確に伝えていました。

私自身、退職するまでになんとか
公立高校入試問題の平均点を目指せる授業の構築までは
たどりつきましたが、
残念ながら、それより上の得点を獲得するには
授業だけではかなり厳しいと言わざるをえません。

生徒たちの未来の可能性のために
中学3年間の努力を正当に評価する受検システムの構築を
切に願うばかりです。

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