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1人学級の授業

先日、
テレビで卒業生が1人しかいない学校を特集しているニュースを見ました。

私も教師生活の最後は、離島の中学校で勤めていたので、
少ない人数の中でも工夫しながら学校生活を送っていた
生徒たちとの触れ合いを思い出し、懐かしく思いました。

ただ、ニュース映像の中でその1人の卒業生の授業場面が映ったとき、

「うーん…1人しかいないのに、なぜそのスタイルで授業するのか…」

と唸ってしまいました。

その映像は、
教師が教科書(?)をもって黒板に授業内容をまとめ、
生徒は広い教室の中でただ1人、
学習机で授業を受けているというものでした。

私が勤務していた中学校にも、学年に1人の生徒しかいないクラスがあり、

「少人数というメリット生かす授業」

を追究したいと考えていたので、

「たった1人だけなのに、
 40人学級と同じスタイルで授業を行うべきなのか?

と疑問を抱いていたことを思い出しました。


確かに

<教師が授業内容を黒板にまとめ、生徒がノートに写すというスタイル>

は、学校の歴史の中で

学習内容が公平に伝わるよう培われてきた効率のよいシステム

であることは認めます。

しかし、1人または少人数の生徒に対して、
何の工夫も疑いもなく、全く同じ授業スタイルで行うという選択が
betterであるとは私には思えませんでした。

あるとき職員会議で、

「この授業スタイルをやめて、
 少人数のメリットを生かし個別に特化した授業を目指しませんか?」

と提案し、

【生徒の横に座ってノートでやり取りすれば、黒板にまとめる必要がなく
 時間短縮もでき、生徒との対話時間や活動が増える】

という例をあげました。

しかし、

「学校は家庭教師や塾じゃない」

という意見が出てきて、全体的に反対の雰囲気となりました。

ただ、私としては、
なぜ突然、家庭教師や塾の話題が出てきたのかがわからず、
また、何をもって比較したのかがよくわからなかったので、

「学校で家庭教師や塾のように行ったら、何がダメなんですか?」

「学校の授業スタイルで行うことのほうが
 家庭教師や塾より効果的なことは何なのか
 相違点も含めて教えてください!」

と質問しましたが、私が納得できるような明確な返答はありませんでした。

そして、なんやかんやと理由がつけられていき、
結論としては、

今まで各々が培ってきた授業スタイルを続けたい

という方が多かったため、
残念ながら学校全体として授業改善に取り組むことはできませんでした。

ただし、
私個人として追究することを禁止されたわけではなかったので、
地道に少人数のメリットを生かせる授業を目指しました。

【私が1人学級の生徒に行った授業】

・黒板を使わず、パソコンを生徒の目の前におき、
 PowerPointでまとめた教科書の内容を一緒に見ながら授業を進める。

・生徒の横または前に座り、授業プリントで説明しながら授業を進める。
 
 ※通常よりはるかに生徒との距離が近いので、
  生徒の反応をよりダイレクトに感じ取ることができ、
  指導方法を臨機応変に修正することができる。
 ※物理的な距離だけでなく生徒との心の距離感も縮まりやすくなるため、
  生徒が質問しやすい雰囲気をつくりやすい。
 ※苦手な分野がリアルタイムにわかるため、
  それに対応できるようにするための教材が毎時間ごとに作成できる。

・黒板に自分の考えを書いて発表するようなスタイルは必要ないので、
 対話の中で説明を促すようにする。

 ※世間話の延長のような雰囲気をつくることによって、
  言語化のハードルが下がる。

・前の黒板に大きな役割がなくなったので、
 学習の定位置というものがなくなり、
 気分転換に座席の方向を変えて授業をしたり、
 必要があれば自由に教室を飛び出し、
 グラウンドなどの別の場所で授業したりすることができる。
                              など

教師(大人)と1対1で授業をするというただでさえプレッシャーが
かかりやすい状況であることも理解する必要があるでしょう。

ただし、私の実践が正しいということを主張したいのではなく、

40人のクラス
  と
1人のクラス

は明らかに違うのだから、固定観念にとらわれず
状況が違えばアプローチの仕方も変えていくという考え方が
必要であると思います。

少子化が進むと1クラスの人数が減少していくという状態が、
この先起こりうると考えられるので、
果たしてどう対応していくのでしょうか?

(余談)
行政的な観点でいえば少子化が進み生徒数が減ると
学校再編による統合を行うでしょうが、
学校数、クラス数が減ると教員数が定員オーバーしてしまいます。
定員競争が行われるようになるかはわかりませんが、
違いが出せる教員の付加価値が求められる時代がくるのかもしれません。

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