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珍解答って素晴らしい!

 呼び出し田中先生やめちゃイケなどの番組でタレントさんたちのテストの珍解答を見ると、思わず笑ってしまいますが、
それと同時にその豊な発想力に感心させられ、
自分にはない才能なので劣等感を抱いてしまいます。

 そんな私の経験の中にも忘れられない珍解答との出会いがあり、正しい答えよりも強烈に記憶に残っています。

珍解答 エピソード1

 私は高校1年のころ下宿(1990年代)をしていたのですが、同じ下宿先にいた同郷の先輩から夕飯時の雑談で、国語の短文テストについての話を聞きました。
 先輩は同じクラスの友人と、なぜか張り合うように短文で珍解答を創作し、その得点で勝敗を競っていたそうです。
その中で未だに記憶に残っているのが

「あわや」という用語を使って短文を作りなさい。

という問題に対する解答です。

先輩「お前ならどう答える」

と聞かれたので、仕方なく

私「自転車を運転中、目にトンボが入ったため、あわや交通事故に
  なりかけた」

と何の面白みもない短文を答えました。すると、

先輩「違うな、真の答えはこれや!」

と、まず友人の解答を披露しました。

先輩の友人の解答
 あわやのり子

 この解答を聞いた瞬間、飲んでいるお茶を吹き出してしまいました。
淡谷のり子さんは当時、私の大好きなモノマネ番組の辛口審査員をして
おり、特にコロッケさんや清水アキラさんに対して厳しい採点とコメントで
お茶の間を沸かせる強烈なキャラクターだったので、よりインパクトを感じました。
 思わず、

私「そもそも文章でないし、固有名詞やん」

とツッコんでしまいましたが、これは完全に相手の思うツボで、
先輩のニヤリとした顔が今でも脳裏に浮かびます。イラっとしつつも、
短いワードで、かつ、
当時の著名人、しかもクセのある人物をチョイスするセンスに感心するとともに、その柔軟な思考発想力に嫉妬してしまいした。

そして、満を持して

先輩の解答
 AくんとBくんが池のほとりを散歩していると、
 池で何やらブクブクわいている。
 Aくんが「あれ何や?」聞くと、
 Bくんは「あわや」と答えた。

 ドヤ顔しながら披露していましたが、最初の「あわやのり子」の解答が衝撃的すぎて、先輩の解答があまり入ってこず、リアクションに困ってしまいました。
トークの順番って大事だなってつまらないことを思いつつ、その時は、適当な感想を伝えて満足してもらいました。

 しかし、後でよく考えてみるとこれはこれで味があり、
やはり自分ではテスト中にこんな発想はできないと、格の違いを見せつけられた思いでした。

「聞かなくてもってわかるやろ?」

という軽いツッコミを引き出す文章の中に、

・関西弁の「や」の有効活用
・短文なのに登場人物が2人の物語をわざわざ創作
・「何や」「あわや」で軽く韻を踏む

というテクニックや意図が感じられました。

「真剣に解答したら点数とれる短文書けるやろ!
 どこに才能を使っとんねん!」

というツッコミをその場でできなかったことを悔やみました。
まぁ1番驚いたのは、この珍解答に部分点を与える国語の先生でしたが…

珍解答 エピソード2

 これは私が教員になってから出会った珍解答です。

△ABCと△DEFが合同であることを証明しなさい

という感じの図形の証明問題を出題しました。
証明をすべて書く問題なので難易度は少し高めでしたが、生徒たちには

【わからなくても空欄にはせず、一生懸命考えて何か必ず書くこと】

と指導していたので、
私も何か書いている解答には、少しでも部分点をあげられないかと考えながら採点していました。
そんな超真剣モードの採点中、大きな解答欄の真ん中に一言

三角形の合同の証明の解答
 見た目そんな感じ

と書かれていたのを見たとき、
緊張感が一気に緩み、腹筋崩壊するのではと思うぐらい爆笑して
職員室の顰蹙を買ってしまいました。
お笑いは「緊張と緩和」が大事であると誰かが言っていましたが、
まさにその体験をした瞬間でした。

ただ、この解答もよくよく考えてみると、正しい正しくないかは別として

「見た目で合同であると感じた」

という論理は間違っておらず、
しかも、〈見た目そんな感じ〉は簡潔で、この
無駄を省いた一文に美しさすら感じました。
ある意味正解かも??と感じて思わず、マルを書きかけましたが、
そこはグッとこらえました。

 しかし、感動したのは束の間、後日、この解答は

漫画MAJORの主人公である茂野吾郎が海堂高校の入学試験に書いたものをそのまま引用していたことが判明しました。

 残念な気持ちはありましたが、
それよりもやはり売れている漫画家さんのワードセンスは「爆発力が違う」と感嘆しました。
・漫画の絵によるイメージ
・茂野吾郎のパーソナル情報
・物語の流れ
があっての「見た目そんな感じ」が面白いのは明白ですが、
何せ、採点中の私はその事実を知らずにいたのに心を鷲掴みにされたんですから、尊敬しかありません。言葉の力ってすごいですね。

珍解答 エピソード3

 音楽のテストを返却していたときのことです。ふと解答欄の一カ所に目が行き、思わず吹き出しかけましたが、そのときは全力で我慢し、何とかこらえることができました。

それは音楽の記号クレッシェンドの意味の解答でした。

本来の意味は「だんだん強く」ですが、その解答用紙には

クレッシェンドの意味の解答
 そろそろ本気になるぜ!

と書かれていたんです。
確実に採点する先生を笑わせようとしているだろうと思いましたが、
ある意味、正解なのでは?とも思いました。

だんだん強く歌ったり、演奏したりしなさい

という指示の記号を、

そろそろ本気になって歌ったり、演奏したりしなさい

というように言い換えただけと考えれば、あながち間違っていません。
人によってはだんだん強くと言われるより、
そろそろ本気になろうかと言われたほうがわかりやすいと感じるかもしれません(そんな人はいないか…)。
 
 また、深読みしすぎかもしれませんが、
「音の表現には人の意志(本気)が大切である」
というメッセージがあるととらえることもできます。
「そろそろ本気になるぜ」
これも短文で破壊力のある解答です。

まとめ

 この3つのエピソードが私の記憶に強く残っている珍解答です。珍解答に対してその捉え方は千差万別でマイナスに感じる人もいるでしょう。
しかし、私は

珍解答は素晴らしい

珍解答だからこそしっかり評価して、その発想力を伸ばす教育が必要だと感じます。
 
 教科の学習も大切ですが、教師が想定する以上の発想力は、
なかなか期待できません。
だからといって、テストなどで意図的に珍解答を促すと
いろいろ生徒たちが不利益を被る場合が多いので
現実的ではないこともわかっています(意図せず珍解答になってしまう場合はもちろん適切に対応するべきですが…)。
 
 そこでダウンタウンの松本人志さんも推奨する大喜利を教育活動に取り入れるのはどうでしょうか?私はアリだと思いますし、実際、私の受けもったクラスではレクレーションで大喜利みたいなことを企画したことがあります。
生徒たちは可能性の塊なので、いろんな角度から刺激を与えることで成長していくはずです。珍解答もその1つなので広く深く、子どもたちを見守っていきたいものです。

 ちなみに私も高校時代、先輩をまねて珍解答を書こうと思ったんですが、発想力と勇気がなく断念しました。


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