自主学習ノートは学習習慣を身につけ、学力を向上させる!?
私は中学校で担任をしているとき、生徒たちの
・学習習慣を身につける
・学んだことを定着し、学力を向上させる
ためにノートを1冊準備して、
「毎日最低1ページ」
何でもいいから勉強して提出するように指導したとことがあります。
しかし、私のやり方がまずかったのか、
その目的を達成するための手段として自主学習ノートが有効であるという
実感を得られたことはあまりありませんでした。
自主学習ノートの目的と現実
学習習慣を身につけるため、クラス全員に強制しましたが、
元々学習習慣が身についている生徒にとっては
必要のない課題であり、
むしろそれぞれが考えている学習スケジュールを乱し、
負担となりかねません。
逆に学習習慣を身につけてほしい生徒は、
それまで家庭で毎日学習することがほとんどなかったから、
どうしても自主学習ノートの提出率が低くなってしまいがちです。
だからといって、その状況を放置しておくと
他の生徒も
「あの子が提出していなくても注意されないんだったら、
私も提出しなくていいだろう」
と考えてしまうため、
自主学習ノートの運営ができなくなってしまう可能性がでてきます。
そこで、提出しない生徒を注意し、
終学活後、部活に行く前に自主学習ノートを取り組ませるような指導を
していましたが、
この時点で
自主的に家庭で学習習慣を身につけるという目的が破綻してしまい、
自主学習ノートを提出させることだけが目的になりかわってしまいました。
それならば全員強制ではなく、
希望者だけ提出するようにしたこともありますが、
結局、自分で学習している生徒は担任の先生に勉強の成果を
チェックしてもらう必要がないので提出率は低く、
学習習慣を身につけてほしい生徒は
元々やる気が希薄なので提出することはほとんどありません。
まじめに提出する生徒もいましたが、強制でないため
徐々に回数が少なくなり自然消滅することになりました。
また、学力を向上させる目的についても
元々学力が高い生徒にとっては
自主学習ノートがなくても、別のところで学力を向上させようと
自主的に努力しますし、
学力を身につけてほしい生徒にとっては
勉強を苦手としているので、
何をすればいいのかわからないと感じることが多く、
提出するにしてもただ漢字を書いたり計算をしたりするだけの
簡単な内容になりがちなため、独力での学力向上は望めそうにありません。
中には色ペンなどを使ってイラストや図を活用し、
きれいに授業内容などをまとめて提出する生徒もいるので
感心させられますが、
まとめることだけに力を入れて、
覚えたり活用したりすることがおろそかになってしまえば
学力向上にはつながりにくいので心配になってしまいます。
そして教師側も、毎日多くの業務を抱える中で
40名近くのノートを1つずつ丁寧にチェックする時間は
そんなに確保できず、
取り組んでいるか、取り組んでいないかのチェックが
中心となり細かなアドバイスをすることが厳しいという状態でした。
そもそも自主学習ノートをしたら学力が向上するという
エビデンスを示していないことが大きな問題です。
よくよく考えてみると、
私が担任になって自主学習ノートを始めたのは、
(周りの先生方が行っているからやってみよう)
という程度の理由であったことに気づきました。
実施するのであれば、
その目的を達成するために
細かな指導をしなければならないと思いましたが、
私のキャパオーバーのため
最終的には自主学習ノートを辞めることになりました。
ただ、辞めたからといって、学習習慣や学力に大きな変化がなかったので、特に問題はありませんでしたが…。
自主学習ノートを効果的にするには…
では、自主学習ノートを効果的にするにはどうすればいいのでしょうか。
まず、教師の目が届かない家庭学習であるため、
保護者の方の協力が不可欠です。
そのために面談で保護者一人ひとりと話をし、
相互理解を深めなければなりません。
生徒に学習習慣をつけるために
・やる気のメカニズム
・声かけの仕方
などのノウハウを丁寧に説明し、
特に勉強な苦手な生徒の場合、
親子一緒に取り組むことの大切さを伝える必要があります。
しかし現実的には、
共働き等で親子の時間共有が難しいなどの家庭事情もあるため、
理解と協力を得るのはかなりハードルが高いと思います。
学級懇談会で保護者の方に説明したこともありますが、
(勉強するのは本人だから親はそこまで干渉する必要はない)
(本人のがんばり次第)
という空気が強く、
協力を得るにはかなり時間を要すると感じたこともありました。
また、当事者である生徒たちには、
勉強の仕方を細かく教えて自主学習ノートを
自分で活用できるように指導する必要があります。
大半の生徒たちは勉強の仕方をわかっていない場合が多いので、
実践例をあげるだけでなく、先生が見守る中、
生徒自身が実際に試してみなければ身につきません。
口頭でアドバイスするだけではなかなか難しいので、
自主学習ノートの活用法に関する授業をするのも
1つの手なのかもしれません。
そして、教師側は提出されたノートの内容を時間をかけてチェックし、
アドバイスをしながら修正を繰り返していくという
個に応じた指導が必要になります。
保護者、生徒、教師の三者の協力のもと、
ここまでの労力を費やせば
・学習習慣の定着
・学力向上
が期待できるかもしれませんが、
自主学習ノートだけが学校教育ではないのでなかなか難しいと思います。
まとめ
以上のことから生徒の自主性という名の
放任状態になりがちな自主学習ノートを実施するだけでは、
あまり効果はないと思われます。
私のように明確な根拠ももてず、
指導力と時間の不足を感じるのであれば思い切って実施せず、
他の方法を模索するという決断も、ときには必要なのかもしれません。
(おまけ)
ある学年に配属された年度当初の打ち合わせにおいて
「全クラス統一して自主学習ノートを実施しよう」
と提案されたとき、
反対者が私だけだったため民主主義の原理から
私のクラスも実施することになりました。
しかし、別のところに労力をかけたい私は、
こっそり提出してもしなくても特に問題ではないという
ゆる~い空気感にしていくと、
生徒たちも私の考えを察してWINWINの状態を作ることができました。思わぬところで心通じ合う指導となりました。
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