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授業内容をきれいにまとめた黒板についての考察

私が教わった黒板の活用法

20年以上前に行った附属中学校での教育実習のときも、
教員に採用されてから研究授業を行ったときも
黒板の使い方について先輩の先生方から
いろんなアドバイスをいただきました。

その中で、

・黒板を3分割してまとめる。

・50分の授業内容が一目でわかるように板書する。
 ※基本的には消さない。
  演習問題などをするとき黒板を見ればわかるように残しておく。

・色チョークなどをうまく利用し、生徒の視覚を刺激して
    重要なところを意識させる。
 ※青などの見えにくい色は文字を書かずに下線や枠などに活用する

という3つのポイントが印象に残っており、
若い頃は疑うことなく、
黒板をきれいにまとめるためにスキルアップを目指していました。

私自身、字があまり美しいとはいえないので、

どうすれば見やすい文字や数字が書けるのか
チョークの角の使い方を工夫したり、

マス目のない黒板でも真っ直ぐ文字を書くための練習をしたり、

フリーハンドで円などの図形をうまく書けるように練習したり、

毎回の授業で板書計画を練ったり、

など、小さな努力を積み重ねることによって、
次第にどんな授業でもある程度うまく黒板を利用できるようになりました。

しかし、その反面、

・丁寧に黒板をまとめても
 次の授業になると忘れてしまっている生徒がいる。

・詳しく黒板にまとめればまとめるほど授業内容ではなく、
 黒板をきれい写すことだけに集中してしまう生徒がいる。
 ※色ペンを5、6本指に挟みながら懸命に写している生徒もいました。

・聞きながら、書きながら、理解しながらのマルチタスクは難しいため、
 私の説明を聞いた後に写すよう指導すると2倍の時間がかかってしまう。

・演習問題を行うとき、机に向かっていて黒板を見て考える生徒は
 ほとんどいない。

生徒に背を向けて黒板に文字を書く時間がもったいない気がする。

と考えるようになりました。

このような課題を抱えながらも、
黒板の活用について疑問視する方が周囲にいなかったため、
生徒の学力につながると信じて続けていましたが、
あるとき転機が訪れました。

ある年、入学したての中学1年生に例年通り授業を行ったところ、
今までと比較しても

倍以上の時間をかけなければ黒板の内容を写せない生徒が

半数以上いて、
目標としていた授業進度の半分も進まないという状況に出くわしたんです。

そこまで時間を要してしまった原因はわかりませんでしたが、
とにかく黒板を写すのが遅かったため、

(このままでは1年間で教科書の内容をすべて教えることができない

と危機感を抱き、
それまでの黒板の活用法を改善せざるをえない事態となりました。

この出来事がきっかけになり、自分の中の枷が外れたのか、
今まで当たり前だと思っていた黒板の使い方にとらわれず、
生徒の学力向上を目指して、自分の発想をどんどん試すようになりました。

私の黒板活用法の変遷

〇初期 
    従来通りの黒板の使い方

〇中期 
    ノートではなく、用語を穴埋めする授業プリントを準備し、
    黒板の写す内容を厳選して時間を短縮する
    
    ※改善の結果、もちろん時間短縮は成功し、
     さきほどの1年生は無事、すべての内容の授業ができました。


新たな課題の発生

生徒が黒板を写す内容が少なくなったので授業時間に余裕ができましたが、
私が黒板に書く内容をほぼ変えなかったので、
生徒が写し終わっていても、
私がまだ黒板に向かって何かを書いているという空白の時間が生じ、
その時間を無駄にしたくないと感じるようになりました。

そこで次のように改善することになりました。

〇後期 
    授業内容をすべてPowerPointで作り、
    一瞬(1クリック)で授業内容を見られるようにし、
    私が板書する時間をほぼ0にする。

    ※黒板に向かわなくて済むので、
     生徒たちをより観察できるようになりました。

☆最終形態 
    授業内容のメインを完全にPowerPointで行い、
    黒板は授業の補助として活用する。
    (PowerPointでは説明不足だと感じた場合に、黒板で説明する)

    ※黒板は自由帳のように扱い、
     乱雑に一言メモやイラストを書いたり、消したりして
     活用しました。
     50分間、黒板を一切活用しないという場合もありました。

黒板にまとめた内容を写すことをメインにする授業ではなく、
習った知識を活用できるようにする授業にシフトしようと考えた結果、
上記のような黒板活用法となっていきました。

そして、

【黒板をノートなどに記録しなくても頭の中に記憶できればいいじゃない

を私の授業のスローガンとして生徒に浸透させ、
優先順位を記録から記憶に意識転換できるよう試みました。

ただやはり最初のほうは他の授業と勝手が違うので、
丁寧にPowerPointの内容を写そうとする生徒がほとんどでしたが、

「君たち、家に帰って、この授業ノート見るの?」

と聞くと、大半の生徒が

「ほとんど見ない」

と答えたので、

「じゃあ、その写す労力を頭の中に記憶するために使おう」

と伝えたこともありました。

まとめ

私個人の感想ですが、
授業内容をきれいにまとめた黒板でなくても、
全く生徒の学力に影響しなかったと思います。

PowerPointにより板書時間をほぼ0にできたので、
その生まれた時間を演習などの時間に充てることができ、
むしろ学力が向上したと考えています。

研究授業で、そのPowerPointを使ったとき、

「アニメーション機能をうまく活用しているから、
 視覚的にも理解しやすい」

と一定の評価はありましたが、
従来通りの黒板活用法に傾倒している方は

「スライドが1枚1枚流れて消えるから、
 50分間の授業全体の内容を生徒が確認できないところが問題である」

と指摘していました。
しかしながら私のその授業では、
生徒たちはいつも通り混乱せず、無事を終えており、
どこに問題があったのか説明がなかったので
私には全くわかりませんでした。

その場ではこの指摘を
スライドのように受け流しましたが、実際のところはどうなのでしょうか?

生徒の学力に効果があるのであれば、
従来通りに黒板を活用することは否定しません

私が黒板をうまく活用できないだけなのであって、
学力向上のエビデンスがあるのであればむしろ推奨したいところです。

私のこの考察はあくまで個人の経験則であって、
個人の感想の域を出ることはありませんから、
大変もどかしいところですが、
今まで通り、従来通りという慣習に目を向けるいいきっかけとなりました。

ICT機器の活用が注目される現在、
黒板の役割を考える時期がきていると思うので、
どのように変わっていくのか非常に興味深いところです。

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