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授業の【めあて】や【ねらい】は示すべきなのか?

数年前(2022年現在)、市の教育委員会から、
すべての小中学校の教職員に対して

授業の冒頭に【めあて】や【ねらい】を示しなさい

という指示がありました。

今まで教育の方針や方向性の指示はありましたが、
指導方法に対して、ここまで具体的な干渉をしてきたことがなかったため、非常に驚きました。

その根拠を確認すると

その授業の【めあて】や【ねらい】がはっきりすることで、
学ぶ内容に焦点が当てられ学力が向上する

という、たったこれだけのものでした。
別に【めあて】や【ねらい】がはっきりしたら、学力が向上する
というデータやエビデンスを教育委員会が示したわけではありません。

また、
 【めあて】や【ねらい】を示す以外にも、
  学ぶ内容に焦点を当てる指導法があるかもしれない

  冒頭に【めあて】や【ねらい】を示すことで
  集中できない生徒が出てくるかもしれない

という想定が全くなく、その指導法を実施することによって、

  市全体の学力を押し下げてしまう可能性がある

というリスクについても言及がないため、
一律に指導法を強制する理由も曖昧です。

あまりにも稚拙な根拠であったため

「【めあて】を伝えたら学力向上しそうだ」

という一部の人の経験談や感想を根拠に

「いいこと思いつたから、みんなでやろうぜ」

という空気感だけでつくられた程度の方針なのではないかと
勘繰ってしまいました。

だから私は、この方針に対して

・確実なエビデンスがない
・私の授業スタイルに適さない
・全体主義的な方法では、個に応じた柔軟な指導ができない

ということを理由に、退職する2022年3月末まで
授業冒頭で【めあて】や【ねらい】を示すという教育委員会の指示を
断固拒否し、自分の指導法を貫きました。

私が授業の冒頭に【めあて】や【ねらい】を示さない2つの理由

そんなあるとき、私の授業を見て

【めあて】や【ねらい】を示していない

と嬉々として指摘してきた方がいたので、次の2つの理由を説明しました。

初頭効果を有効に活用する

初頭効果とは

最初に示された特性が記憶や印象に残りやすく
後の評価に大きな影響を与えるという心理効果のこと

です。

つまり授業の最初は記憶に残りやすいということなので、
授業の冒頭時間を

【めあて】や【ねらい】を理解させることに時間を割くのではなく、

むしろ、

その授業で
身につけてほしい本質的な内容にあてて記憶に残すべきではないのか

というのが1つ目の理由です。

授業が終わってから、
【めあて】や【ねらい】自体を覚えていても、
何を学んだのかを覚えていなければ本末転倒になってしまいます。

授業の目的は

【めあて】や【ねらい】をはっきりさせることではなく、
その【めあて】や【ねらい】を達成することだから、

印象に残りやすい授業の冒頭時間を
生徒たちにとって有益に作用するようにしなければならないはずです。

そこで、私の授業では【めあて】や【ねらい】を記憶に残すのではなく、
授業冒頭に前時までの復習として、
基本から応用までいろいろな問題に取り組ませ、

・既習知識を整理する
・理解の深度を深める
・基本的な技能を身につける
・思考力を高める

などが初頭効果によって、より記憶に残ることを期待し、
学力向上を目指しました。

初頭効果が得られる貴重な冒頭時間を
【めあて】や【ねらい】を理解させるだけに活用するのはもったいなく、
【めあて】や【ねらい】を示さずとも、
その意図を含んだ問題をこなすことによって、
【めあて】や【ねらい】を達成することは十分可能であると考えました。

全国学力・学習状況調査のクロス集計

もう1つの理由は、全国学力・学習状況調査の結果です。

「調査対象学年の生徒に対して,前年度までに,授業で扱うノートに,
 学習の目標(めあて・ねらい)とまとめを書くように指導しましたか」

という質問に対して、次のような結果になりました。

※この質問項目は平成30年度から削除されました。理由は不明です。

過去3年間からのデータからもわかるように、
ノートに【めあて】や【ねらい】を書いても書かなくても、
正答率に差はありません
つまり、このデータからは

【めあて】や【ねらい】を示すことによる学力向上の効果が読み取れない

ということです。

効果がないのであれば、

・授業の冒頭時間を別の内容にあてる
・【めあて】や【ねらい】の示し方に問題があると考えて、
 工夫や改善をし、修正していく
・この指導法を実施しない

などの対策をするべきであり、何の対策もしなければ
初頭効果が得られる最初の時間が無駄になってしまいます。

私は、
このデータから【めあて】や【ねらい】を示さなくても、
学力に影響がないと考え、
授業の冒頭時間において前述した別の内容を選択していました。

※3年間結果が変わらないというデータから
 何の対策もしていないことが読み取れてしまいます。
 この事実を教職員の方はどう感じているのでしょうか…

まとめ

以上の2つの理由は
私個人の授業スタイルを実施するための理由ですが、
要はどんなアプローチでもいいから

【めあて】や【ねらい】を達成できればいいのであって、

達成できるのであれば、授業の冒頭に

【めあて】や【ねらい】を示そうが、
別の内容を取り組もうが

構わないはずです。

もし、一律に実施するのであれば、

【ねらい】や【めあて】を授業の冒頭で示さない

などの対照群(期せずして私が対照群になってしまいましたが…)を
設定し、学力検査を実施して、
統計的に効果があるかどうかを検証すべきだと思いますが、
そこまで教育委員会は考えていないようでした。

ちなみに、私を指摘した方は、この2つの理由に対して

教育委員会から指示されているから
みんなで取り組むと決まっているから

と反論するだけで、残念ながら

【めあて】や【ねらい】を達成する

という本質についての議論には至りませんでした。
教える側がその指導法を吟味せず、指示されたからという理由で、
無条件に実施している状況のほうが大きな問題なのかもしれません。


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