自然がすぎる長野の暮らし

２回目の長野の春。まだちょっと寒いけど自然界はもう春です。
お店の前のタンポポも咲きました。黄色いタンポポはお日様に向かって一生懸命咲いています。

「お！３つ咲いてるね〜。昨日は１つしか咲いてなかったのに」同僚が写真を見せてくれました。１日しか経っていないのに３つとも同じくらい大きく咲いています。「すごいね〜」そんな一日の始まりでした。

その日は日曜日だったので家族連れが多かったです。お店の前は芝生になっているので兄弟で楽しそうに遊んでいました。すると「タンポポー！」と駆け寄って男の子がタンポポを摘んでいました。

その一連を一部始終見ていた私。すぐに駆け寄ったけど、残されたのは１つのタンポポのみでした。「一人ぼっちになったねぇ」残念なのは私だけで、残されたタンポポは平気そうに太陽を向いていました。

それから数日後。
摘まれた２つの花を追うように、花のつぼみが２つできていました。…すごいぞ生命力！そして、つぼみの存在に気付いた翌日には、もう花は咲いていました。タンポポの生命力凄すぎやろ。

◇◇◇

早朝4時とか５時は空が薄明るくなっています。
私はそんな時間から目覚ましで起きる人間ではありません。目が覚めたのはちゅんちゅんワールドが繰り広げられていたから。

昔NHKか何かでちゅんちゅんワールドという歌が流れていて、鳥が複数でちゅんちゅんしていたらそれを「ちゅんちゅんワールド」と総称しています。鳥の種類は問いませんが、だいたいは小さな鳥が多いです。

そして、ちゅんちゅんワールドは長野の早朝にも起こりました。静かな住宅街にちゅんちゅんは鳴り響きます。しかも遠くから返事も届きます。

「おっはよーーーー」「おっはよーーーー」「いい朝だねーーー」「いい朝だねーーー」そんな感じで、ある一定のリズムを刻んで同じ言葉を繰り返します。全然寝れない。

どこから叫んでるんだろうと窓を開けると、ちゅんちゅんは鳴り止みます。でも遠くから「どうしたのーーーー」みたいな小さな鳴き声は聞こえてきます。
しかし、こちら側のちゅんちゅんは一切物音をたてません。私が窓を開けて聞き耳を立てているのを知っているのです。

窓を開けてもちゅんちゅんの姿は見えません。だから私ももう一度布団に入り寝ようとします。
「おーい、もう大丈夫だよーーー」「よかったねーーー」またちゅんちゅんの鳴き声は続きます。ちゅんは一枚上手です。

気付けばちゅんちゅんの鳴き声は消えていました。きっと人間でゆう朝礼のようなものをしていたのかな。早朝の朝礼はやめてほしいなぁ。

そう思ったものの、ちゅんちゅん達は挨拶など必要な情報を交わしているだけではないか、と気づきました。「あっちに美味しい実があるよ」「山の中は危険だよ」きっとそんな話をしているのでしょう。

一方人間は、なんと不要な言葉を発しているのでしょう。
「眠たいなぁ」「お腹すいたなぁ」そんなこといちいち言わなくてもいいのではないだろうか。黙れ大人なら我慢しろ、ですよね。

しかも悪口とか不要の極みです。不要の極みはうんちと一緒です。口からうんちを発してる人間。汚ないなぁ。
それに比べちゅん達は必要な会話のみです。あぁ私も鳥になりたいなぁ。

◇◇◇

仕事に行くのに普段は電車を使っています。しかしこの時期は気候が良いので自転車で行くこともあります。自転車で約１時間。朝から相当な体力を消耗するので、気が向いた時だけにしています。

道中は住宅街と田んぼです。車の抜け道にもなっているので交通量は多いですが、高い建物はほとんどなく山を一望できる田んぼ道。本当の意味で見晴らしがいい道です。

いつも仕事は17時に終わるので忘れてましたが、田んぼ道には街灯はありません。そしてその日は準備があり19時に仕事が終わりました。辺りは真っ暗。でも自転車を置いて帰るわけにもいかず、ほぼ暗闇の中を走って帰りました。

満月の明かりだけが田んぼ道を照らします。車は遠くを走っていて、車のライトが小さくイルミネーションのように光っています。

とても静かな田んぼ。
用水路に流れる水音と山から吹く風の音だけが聞こえます。寝ている稲を起こさないようにしないとと、不思議と田んぼの生命力を感じます。

真っ直ぐ続く一本道。
月明かりが照らす道を自転車で夢中に漕ぐ私。
暗闇から感じる不思議な自然の生命力。
あぁ、私はこのまま死ぬのかな。知らぬ間に、異世界へ続く道に突入してしまったのかもしれない。
自分の息すら聞こえない不思議な時間でした。

タンポポ、ちゅんちゅんワールド、田んぼの暗闇。
自然って逞しくて、強くて、愛があって、不思議で不気味なものだなぁ。この感覚は、小さい頃見たトトロに感じた「ちょっと怖いけどもっと知りたい」に近い、ゾワッとした感覚でした。
本当の自然は多分もっと怖いのかも。次はトトロのぬいぐるみを持って案内してもらおうと思います。