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掌編集「散ってこそ、花」

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耽美、汚泥、清らかなるもの
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#京都

ガラス戸、歪んで眩暈、それから虚脱(掌編・別離)

ガラス戸、歪んで眩暈、それから虚脱(掌編・別離)

 イノダコーヒーではなく、イノダコーヒ、なのだ。
 伏せられた伝票に印字されたコラムを見て、ぼんやりと思う。
 冬の快晴は白っぽく、目を刺してくる。ガラス戸は厚さが均等ではないのか、光が歪んでいる。視線を動かすと眩暈がした。
 彼がカップに指をかけた。ソーサーが密かな音を立てた。白い磁器の濡れたような艶を見て、この席の贅沢さにちいさな感謝が湧く。光があたらない奥の席も落ち着いて良いのだが、この光量

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