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青がひらく【感想文の日⑲】

こんばんは。折星かおりです。

第19回感想文の日、今夜感想を書かせてくださったのは黒井さんです。

本、写真(この記事のバナーも黒井さんのお写真です!)、ポルノグラフィティ、プロレスなど、大好きなものについて熱く語る記事を書かれている黒井さん。どの記事からも溢れるような思いが伝わってきて、読んでいるとこちらまで嬉しい気持ちになってしまいます。また、小説やエッセイでは凛とした言葉がとても印象的で、すごく「青」が似合う言葉を紡がれる方だなと思いながら読ませていただきました。改めて、ご応募いただきありがとうございます!

それでは、ご紹介いたします。

■断ち難い未練は言葉に頼る

プロフィール欄に書かれている「写真を撮ることが好きでした」という言葉について綴られたエッセイです。黒井さんが最初に写真を撮る面白さを知ったのは、当時カシオの携帯で何気なく撮った写真が、すさまじく綺麗なことに気づいたときだったそう。その頃黒井さんは二次創作小説をアップする携帯サイトを持っていて、掲載する日記に撮影した写真を添え始めるのですが、その写真にぽつぽつとコメントをもらえるようになってきた頃、ある個性的な二次創作小説サイトに出会って……。

まずはご指定いただいたこちらの記事から。スマホで拝読していたので最初はスクロールバーの小ささに驚いたのですが、ぐんぐんとお話に引き込まれました。光と影のコントラストが美しい写真。きりりと引き締まった文章。「綺麗」という言葉では足りないような、清廉な世界観に酔いしれてしまいます。そして中でも魅力的なのが、黒井さんが出会った個性的な二次創作小説サイトの管理人である"その人"の文章についての描写です。

とにかく凄かった。
長編と掌編が分けて置かれていて、先ずはと読んだ掌編にいきなり心を鷲掴みにされた。突飛な状況設定を読み手にスマートに納得させる最初の一文に始まり、キャラクターの雰囲気を壊さずそれでいて洗練された会話が続いた先に待っている最後の一文がとんでもなく瀟洒。
一話読んで気がすむまで惚れ惚れと余韻に浸り、その後立て続けに読んだ他の掌編も、最初に読んだものに匹敵する作品ばかりが並んでいた。
数作拝読したのち、凄いサイトを知ってしまったぞ、という高揚感に打ち震えた。

あぁもう、どんなに素敵な文章なんでしょう……!私も読んでみたくて、うずうずしてしまいます。

短編、長編、それから日記まで。"その人"の書く文章に惚れ込んだ黒井さんは投稿を遡って読み始めます。そしてある日、勇気を出して送ったメールで"その人"とのやり取りが始まるのですが、その展開はまるで小説のよう。

こちらのお話と繋がる『青空から解放された話』とあわせてぜひ、読んでみてください。

■"DON'T CALL ME CRAZY"

「この歌聴いて。歌詞が面白い」。妹さんにそう言われてテレビを見ると流れていた、ポルノグラフィティの『アポロ』。これを最初の出会いにして、黒井さんがポルノグラフィティのおふたりを好きになるまでの過程が、丁寧に綴られています。その思い出はどれもきらりと光っていて、まるでCDショップやライブの光景が目に浮かぶよう。ポルノグラフィティのファンでなくても楽しめる、熱いnoteです。

リリースからはかなり年月が経ってからでしたが、私も『アポロ』でポルノグラフィティを知りました。聴き逃しようのないパワフルな歌詞や歌声、すごく気持ちがいいですよね。

こちらの記事では印象的な歌詞がいくつか引用されているのですが、それがまた、どれも素敵なのです。

「言葉にできないことは無理にしないことにした」

このフレーズを耳にした瞬間の感銘は今でもおぼろげに覚えている。
言葉で表現できる範囲に留まらない、大きかったり曖昧だったりする感情や行為を言葉に押し込める事は止める、という決意を言葉で表現するというスマートさが鮮烈に感じられたんだろうと思う。それも歌詞という、徹底的に削ぎ落とされた簡潔かつ的確な一文で。

「限り無くは無限 夢幻が無限」

文字で読むと「むげんがむげん」だけれど歌で聴くと「ゆめまぼろしがむげん」となるワンフレーズに、音楽番組で歌詞字幕付きで出会った時の心の動き。

黒井さんの心の動きがひしひしと伝わる描写に心をぐっとつかまれます。文章もですが、意表を突くような言葉やこれ以上ないような的確な言葉に「歌」の中で出会ったときの独特な感覚、分かるなぁ、としみじみ感じながら拝読しました。

そして最後にもうひとつ引用される、黒井さんが一番お好きな『真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ』の歌詞。

道なき道で頼るべきは己から聞こえる声

「羅針盤」になるような言葉を、私も探してみたいです。

■青に居た

山を越えなければどこにも行けないような、山と山の間にひっそりと存在していた集落に現れた、青い鉄橋。お母さんが運転する車の助手席で渡る橋はもうすっかり日常だけれど、自分の運転で渡る橋は新しい景色を見せてくれます。数えきれないほどの気持ちが詰まった、爽やかで、それでいて切ないお話です。

今回、ご紹介させていただきたいと早々に決めた記事でした。濃い緑と抜けるような青、そしてそれを引き締めるように濃く映える青。瑞々しい景色の浮かぶ描写に、息をのみました。愛着、憧憬、郷愁、その裏にあったかもしれない戸惑いや諦め。様々な心の動きを経て、ひとりの人物が成長してゆく中でずっと心の中に残る青が、とても美しかったです。

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毎週土曜日の感想文の日、感想を書かせてくださる方を募集しています!(現在、11/21以降の回を受け付けています)

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