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ビジネス書編集者が、社長さんに対してできること。(HIBIKUのこと②)

こんにちは、ビジネス書編集者の米津香保里です。

ビジネス書編集者が持つ「編集者のチカラ」を活かして、全国の社長が悩んでいる「発信」をお手伝いしたい。そのことを通じて、「社長という生き方」を応援したい。

そんな想いから、新サービス「HIBIKU」を立ち上げた、というお話を前回しました。

そのサービスをやろうと思い立ったのは、3年前、とあるビジネスフェアで見た光景がきっかけです。

☆「HIBIKU」サイトはこちら
https://hibiku.jp


ビジネスフェアで、日本の中小企業に驚いた

時は、3年前の2018年9月にさかのぼります。
私たちの会社スターダイバーは、東京国際フォーラムで行われた「よい仕事おこしフェア」というビジネスフェアに出展しました。

「よい仕事おこしフェア」は、全国の信用金庫で組織する「よい仕事おこしネットワーク」が主催する、全国の中小企業のビジネスマッチングフェアです。毎年全国から500社以上が一堂に会します。

私たちは縁あってはじめてこのビジネスフェアにブースを構えたのですが、すぐにこれまで経験したビジネスフェアとは様子が違うことに気づきました。

会場を見渡すと、この手のビジネスフェアでよく見かける大きなポスターやサイネージ、スライドを使ったプレゼンテーションといった仕掛けのないブースがほとんど。言葉を選ばずに言うと、どのブースも質素で地味!

私たちの正面のブースに目をやると、背中の丸まった男性が1人、静止画のように座っています。行きかう人に話しかけるといった様子もありません。
PRらしきものといえば、ブースの壁に貼ってあるポスターくらい。遠目にはいったい何屋さんなのかわかりません。

よく見てみようと思って近づくと、その静止画のような男性の前に置かれた長机には、小さな金具が並んでいました。いったい何に使う金具かな?

私の編集者モードのスイッチが入り、その男性に“取材”してみることにしました。

「こんにちは!こちらでは何を扱っているんですか……?」

すると、よくぞ聞いてくれた!とばかりにその静止画さんは身を乗り出してきました。
聞くと、東北のとある地区の、120社もの金具メーカーを束ねる工業団体のブースなのだそうです。

「ウチではこういうのも、ああいうのも何でも作れるんだよ。技術力ならどこにも負けないよ!」

その男性は、生き生きと自分たちの技術について語ってくれました。
なるほど、よくわかりました。でも、私が質問しなければ、そのことはわからなかったのです。

この発想はなかった!一升瓶みたいなワイン

もう一つ、こんなブースもありました。
中部地方のとあるワイナリー。試飲させてもらうと、なかなか美味しい国産の赤ワインです。
ところが、ボトルのラベルに目をやると、毛筆で「太郎」(注:仮称です。でも本当にこんな感じの純和風な名前です!)。

命名の由来を聞いてみると、案の定というか、それにしても止める人はいなかったの?というか……、そのワイナリーの経営者のお孫さんの名前でした。

たしかにほっこりします。初孫の誕生を心から喜んでいる様子が伝わってきます。
でも……。
「太郎」の二文字が貼られているのは、一升瓶ではなくてワインです!

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私に何ができるのだろう?

「よい仕事おこしフェア」が終わって数日たっても、その会場で見た光景が頭から離れません。

日本には、いい商品やサービスを持っている中小企業がたくさんある。でも発信が足りない、あったとしてもどっかズレている。結果、ちゃんと伝わってない!

私には、それがとても残念なことに思えました。
自分も小さな会社を経営していますから、せっかく良い仕事をしているのに、それがきちんと必要な人に伝わらない状況が、とても悔しく思えたのです。

いま思えば、このときの悔しさが、HIBIKUが生まれたきっかけです。

「本という媒体を通じて『伝えること』を仕事にしている私なら、きっとそういう会社の役に立てることが何かあるはず」、そう勝手に思い込んだ私は、中小企業の発信力を上げるにはどうしたらいいか、考え始めました。
「鍵は社長さんにある」とはなんとなく思うものの、そこから具体的なビジネスモデルを考案することができません。
考えれば考えるほど、具体的に何をすればいいのかわからない……。

社長さんに突撃取材!

悩んだ私は、翌年2019年の「よい仕事おこしフェア」であることを試すことにしました。

<ビジネス書編集者が、社長さんの発信をお手伝いします!>

こう書かれた即席のリーフレットを手に会場を回り、それを配りながら、ブースで社長さんらしき人を見かけては、“突撃取材”してみたのです。

「御社の商品の魅力はお客様に伝わっていますか?」
「社長さん自ら、積極的に発信されていますか?」
「社員にご自分の声は届いていますか?」

社長さん本人に、自社の発信や広報にまつわることを直接聞いて回る作戦です。

すると、意外なほど、どの社長さんとも話しが弾みます。初対面の私に心を開いて、会社の広報や商品のPRに手が回らないことや、もっと発信しなければいけないとわかっているけど、自分は口下手だし…といった悩みなど、さまざまなことを吐露してくださったのです。

多くの社長さんが、自社の発信や広報活動に問題意識を持っている。
社内向けにせよ、社外向けにせよ、もっと発信しなければと思っている社長さんは多い。

そういった様子が浮き彫りになりました。

さらに印象的だったのは、こちらが先方の問題意識にヒットする質問をぶつけられたときは、社長さんもご自分の考えをしっかり答えてくださることでした。どの社長さんのお話にも“深い洞察”があるのです。
ビジネスフェアという非日常空間が、社長さんの心を解放的にしていたという側面はあるでしょう。
でも、私は、
「世の社長さんは、問題意識が噛み合う話し相手をあまり持っていないのではないか? 社長さんの頭の中には、引き出されない貴重な思いや考えが、たくさんくすぶっているのではないか?」
そう思いました。

実際、データからもそのことはうかがえます。

野村総合研究所が令和元年に実施した調査によると、なんと半数近い社長さんが経営に関する相談相手の必要性を感じているものの、そのうちの7割近くが「適切な相談相手とのつながりがない」と答えているのです。

日常的な経営に関する相談相手の必要性
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こうして、フェアの2日間で私は20人ほどの社長さんを“取材”することができました。

この経験を通じて、私は、中小企業がもっと輝くためには、経営者の考えをもっと引き出し、その声を社業の隅々にまで通すのが一番いい。社員にも、取引先にも、株主にも、お客様にも、一般社会にも、とにかく企業活動のすべてに経営者の声を通していくこと。そうすれば、中小企業はもっと輝ける。当然、業績も上がる!

私の仕事は、聞くことで経営者の考えを引き出し、必要な相手に届くように響かせることだ!

1年かけて模索してきたアイデアは、こうして確信に変わりました。


社長さんのお話は、極上の読書に匹敵する

それともう一つ。
このとき予想外だったことがありました。

それは、一人ひとりの社長さんとのセッションがとても楽しい!ということ。

それまでも私は、本づくりを通じて多くの社長さんのお話を伺ってきましたが、ビジネス書の著者を務める社長さんを取材するときは、読者が学びを得られる話が中心になります。
それはそれでもちろん刺激的ですし、私自身多くのことを学ばせてもらったおかげで今があります。

一方、フェアで出会った一般の社長さんたちは、うまくいっている人もいれば、困難に直面して弱っている人もいる。
創業したばかりの人も、承継問題で悩んでいる人も、絶好調の人も、とにかくいろいろな社長さんがいますから、お話の内容もさまざまです。
本の著者としてお会いする社長さんたちよりも、もっとこう、カラフル!
短時間ながらも、想像を超えるお話の数々に、一冊ずつ違う本のページをめくるようなワクワクがありました。

社長さんの話は、面白い!

それも、私にとって大きな発見でした。

こうしてHIBIKUは、1年がかりでやっと方向性が定まったわけですが、実際に事業を立ち上げるまでには、さらにここから長い時間がかかりました。
この数か月後、全世界を襲った“あの危機”に、私の会社も巻き込まれていったのです...涙


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