音喜多駿の武蔵野市住民投票条例へのリアルでない「リアリズム」発言ー勝手な判例解釈を添えて
「東京都武蔵野市で、外国人にも投票権を認める住民投票条例が市議会に上程されるとのことで、にわかに話題が集まっています。」から始まる音喜多氏のブログ。
本人は、「悪意のある国・外国人などいないと信じたいところですが、残念ながらそれは理想論で、私は外交安全保障においてはリアリズムに立ちます」とするが、リアリズムとは遥かに離れ、あまりにも軽薄かつ安直かつ不勉強の極みなので、全部ではないが、指摘していく。
0.そもそも「地方参政権」なのか→違う
音喜多氏のブログの前提が根本的に間違っているのだが、武蔵野市住民投票条例は、所謂「地方参政権」と呼べるものではない。
地方参政権というのは、一般的には、首長や議員の選挙権・被選挙権をさすのであり、法的拘束力もない住民投票は、それにあたらないからである。
なお、一般的にいう地方参政権については、公職選挙法、地方自治法等の改正なくして、外国人参政権は認められない。条例ではどうにもできないのである。地方参政権云々いう国会議員がそんな基礎も知らないのは恥ずかしい。
1.「違憲の疑いが強い」→誤り
まず第一に、外国人参政権は違憲の疑いが強いものです。憲法第15条に参政権は「国民固有の権利」と明記されています。
最高裁判例における「傍論」を根拠に、地方自治においては必ずしも憲法違反ではないという主張に一時期注目が集まっていたようですが、判決の主文では明確に否定されており、外国人参政権の合憲説は少数派・異説と言われています。
根本的に誤っている。
「判決の主文で」示されているのは、憲法上、外国人に参政権の保障が及ぶか、についてである。
たしかに判決では、保障は及ばない、とされた。しかし、「(一定の)外国人の参政権は禁止されていない」としている。
一見するとわかりにくいが、「保障が及ぶこと」と「禁止されること」は全く異なる。その区別がついていないのが音喜多駿議員である。
また、「外国人参政権の合憲説は少数派・異説と言われています」と堂々と書いているが、現在の学説では、国政禁止・地方許容説がもっとも有力とされる。そして、判例も同様の立場をとるとの理解が一般的である(判例百選第6版・第7版)。
したがって、判例においても学説上においても、「違憲の疑いが強い」ということはできず、音喜多氏の記述は「誤り」である。(そもそも本条例は外国人参政権でもないが。)
2.納税の対価は行政サービス?→違う
納税の対価は参政権ではなく行政サービスです。納税を参政権の根拠にすると、納税免除されている日本人から投票権を奪う論理も成立してしまいます。
まず、納税の対価は参政権ではないだろう。だが、行政サービスというのもおかしい。
音喜多氏の論理だと、「税の対価が参政権であれば、納税免除されている日本人から投票権を奪う論理も成立する」というのであれば、「税の対価が行政サービスであれば、納税免除されている日本人から行政サービスを奪う論理も成立する」ことになってしまう。そんなことありえない。
参政権にしろ、行政サービス(社会保障)にしろ、それらは憲法上国民には保障される。憲法論としては、そもそもどちらも納税と直接結び付くものではない。
税の役割は、(公的サービス等の)財源確保、所得の再分配、経済安定化とされる。そして、納税者はいわばその出資者として、「口出し」する権利があるのは当然である。また、住民税を払う外国人が、「住民」として住民自治を原則とする地方自治に参加できるのも、本来当たり前のはずである。
3.外国人が乗っ取る→どこがリアリズム?
「外国人が大挙して押し寄せて、自治体を乗っ取るなんて夢物語だ」
「地方政治に国防や安全保障に関わることなどない」という主張は短絡的です。外国人参政権が離島などの小さな自治体に広がっていけば、かなりの権限を外国人住民が持つことは現実的にありえます。
何の話をしているのかわからないが、「自治体を乗っ取るのは夢物語」でないという根拠がない。
乗っ取りの意味もよくわからないが、例えば、人口約15万人の武蔵野市を「乗っ取る」には、まず同数程度の同じ思想をもつ外国人を要し、かつ、参政権がなければならない。大量の外国人も来ないが、その前に、地方自治法も公選法も変わらない現状では、参政権は認められず、地方自治体乗っ取りなど不可能である。
また、言い方は悪いが、住民投票条例に、海外からわざわざ押し寄せるほどのメリットはない。先に同様の条例をもうけている豊中市や逗子市において、そのような事実があったわけでもない。音喜多氏は、例えば中国で住民投票権があったら移住するのだろうか。考えるだけで、アホらしい。
なお、欧州では、住民投票権にとどまらず、外国人の地方参政権を認めているところもあるが、乗っ取られ、国の安全保障などに支障が出たという例はない。
そして、地方自治が「国防や安全保障に関わることがない」とまではいわないものの、極めて限定的である。地方自治体の一存で回らなくなる国防や安全保障ならば、それはもはやその国防・安全保障=国側に問題があるといわざるを得ない。沖縄の基地問題も、沖縄とのコミュニケーションをはからず、一方的押しけた国側の問題の典型である。なお、その沖縄で、自治体の意思を無視し、国が強硬的に工事等を推し進めているのも、また事実である。
外国人が押し寄せる、乗っ取るというののどこが「リアリズム」なのか。
4.市の告知に問題?→何を知っているの?
これらに加えて今回の武蔵野市のケースでは、外国人参政権が先の市長選挙ではまったく争点・公約になっておらず、市民への告知もずさんだった問題点が繰り返し指摘されています。
長島昭久議員の主張を鵜呑みにして、このようなことをいっているが、市の広報では1つの頁全面を使い、条例の告知をしてある。これ以上何をするのだろうか、かなり無理のある難癖だ。そして、パブリックコメントも無作為の市民アンケートも行っており、その市民アンケートの数は統計学上十分である。
また、それらは市長選前に行われていることから、現市政が続けば当然それらの調査をもとに、実現化されることは明らかである。反対派が争点にするならともかく、現市長がわざわざ争点化する必要性がない。
音喜多氏は、武蔵野市の何を知っているのだろうか。
5.他自治体へ波及→何が問題?
仮に可決ということになれば、他の自治体へ波及していく可能性もある
まず、このような条例に問題がないのは明らかである。そして、豊中市、逗子市においては、同様の条例がある。すでにある豊中、逗子で、何か問題はあったのだろうか。あるいは、起こる予兆があるのか。
住民自治を原則とする地方自治において、様々なバックグラウンドを住民が住民投票に参加することは、望ましいことである。
何が問題なのか。
6.帰化を容易に→それはそうだけど…
様々なバックグラウンドを持つ方が日本国籍を取得し、多様な意見を参政権を通じて届けていくことには当然賛成であり、複雑すぎる帰化手続きを簡素化・合理化していく改革も同時に進めていかなければなりません。
なんだか、問題を帰化の複雑性に求めようとしている。たしかに、日本の帰化要件は厳しい。そして、その要件の緩和は必要であると思う。しかし、在日韓国人・朝鮮人などの特別永住者などの多くは、帰化要件は備えているが、帰化していない。
「様々なバックグラウンド」など簡単な言葉ではすませられない歴史的な背景がある。特別永住者がいかにして生まれ、それにはいかなる問題があるのか、よく勉強して貰いたい。その他の永住者についても同様だ。
おわりに.リアリズム→その前に勉強を
いずれにせよ、外交安全保障に「リアリズム」に望む、というのであれば、こんな軽薄なブログなどかいていないで、住民投票条例が本当に「憲法上問題があるのか」学説書や判例評釈などを読んだり、条例が「外交安全保障にリアルに悪影響を与えるのか」想像したりするだけでもしてもらいたい。
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