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時間のかかる作業を「楽しい!」に変える、日曜日の手打ちパスタ

イタリアのパスタの種類は、650種以上!?

日本で一番有名なパスタといえば、やっぱりスパゲティでしょう。
私が小さい頃は「スパゲティ=パスタ」と思っていたくらい、それしかなかったです。マカロニ(正しくはマッケローニというらしい)がパスタだという認識はなかったなぁ。あれは「サラダ」だった(笑)。

それが今では!
ロングパスタだけでも、スパゲッティ以外のカッペリーニやタリアテッレやリングイネを普通に買えるようになったし、ショートパスタもペンネだけでなく、ファルファッレ(ちょうちょ型)、コンキリエ(貝殻型)、フジッリ(ぐるぐる巻きのらせんみたいなやつ)などなど、たくさんの種類を見かけます。

でも。それでも。
イタリアのパスタの種類の膨大さときたら、本当にあきれかえる(いい意味でw)くらいです。

実際に数えてみた人がいるのかどうかわかりませんが、一説には650種類以上はあるそうで。しかも「パスタの形」以外にソースのバリエーションもとんでもないので、イタリアのパスタ事情、どんだけ深くおもしろいのでしょう!

パスタの発展は「郷土愛」「家族愛」から

イタリアは地域色が非常に豊かです。どこも郷土愛が強く、さらに「マンマの料理最高!リスペクト!」の想いがすごいので(そこが好き♥︎)、郷土料理や家庭料理が何年経ってもぶれることなく、おいしいままに、そしてバリエーション豊かなままに、受け継がれてきたのだと思います。

たとえば日本でも人気の「カルボナーラ」はローマの郷土料理です。卵、グアンチャーレ、ペコリーノ・ロマーノ、黒胡椒を使う!と決まっていて、ローマ人はかたくなにこのレシピを守ってきました。

南イタリアのショートパスタ「オレキエッテ」

南イタリア・プーリア州には、どこのレストランにも「オレキエッテ」がありました。家庭でも、ノンナ(おばあちゃん)やマンマ(お母さん)がオレキエッテを手打ちするのは当たり前の光景だそうです。

Orecchiette(=小さな耳)という名前の通り、こんな形をしています。

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くぼんだ部分にソースがからむし、このぽってりしたやや厚めの形状がモチモチ感につながって、なんともこれがおいしいのです。

プーリアに行く前から、わが家では自己流オレキエッテを家族みんなで作っていました。だいぶ不格好だけど。

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ロングパスタも手打ちを試みたことがありますが、大変なわりに「市販の乾燥パスタで十分!」という印象で、一度作ったきり。でも、オレキエッテときたら、ロングパスタほどコツが要らない上、乾燥パスタとは比較にならないほどモチモチっとおいしかったんです。素人技なのに。

でもやっぱり「ちゃんと教わってみたいなぁ」と思い続けていたし、「本場の味を知りたい!」という想いも強くなっていました。

そんなこんなを経てのプーリア訪問。そこで出会ったマキさんにオレキエッテを教わってきたのです。

イタリアで、料理の達人に教わってみた!

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マキさんは、プーリア州のカロヴィーニョという小さな(でもおいしいものがいっぱいの)街で「Gallina Rossa Farm」というB&Bを営んでいます。

この地出身のご主人と日本で出会い、結婚して、ずっとカロヴィーニョ在住。ご主人のマンマに教わった料理をはじめ、マキさんがつくる伝統的な家庭料理は本当〜にレベルが高く、写真を見ただけでも「どう考えてもおいしいでしょ、これ!」というものばかり。マキさんの料理をまた食べたいというリピーターも後を絶ちません。

そんなマキさんからオレキエッテを教わるなんて、なんたる幸福。

**マキさん直伝「オレキエッテ」のレシピ**

まずはずっと気になっていた材料「セモリナ粉(Semola)」について聞いてみました。パスタに使うには、二度挽きされたリマチナータ(Semola di Grano Duro Rimacinata)が適しているそうです。「リマチナータは粒子が細かいのでこねるのも楽!」なのだそう。

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これがマキさんちで使ってたセモラ。
日本では「CAPUTO社」のリマチナータなら入手できます。

セモリナ粉300gに対して全卵1個を分量の目安にし、塩も少々加えて混ぜ合わせ、ぬるま湯を少しずつ足しながらこねていきます。水分の量は気候や粉の細かさにもよりますが、まずは100ccほどを少しずつ。

片手の手の平に体重をかけながら、作業台にこすりつけるようなイメージで、生地がなめらかになり、耳たぶくらいのかたさになるまで10分ほどしっかりコネコネしたら、ふきんをかけて15分ほど休ませます。

生地を切り分けて1cmくらいの細長い棒状に伸ばし、1.5cmくらいにカット。バターナイフを当てて、軽く押しつけるようにしながら成型します。

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反り返ったオレキエッテを親指でくるんっと裏返し、くっつかないようにしっかり打ち粉をしておきます。

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こすりつけるときの摩擦でシワが寄っているの、わかりますか?
ここにソースがからむのがミソなのですが、初心者はなかなかこんな風にキレイなシワができません(上手なやつはマキさんのだと思いますw)

でも、マキさんが「そうそう、上手〜」と褒めてくれるのでがんばって続けていたら、そのうちコツがつかめてシワも寄るようになってきました。

ずっと同じ作業は飽きるので、半分は「トロフィエ」に!

オレキエッテ作りは楽しい作業ですが、ずっと同じことしてると、なんか飽きてくる(笑)。そしたら、トロフィエという別のパスタを半量つくるのもありです。

じつは、自己流でオレキエッテを作っていたときもそうしていたのですが、本当に混ぜちゃっていいのかなぁ、という不安もちょっとありました。

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その話をマキさんにしたら、「あら〜、私もそうすることありますよ。いいのいいの、混ざったって」と!

こっちがトロフィエ。

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茹でるときも、オレキエッテとトロフィエを一緒にしたって良いそうです。「レストランではやらないけど、家庭料理だから。楽しくつくるのもおいしさの秘訣でしょ」。本当に!

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これがマキさんちのオレキエッテ+トロフィエ。2種のパスタは食感が少しずつ違うので、一緒に食べると楽しいです。

ちなみに、たっぷりかかったチーズはプーリアの特産「cacioricottaカチョリコッタ」というセミハードチーズ。この地方で「パスタにかけるチーズ」といえばこれ。ヤギのチーズですが、クセはありません。ややしっとりしていて、そのまま食べてもほどよい塩気とミルキーな甘さのバランスがよくおいしいのですが、パスタにかけるとさらに・・・!

「パスタにかけるチーズといえば、パルミジャーノ・レッジャーノ」と思い込んでいましたが、ところ変われば、ですね。行ってみないとわからないことってやっぱり多々あります。残念ながら、カチョリコッタはまだまだ日本に入ってきていません。でも、同じくプーリア発祥のフレッシュチーズ「ブッラータ」は日本でも見かけるようになったので、いつかはカチョリコッタも・・・と心待ちにしています。

日曜日は「家族でオレキエッテ」の日

寝かせる時間もほとんど不要だし、慣れてくれば手早くささっと作れちゃうオレキエッテですが、やっぱり生地からこねて、ソースも作って、というのをひとりでやるのはつまらない(できるとしても、つまらない!)。

でも家族総出でコネコネし、成型していくと、その作業はとんでもなく楽しい。「あら、ちょい失敗」「うまくできたね!」「オレキエッテに飽きてきたからちょっとトロフィエ」なんてゆるゆるしゃべりながらパスタを打ち、その合間ににソースをしこむのです。

ソースはちょっと簡単にトマト系か、もしくはじっくり煮込むラグーソースか。

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休日のお料理は連携プレイができるから、ちょっと手の込んだものをつくるのに向いています。

なかなかイタリアに再訪するご時世にはならないけれど、いつかマキさんと再会して、また別のおいしい料理を直伝してもらい、一緒に食卓を囲む日を心待ちにしています。

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