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失われた江戸味噌が現代に復活。しみじみおいしい「さつま芋みそ汁」の話。

煉獄さんの大好物を考察してみたら。

最近のわが家は「鬼滅の刃」煉獄さんのおかげで心を燃やし、新しいレパートリーがふたつ増えました。

ひとつは煉獄さんが「うまい!」を連呼したことで知られる牛鍋辨当。

そしてもうひとつが「さつま芋のみそ汁」。公式ファンブック(小6息子が買ったものを私も熟読)にも書いてある、煉獄さんの好物です。

何がきっかけで新しいレシピが生まれるかわからないものですねぇ。ためしに作ってみただけなのに、本当〜においしくってすっかり定番化しちゃいました。

シンプルゆえに代替のきかない唯一無二のおいしさというか、まるで背中をそっとなでられているかのような優しい味わいというか。もしも私がみそ汁屋さんだったらこの「見た目 地味子ちゃん」のみそ汁こそをイチオシの定番商品にしたいですね。

そもそも、江戸の食文化はどんなだったのか?

鬼滅の刃の時代設定は大正時代。舞台は東京です。時代的にも場所的にも「江戸の食文化」が色濃く残っていたことでしょう。ちなみに煉獄さんは東京府荏原 駒沢村(現:世田谷区桜新町)の出身だそうです。

007江戸東京博物館

こちら「江戸東京博物館」のジオラマです。江戸の活気がイメージできればと思って。うちの息子はこのジオラマ見物だけで1時間は余裕で過ごせます。そのくらい細々と作り込まれていて、江戸っ子たちの話し声が聞こえてくるかのよう。

波乱の戦国時代が終わり、太平の世となった江戸時代。商業も食文化も大きく発展しました。それまで朝夕二回だった食事が一日三食になったのもこの頃。塩、酢、味噌に加えて醤油、砂糖、みりん、かつお節などが普及し、煮物料理も開花。現代の私たちが食べている和食の原型が作られていったようです。

その時代の中心地だったのは言うまでもなく「花のお江戸」ですよね。

綿々と現代に続く調味料や料理がある一方で、「失われてしまったもの」もあります。そのひとつが「江戸味噌」なのです。

「江戸味噌」というものが存在したことさえ、私は知りませんでした。もちろん当時は「江戸味噌」なんて呼び方もしていなかったでしょうが、要は、江戸の町で製造され、毎朝必ずみそ汁を飲んでいたという江戸っ子たちが常食していた「江戸前の味噌」があったのだそうです。

この江戸味噌、大豆とほぼ同量の米麹を使うという贅沢なもので、今のように「寝かせる」のではなく、フレッシュな状態で味わっていたのだとか。そして、贅沢だったゆえなのか、明治時代半ば以降徐々につくられなくなり、戦時下で「製造禁止」とされて以降、完全に姿を消してしまいます。

煉獄さんが食べていたのはおそらく江戸味噌だったはず。だから、厳密に再現するなら江戸味噌を使うことが必須条件なのです。

一度は途絶えた江戸味噌が現代に復活。


江戸っ子も煉獄さんも愛したであろう、フレッシュな味噌。
食べてみたいと思うじゃないですか!

一度は姿を消してしまったその味が、じつは見事、復活を遂げているんです。

その名も「東京江戸味噌」。広尾に本店があり、江戸の町で売られていた味噌を量り売りしてくれます。江戸味噌に関する詳しいことは、ぜひお店のHPを御覧になってみてください。

味噌といえばさまざまな種類があります。仙台味噌、田舎味噌、八丁味噌、白味噌。各家庭に「お気に入りの味噌」があるのではないでしょうか。わが家も、自分でしこんだ味噌と、市販の麦米合わせ味噌を常備していました。

それで十分だと思っていたんです。

江戸味噌を知ってからは、今までの味噌に追加して江戸味噌も常備するようになっています。なぜって、おいしいから。フレッシュな味わいはほかのどの味噌とも違います。

とくに「さつま芋のみそ汁」は江戸味噌じゃないと完成しないと思います。おいもの甘さと江戸味噌の甘さが互いを引き立て合うんです。これぞ調和、という感じ。

江戸味噌を常備するのはもうひとつ理由があります。

「江戸生まれの味噌」ということは、現代の東京名物ですよね。一度失われたその味が再び失われるようなことがあったら残念すぎます。息子たち、孫たちの代になっても普通に江戸味噌が売られていてほしい。しっかり消費しなければ、次世代への継承もあり得ないと思うんです。

具材はさつま芋と大根だけ。そのワケは?

味噌は江戸味噌、メインの具はさつま芋。ほかには?

「さつま芋のみそ汁」で検索するとけっこうな確率で玉ねぎが一緒に入っています。でも私はそれに少なからぬ違和感がありました。というのも、みそ汁名人だった祖母がさつま芋のみそ汁を作るときは「さつま芋だけ、もしくは大根を合わせる」のが定番。みそ汁に玉ねぎを入れるということ自体なかったと思います。

おばあちゃんは山口の人だから江戸文化は知らないはずですが、煉獄さんと同じ大正時代を生きていた人ではあります。

おばあちゃんのみそ汁に玉ねぎが入ったことはなく、母のにも入っていなかったので、私は今でも「みそ汁に玉ねぎ」はそもそもちょっと苦手。さつま芋の優しい甘さに合わせるなら、なおさら「玉ねぎは違う気がする」と思いました。

調べてみると、日本で玉ねぎが一般的に食されるようになったのは明治初期。わりと新しい食材なのです。江戸の人はもちろん食べていません。おばあちゃんが子どもの頃には(そしておそらく煉獄さんも)玉ねぎはまだまだ「珍しい野菜」だったと推測されます。

というわけで、わが家の「さつま芋のみそ汁」、具材はさつまい芋と大根に決定。小ねぎを少し散らすことにしました。

**「江戸味噌のさつま芋みそ汁」レシピ**

薩摩芋味噌汁

材料:
・さつま芋 1本
・大根 10cm分ぐらい(お好みで)
・小ねぎ 適宜
・江戸味噌 大さじ2程度(少な目でおいしくできます!)
・ダシ いつもお使いのものでOK/なくてもOK

※追記:従来、私は何の疑いもなくみそ汁にはダシを入れていました。が、なんと、今回おすすめしている「江戸味噌」の社長より貴重なアドバイスをいただいたのです。
以下、メールでいただいた内容をそのまま掲載させていただきます。とても興味深いので!

いろいろな方にお話を伺いますと、かつて海から離れた山間部では、
海の乾物は高価なため、ほとんど使われることはなかったようで、
代わりに、ダシと具材を兼ねて、地元でとれる、野菜や、キノコなどを沢山入れ、味噌汁を作っていたようです。
実際に試して見ると、確かに、野菜をたっぷり入れた味噌汁は、
野菜からのダシが十分にでており、必ずしもダシを加える必要を感じません。

野菜の中でも特に根菜類は出汁がよく出ますし、ネギも香りが良いので、
味噌をしっかり入れれば、ダシを引かずとも、旨味も十分な、
ちょっと素朴な野菜の味噌汁になります。
(むしろ、煉獄さんの出身地 東京府 荏原郡 駒沢村(現: 世田谷区 桜新町)辺りでは、ダシを引かない、こちらの味噌汁のほうが主流だったと想像されます。)

上記をふまえ、下記「下準備」から「鍋でダシをとり」は省いてもよいと思います。その場合、大根や葱などの具材を少し多めにするとおいしいです!

下準備:

・さつま芋はよく洗って、皮付きのまま厚めにスライス。だいこんは皮を剥き、半分もしくはイチョウ切りに。小ねぎは小口切りにしておく。

1)鍋でダシをとり、まずは大根を入れてしばらく加熱し、6〜7割火が通ったらさつま芋も加えてさらに煮る。
※同時に入れるとさつま芋が煮えすぎてバラバラになるので時間差投入がおすすめ。

2)具が煮えたら江戸味噌を少しずつ加える(沸騰しそうな場合はいったん火を止めて)。味見をして好みの味になればOK。仕上げに小ねぎを散らす。

本当においしいので、ぜひぜひぜひ江戸味噌でつくってみてください!

※試しに、常備している米麦あわせのお味噌(←とっても美味しいです)でさつま芋みそ汁を作ってみました。すると、味噌の主張が強すぎるのと甘みが足りないのとで、「やっぱ、さつま芋みそ汁には江戸味噌しかないなぁ」と実感しました。

天麩羅をした翌日の、冷めたさつまいも天をみそ汁に入れるのも小さい頃から大好物です。これもやっぱり江戸味噌が相性抜群でございますよ。

番外編:「江戸味噌とゴルゴンゾーラのリガトーニ」で準グランプリ

ちなみに、私が江戸味噌を知ったきっかけは、ある料理コンテストに挑戦したことでした。

江戸味噌とゴルゴンゾーラをあわせたパスタを考案し、準グランプリをいただいたのです。めっちゃうれしかったです!

イタリア人にもぜひ食べてみてほしい、「新しいけど伝統的」な方向性を目指しました。これがまた、江戸味噌じゃないと完成しないおいしさでして。

●準グランプリレシピ「江戸味噌とゴルゴンゾーラのリガトーニ」はこちらでご紹介しています↓

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