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育児の実体験でデザインを変える!笑顔を生み出すクリエイティブ


〜Merries(メリーズ)〜

花王のメリーズは、2023年に発売40周年を迎えるタイミングで、デザイン刷新を行いました。
デザインを担当したのは日々仕事と育児の両立に奮闘している現役ママからなる3人のデザイナーチーム。
今回は、リアルな育児体験から生まれたメリーズのデザインと、その舞台裏をご紹介します。


子育ての共感をパッケージデザインに込める

山中:私たちがまず初めに行ったのは、メリーズの40年の歴史を遡り、その価値を再確認することでした。
デザインの大きな転機は2005年です。赤ちゃんのいる家庭にはかわいいベビー用品がたくさんあり、それらはしあわせな空気を醸しだしています。
当時のメリーズのパッケージはその視点をもとに、オムツは「衛生品」としてではなく「ベビー用品」の1つとして捉え、白地にカラフルな水玉に、
ロゴマークは赤ちゃんが安心してスヤスヤ眠る「ゆりかご」や「赤ちゃんの笑った口の形」をモチーフにピンクのハート形で表現されました。

赤ちゃんの笑顔は家族を笑顔にします。メリーズのロゴマークのSmile Smile には「赤ちゃんや赤ちゃんの周りのみんなを笑顔にしたい」という思いが込められています。パッケージにはいつも笑顔の赤ちゃんが使われています。
今回のデザイン刷新でも、メリーズが大切にしてきたsmileに対する思いをふり返りつつ、今の時代の育児者に向けて新たなsmileの表現開発に繋げました。

社会の変化と共に育児の環境も大きく変わっています。これまで赤ちゃんのいる家庭のイメージとして、ママとパパが赤ちゃんを囲んで一緒ににっこり笑いあっている穏やかなシーンを描いていました。私から見るとそれは理想的すぎて、現実とかけ離れているなと常々感じていました。今多くの家庭は共働きで、常に仕事と育児に毎日追われています。もちろん私たちもその1人です。
それでもふとした瞬間に子どもから得られる喜びがありますし、せわしない育児の狭間で子供たちの笑顔に救われることがあります。そんな日常のリアルな実態を、育児をしているメンバーと深掘りすることで、今の時代にあった赤ちゃんの笑顔のあり方も見つけることができました。

これまでのデザインでは、赤ちゃんの写真は全身を入れていました。新パッケージでは赤ちゃんの表情にフォーカス。赤ちゃんがにっこり微笑み目線が合った瞬間や、抱っこしてほしそうに見つめてくるそのふとした瞬間の笑顔の表現を目指しました。その笑顔の価値は、私たち自身が赤ちゃんとの暮らしの中で実感し身近に感じていたものでした。

ユーザーでありつくり手でもあるからこその必然性

育児をしていると、買い物はおむつだけではなく日々の食材などもありますので、どんなに多くの情報があってもパッと見て、サッと買って、急いで帰ることが多く、おむつ売り場でも忙しいと商品の一部しか見ていないことに気づきました。そのような実体験をもとに新パッケージでは、文字情報を一カ所に集約し、視線が一点にフォーカスされるようにしました。さらに「サイズ表示」や「テープタイプ/パンツタイプ」といった識別表示はわかりやすさを重視、情報のプライオリティを常に意識して表現に落とし込みました。

さらに新パッケージでは、長年して踏襲してきた水玉模様からシャボン玉に変更しました。
シャボン玉は育児のシーンではすごく身近にあるものです。シャボン玉ができるようになった子どもに成長を感じたり、公園で誰かの吹いたシャボン玉が風で広がると、子どもたちが駆け寄ってきてみんな笑顔になったり・・・
メンバーそれぞれの育児を振り返りながら「子どもの健やかな成長を願う気持ち」や「未来への期待・希望」を確かめ合い、そのイメージの象徴としてシャボン玉を採用し、軽やかで心地よい空気を感じる世界観を演出しました。

広く使われるものの価値を探す

私自身がメリーズの愛用者で、一人の生活者として、おむつという必需品を週に一度買い続けてきました。そんな日常の育児経験をデザイン開発に役立てることができ、担当として大きなやりがいを感じています。
メリーズを使っていると、おむつの柔らかさ、吸収力といった機能だけではなくはかせやすさ、おむつの模様など、ちょっとした気遣いを感じることがあります。世の中の人はあえて口には出さないけれど、その気遣いを感じているからこそ商品が広く浸透しているのだと思います。
私たちは海外向けのメリーズのパッケージもデザインしています。文化や習慣や異なっても、育児には世界共通の大変さや嬉しさがあって、育児に関わる全ての人が同じように感じているのではないでしょうか。広く使われているものだからこそ、その共通概念を探し出すことにやりがいを感じます。

子どもが小さい時は体調が急に悪くなるなど予想外のことが起こり、対応に追われます。同じような経験をし、分かり合えるチームだからこそ議論も深まり、理解も早くシャープなデザイン開発に繋がっていると感じています。これからもチームで「今の育児者にとって、これが欲しかった」と思えるようなデザインで笑顔を広げていきたいです。