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使った時の感動をデザインに


~Bioré UV AQUA Rich~

みなさんはどんな紫外線対策をしていますか?
いまや真夏だけでなく、一年を通じてUVケアする人も増えたようです。花王のUVケアといえば、「Bioré UVシリーズ」。その中でも「AQUA Rich」シリーズは、水のように軽いつけ心地を特徴として2010年に発売され、これまで中身の改良やアイテム追加とともにデザインのリニューアルもくり返してきました。今回はその中で最新のデザインについて紹介します。


能村:花王は衣料用洗剤から化粧品まで幅広いカテゴリー商品を提供しているので、私たちインハウスデザイナーも、ローテーションをしながら、様々な商品デザインを担当しています。
AQUA Richシリーズの立ち上げ当時は私もデザイナーとして担当していました。その後シリーズのアップデートとともに、デザインもAQUA Richならではのユニークな表現を求めて進化させてきました。

鈴木:私は、これまでUVを中心に化粧品やスキンケア、ヘアケア、ベビー商品のデザインに携わってきました。Bioréには多くの商品がありますが、Bioré UVは2017年から担当しています。


唯一無二の青をさがす

能村:最新のデザインでは、鈴木さんは従来のものから一段と青を前面に押しだした、光感、透明感が特徴的なデザインにしましたよね。

鈴木:初めて中身を試したときに、とにかくその使い心地に驚いた体験が原点でした。つけた感じがこれまでのUVシリーズとあきらかに違う。軽くて、まるでもう一枚の肌ができたような感覚で、なじみもよく、UV特有の重たさを全く感じませんでした。私は花王の社員である前に一人の生活者であると思っています。その立場でみても、気持ち良さが突出していると感じたので、デザインでもその感動が直感的に伝わるようにしたい、と思いました。

能村:それがこの青に表れていますね。青はみずみずしさや気持ち良さを表す色として使われてきましたが、今回の青はかなり違う。

鈴木:実はこの青には名前があって、担当者間では「アクアテック・ブルー」と呼んでいます。「AQUA Rich」シリーズには、初代から「アクア」の名がつけられていて、水のような使い心地の改良を重ねながら、「青」の色もどんどん進化させてきました。
今回の青は、「アクア」の心地よさと、「テック」の機能性をそなえた青という意味で、チームの中ではこれを唯一無二の青と定義して、とことん追求したんです。

そして、その青を大切にしながらデザインを展開しました。青が印象的に見えるように極力他の色を抑え、台紙ではホログラムを大胆に施し、新しさ、登場感や、未来に向かって先へと進んでいる感じを表現しました。また、ホログラムのキラキラ感を用いて、水面や光のような気持ちよさを表わしています。

能村:青いキャップを外したときに出てくる黄色いノズルも面白いですよね。鈴木さんが提案時に目の前でキャップを外して見せもらった時「お!」と思いました。
このワクワク感や遊び心のある演出は愛着をもっていただくための仕掛けになっていますね。


早期からのコラボレーションはインハウスの強み

鈴木:ボトルの形状は、同じ部内のプロダクトデザイナーと一緒に開発しました。水のように軽い中身なので、化粧水のように使ってほしいと考え、ローションタイプは、従来の扁平形状のUVのボトルとは逆方向のデザインを目指してころんとした円柱にしました。一方でミストタイプは、外出中でもすぐに取り出して使えるように、服やバックのポケットにも入れやすい、ポータブル性を考えた、薄い楕円柱形状にしました。そして今までのUVにはない「次世代感」にこだわり抜いた形状にしたくて、キャップの内側の曲面に、水面や波のような感じを出すための工夫をしました。

能村: そして、台紙の「すーっ」「ぴたっ」というコピーは、まさに実感から出た言葉ですよね。

鈴木: そうです。作成センターにはブランドや商品のコミュニケーションを開発する部があり、コピーライターとチームになって開発に取り組んでいます。「そのコピーを入れるなら、こんなデザインはどうかな?」というふうに頻繁にやりとりしながら、お互いの感動体験を次々に提案し合って一つにまとめ上げました。ほかにも、香料開発の研究者の方と一緒に開発するタイミングもありましたし、初めて商品と出会う店頭でも使った時のこの感動が伝わるように早い段階からグラフィックデザイナーと連携をとり販促物を制作しました。
社内では、メンバーがみんなフラットな立場で、それぞれの専門性を活かしながら共通理解を深めてどんどん完成度を上げていきます。そこがインハウスデザインの強いところだなと、としみじみ思います。

能村:確かに、花王は商品に関わる様々な部門が近い距離で議論を行うので、デザイナーも商品の理解を深めることができ、そこからユニークなアイデアが生まれる。そこがインハウスクリエイティブの一番楽しいところでもありますよね。

 鈴木:今回のAQUA Richのデザインは相当細かいところまでやりきったので、自分でもべストのデザインをつくり出せたと思っています。台紙の裏の細かな注意書きにも少し驚きをくわえたり、全てにおいて0.1mmの差にもこだわって精緻化を図りながらクオリティを追求しました。しかも、自分だけじゃなくて周りのみんなも、どこひとつとっても妥協せずにやり抜いた自信作です。


商品デザインは生活者と花王をつなぐ顔

鈴木:花王の商品はどれも生活に入っていくものばかりで、たいてい一家に一つは花王のマークの商品がありますよね。そこがすごくグッときた部分で、デザインは暮らしの助けになるというか…。そんなふうに思っていたことが花王でデザインをしたいと思ったきっかけなんです。

社内で研究職の方の話を伺うと、みなさん本当に、使う方々のために良いものをつくろうという意識が高くていつも驚きや発見がたくさんあり、自分もデザインで貢献したい!と思うんです。花王の商品が、世の中を良くしたり使う人をハッピーにしたりということにつながっている。その道筋を私のデザインも担っている、というのは大きなやりがいですね。
そしてAQUA Rich は日本だけではなく、海外にも展開していますので多くの方にAQUA Richを使っていただきたいなと思っています。

能村: そうですね。環境変化で紫外線が強くなってきていると言われていて、UV対策がますます必要になるという時代の変化を実感しますし、つけ心地の良いことは大きな魅力になります。

そしてその魅力を感性で直接伝えられるのはデザインの力。そう考えると、私たち商品デザイナーの仕事は、生活者の共感と期待感を得られるような商品の「顔」を作ることであり、「商品そのもの」を体現することだと思います。