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黒の鳥と灰色の小鳥|短編小説

 あるところに黒い鳥がいました。太陽の光すら吸い込んでしまうほど真っ黒い、影のような鳥は、死を告げる鳥と恐れられていました。だからいつだって、黒い鳥は一人ぼっちでした。
 ある日、黒い鳥の近くに灰色の小鳥が近寄ってきました。黒い鳥は言います。
「おれに近よるとあぶないよ」
 だけど灰色の小鳥は言いました。
「わたしは兄弟たちとちがって、とてもみにくい色で生まれてきました。ひとりぼっちなのです。どうかおそばにおいていただけませんか」
 たしかに、灰色の小鳥はまるで雑巾のようで、とてもきれいとは言えない姿です。
「兄弟とは?」
「あっちの湖にすんでいます」
 あそこは今、たくさんのアヒルがすんでいます。この小鳥とちがって、茶色い羽がとても愛らしい鳥たちでした。小鳥はなお言います。
「あなたの羽はつやつやで、まるで夜の湖を切り取ったような漆黒です。きれいな羽の方、どうかおそばにおいていただけませんか」
 黒い鳥はびっくりしました。こわいと恐れられたことはあっても、きれいと言われたのは生まれて初めてです。結局黒い鳥は灰色の小鳥を追い返さず、そばにおくことにしました。
 それから、二人は一緒に暮らし始めました。どこにいくにも、どこへ飛んで行っても小鳥はついきます。生まれて初めて、黒い鳥は楽しいと思い始めていました。
 灰色の小鳥は小鳥なので、一緒に暮らすうちにどんどん大きくなっていきます。ちょっとずつ羽が生え変わって、新しい羽は白く、灰色と白のまだらの鳥になってきました。
「ああみにくい。どうせなら、黒い鳥さんのように真っ黒になってくれればうれしいのに」
 そう言って新しい羽をむしろうとするのを黒い鳥が止めます。
「体を傷つけるものじゃない。それに、灰色と白色まじりの姿もおれにはかわいく見えてきたよ」
 黒い鳥はすっかり、小鳥が好きになっていました。

 ある日、黒い鳥が目覚めると、そこにいたのは真っ白な鳥でした。まるで雪か、太陽の光から生まれてきたような、真っ白な鳥でした。
「黒い鳥さん。わたしすっかり白くなってしまいました。今でもわたしはかわいいですか」
「かわいいし、とてもきれいだよ。これならきっと、どこにいってもかわいがってもらえるよ」
「いいえ、黒い鳥さん。わたしをずっとかわいいと言ってくれたのはあなただけです。どうかおそばにおいてください」

 あるところに、白と黒のきれいな鳥たちがいました。
 白黒の鳥たちは、それからもずっと二人で、幸せに暮らしましたとさ。

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即興小説リメイク作品(お題:愛と死の鳥 制限時間:15分)
リメイク前初出 2020/03/21
この作品は(pixiv/小説家になろう/アルファポリス/カクヨム)にも掲載しています。

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