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読書記録『ロバのスーコと旅をする』

こんにちは、神崎翼です。
椿の花がまだまだ咲き誇りつつも、日差しの温かさや早咲きの桜など、春の足音が聞こえてくる時期になりましたね。その足音の軽やかさにつられて、お散歩の時間を延ばしたり、お出かけ先を調べたり、少しずつどこか遠く行きたい気持ちが募っている今日この頃。

というわけで、今日の読書はこちら。

ロバのスーコと旅をする
(2023.7/高田晃太郎著/河出書房新社)

ロバと歩いて旅したい。新聞記者の職を辞し、「私」は旅に出た――。雌ロバ、スーコとの旅路で一躍話題を集めた著者が、朗らかなロバ達と歩いた日々、出会い、別れ、葛藤をしなやかに綴る。

honto商品説明より引用

ロバ達との旅路を綴ったエッセイ本です。2022年2月25日に日本を出発し、イランからトルコ、そしてモロッコまで、あてどもなく歩き続けた著者とロバ達の、放浪の旅の記録を読むことができます。

感想を書くに至って改めて世界地図を見直したのですが、途中船や飛行機を挟んではいるものの、歩くだけでこんな距離を進むことができることに驚きの念を隠せません。今は便利な移動手段が増えて、人間の歩く力というのは相対的に過小化されているようにも思います。ですが元来人間の移動する力というのは歩くことにあり、どんなに小さな一歩でも歩き続ければとんでもない距離を進むことが可能なんだということを改めて思い知らされた気持ちです。

ちなみに著者の高田さん、現在は日本でロバとの放浪の旅を継続中で、X(旧Twitter)からその様子をリアルタイムで知ることができます。今の相棒はクサツネというロバ。著書の中でも幾度が相棒のロバが変わっていて、実はタイトルにあるスーコとの旅路は第三部にあたるモロッコ編のみとなります。私はクサツネについてのツイートから高田さんを知ったので、「スーコいつ出てくるんだ……?」と焦れながら第一部、第二部と読み進めていました。

ペットでもない、家族でもない、旅をともに歩くだけの相方。旅が終わればお別れもある。そもそも、旅には出会いと別れがつきもの。

 ロバを手放したくないという思いは、よく言えば愛着かもしれないが、それは執着であり束縛でもある。私はそういうものから自由でありたいと思っていた。私はロバに執着したくないし、ロバもまた私に執着しているとは思えない。
 ロバとの旅を通じて考えらせられたのは、別れ際のあるべき態度だった。

P.195「第三部⇒モロッコ」より引用

物も、縁も、今はネットを通じて手軽に手に入ります。だからこそ、手放すこと、お別れすること、その大切さをロバ達との旅路から学ばせていただきました。良い本をありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。
また次の記事でお会いしましょう。

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