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読書記録『イギリスのお菓子と暮らし』

海外旅行に行ったことがないので(パスポートも持っていない)、海外の知識はだいたい本やテレビ、雑誌、最近だとYouTubeなんかで仕入れています。最近のお気に入りはYouTubeチャンネルの『すこーんサイト』さん。

イギリスの日常生活を中心に発信されているチャンネルで、特に日常的に食べられているイギリス料理については、どういう見た目で、どういうレシピで作れるのか、といったことまで動画で学ぶことができます。現代イギリスの知識が知りたい日本人には貴重なリアルタイム知識なのでおすすめです。

メシマズ国として一時有名になり、スコーン以外はある種ないがしろにされがちなイギリス食文化ですが、調べてみると美味しそうなものも多い模様。それがわかる本の一つである、本日の読書がこちら。

『イギリスのお菓子と暮らし』
(北野佐久子著/2019.10/二見書房)

イギリスで暮らす11人の女性を訪ねて教えてもらった、「家庭で長年作り続けているお菓子」「日々を楽しむためのキッチンのアイデア」「庭・家作り・道具・おもてなしの工夫」を紹介する一冊。
現地の写真をたっぷり掲載し、自然と密接につながりながら、素朴に心豊かに生きる人々の暮らしがよくわかる内容になっています。
また、イギリスの地方で長年愛されている、6つの伝統的なお菓子の歴史とレシピも掲載。イギリスとひとくちに言っても風土はさまざま。その地方ならではの自然や歴史に生み育てられた、“由緒正しきティータイムの主役たち”も紹介しています。(honto商品説明より引用)

内容は、日本人が絵本や童話を通じて思い描くイギリスのティータイムの世界そのもの。イギリスで心豊かに暮らす女性たちから教わったイギリスのお菓子についての物語・歴史がレシピと共に語られています。ちなみに、私は『ティーケーキ』という言葉をこの本を読んで初めて知りました。

イギリスでティーケーキと呼ばれるものは、大きく3種類に分けられます。1つめは、グリドルという鉄板で焼く、ドライフルーツが入った平べったい焼いたお菓子。2つめはドライフルーツやスパイスが入った、オーブンで焼き上げるパウンドケーキ型のもの。3つめはケーキと言いながら、実際は丸いパン。(P.40より要約・引用)

ケーキ、と言われると、日本人が真っ先に思い描くのはフワフワの生クリームをたっぷりまとい、宝石みたいに美しいイチゴを載せたショートケーキのようなお菓子。それはそれで私も大好きですが、この本の紹介されているイギリスのお菓子は、それぞれの土地や家庭で大切にされてきた、温かみ、自然の滋味、それでいて紅茶とマッチする、イギリスの善き魔女が愛するような素朴で素敵なお菓子です。というか思った以上に言語ギャップがあってびっくりしました。日本のケーキ屋さんは想像以上にメルヘン可愛いお店なのかもしれません。

特に食べてみたいなぁ、と思ったのは、ブラムリーを使ったレシピ。「ブラムリー」というのは火を加えて使う料理用のリンゴのことで、クッキングアップルの王様と呼ばれています。世界中を見ても、イギリスのように料理用のリンゴの栽培が盛んにおこなわれている国はほかにはないとのこと。

今でもブラムリーは、イギリスのリンゴ生産量20万トンのうち45%を占めるほどにイギリスの食生活に深く根付いています。ちなみに2017年には、ブラムリーは7万トン、およそ33万3300個の収穫があり、そのうち約1.2万トンはスーパーマーケットなどで販売され、残りは加工用に使われたとのこと。ジャガイモのように1年を通していつも台所にあるリンゴとして料理に、お菓子にと活躍しています。(P.36より引用)

以前読んだ『シードルの事典』では、イギリスはリンゴのお酒であるサイダーを盛んに生産・消費しているので、『サイダー大国』と称されていました。イギリスの気候がブドウ栽培に向いておらず、リンゴ栽培がメインになったためと書いてありましたが、お酒文化だけでなく、お菓子文化にも大きな影響があったようですね。

火を通すと「口の中でとろけるような」なめらかな味わいになるというブラムリー。生食のリンゴとはまったく異なる味わいのようで、機会があればぜひ食べてみたいです。

といった感じで、イギリスの食文化にお菓子の面から切り込んだ本となっていました。内容はざっと下記の通り。

◎ イギリスの“リンゴの王様”ブラムリーの魅力
◎ 家庭によってレシピが異なるスコーン
◎ ベイクストーンで焼くウェールズの伝統菓子
◎ 庭のハーブを摘めばランチのできあがり
◎ 大切な食器でもてなすことが最高のごちそう
◎ 英国人の料理好きはアガストーブにこだわる
◎ 電子レンジで作る季節の食材の保存食
◎ 物語の世界に迷い込んだような手作りの家
◎ ラベンダーの香りは整えられた家の象徴
◎ アンティークの純銀製ポットの魅力 他

イギリスといえばファンタジーの本場。そして物語の柱の一つは、食べ物の描写です。ファンタジーな児童文学・絵本・小説等々書きたいなあと思っている方、逆に読んでいる物語の解像度を上げるためにイギリスの食文化を知りたいと思っている方等々、一読されてみたらどうでしょうか。

それでは今日はこの辺で。
次の読書記録で会いましょう。

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