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臨床診断学 嘔吐、胸焼け、吐血

嘔気、嘔吐

嘔気:胃の内容物を吐き出したいという切迫した不快感
嘔吐:腹圧上昇により胃内容物を食道、口腔通して排出すること

※必ずしも嘔気先行するとは限らない

主な原因疾患
絞扼性イレウス、急性虫垂炎、急性胆管炎
急性冠症候群、大動脈解離
髄膜炎、クモ膜下出血、脳出血、小脳梗塞
糖尿病ケトアシドーシス、急性副腎不全
妊娠、腎盂腎炎
ジギタリス、急性緑内障

病態
主に四つの経路で嘔吐中枢が刺激されることで生じる

嘔吐中枢:延髄背側、第四脳室底付近の神経核ネットワーク

①化学受容器引金帯(CTZ)
第四脳室尾側端の神経細胞群
血液脳関門はない
血液や脳脊髄液中の催吐性物質により刺激される
また、ドパミン・セロトニンによっても入力受ける

②前庭器
体動、回転、内耳障害などにより刺激される
ヒスタミン、アセチルコリンからも入力受ける
前庭刺激はさらにCTZを刺激する

③末梢性刺激
機械的刺激:消化管過伸展、咽頭反射など
化学的刺激:化学療法時の消化管粘膜障害・・・セロトニンによる

いずれも求心性経路を介して嘔吐中枢に伝わる

④大脳皮質からの入力
精神的・感情的要因による
また頭蓋内圧亢進により嘔吐中枢が直接圧迫されても生じる→中枢性嘔吐
※中枢性嘔吐は嘔気伴わない

薬物治療

ヒスタミンH1受容体拮抗薬
①、②に分布する受容体阻害
体動時の嘔吐に有効

中枢性ドパミンD2受容体拮抗薬
CTZの受容体を阻害し制吐

末梢性ドパミンD2受容体拮抗薬
消化管蠕動を亢進させる
前庭器由来の嘔吐には無効

5-HT受容体拮抗薬
セロトニン受容体を阻害
悪性腫瘍に対する化学療法時の急性嘔吐に著効

ムスカリン受容体拮抗薬
腸蠕動を抑制
腸蠕動亢進による嘔吐に有効

胸焼け

主に胃液の食道逆流による
胃食道逆流症の主症状の一つ

原因
①下部食道括約筋圧の低下
過食、高脂肪食、アルコールなどで生じる

②胃酸分泌過多
ピロリ菌除菌後、カフェイン摂取などで起きる

③食道蠕動低下
加齢、糖尿病などによる

④胃内圧上昇
肥満、亀背、前屈位、臥位など

吐血、下血

消化管出血の排出

吐血
口から吐き出されたもの
喀血は気道由来なのでまた別

新鮮血→食道出血
コーヒー残渣様→胃出血

下血
肛門から排泄されたもの
便とともに排泄されたものは血便

黒色→上部消化管出血
暗赤色、赤褐色→小腸~右大腸
新鮮血→直腸肛門部~S状結腸出血

出血源
トライツ靭帯を境に
口側→上部消化管出血
肛門側→下部消化管出血
なおこれがそのまま吐血と下血に分かれるわけではない

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