法医学　窒息

定義

生体に不可欠な酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が阻害され、肺呼吸に障害が生じた状態

分類

①吸気中の酸素不足：頭に袋をかぶったり
②気道閉塞：異物誤飲など
③頚部圧迫：絞殺など
④呼吸運動障害：中枢神経麻痺など
⑤肺胞ガス交換障害：肺水腫、溺死など

経過と症状

第一期：無症状期
第二期：呼吸困難及び痙攣期
第三期：無呼吸期
第四期：終末呼吸期

診断

粘膜・漿膜下のいっ血
暗赤色流動性血液：酸素乏しく、プラスミンにより凝固阻害されている
臓器うっ血

頚部圧迫

縊頚

頚部に巻かれた索状物に自己の体重が作用して頚部が圧迫
大半が自殺である

定型的縊頚：頚部へ左右対称に索条がかかり前頚部では舌骨と甲状軟骨の間に、側頚部では後上方に向かう
なおかつ体が垂直姿勢で地面から離れている
（一般的首吊り自殺のイメージはおそらくこちら）

総頚動脈・椎骨動脈共に閉塞

所見・・・顔面蒼白、頚部圧迫の索痕
　　　　　舌骨、甲状軟骨骨折

非定型縊頚：定型の2条件のどちらか、またはどちらも満たさない

絞頚

頚部に巻かれた索状物に自己の体重以外の力が作用し頚部圧迫
大半が他殺
頚静脈閉鎖、気管も閉塞される
頸動脈は不完全閉鎖
椎骨動脈は閉鎖されない

所見：索痕
　　　被害者が抵抗した場合、爪による表皮剥奪
　　　顔面うっ血
　　　皮膚や眼瞼結膜の溢血
　　　鼻、耳出血
　　　筋肉内出血
　　　舌骨、甲状軟骨骨折

扼頚

手や腕による頚部圧迫
気管閉鎖
他の閉鎖は絞頚より不完全
椎骨動脈は閉鎖されない
他に比べて迷走神経反射や頸動脈洞反射による心停止が多い

所見：扼痕・・・表皮剥奪や皮膚変色
　　　顔面うっ血
　　　皮膚や眼瞼結膜などの溢血点
　　　鼻・耳出血
　　　筋肉内出血
　　　舌骨、甲状軟骨骨折

頚部圧迫以外の窒息

①気道内異物：食べ物やおもちゃなど

②酸素欠乏：閉鎖空間や袋を被るなど

③胸腹部圧迫：土砂や重量物の下敷きになり呼吸運動ができなくなる
うっ血や溢血点が顕著

④鼻口部閉塞：所見に乏しい