カプリチョーザ大野城サティ店のカルボナーラ
いまはショッピングモールと言えばどこでもイオンかゆめタウンだが、10年前はそうではなかった。
表題の店舗はすでに閉店している。何年前に店じまいしたのかは分からない。私が食べに行っていたのは約10年前で、その後県外に引っ越してしまった。当時私は8歳か9歳で、放課後友達とサッカーをしたりベイブレードをしたり遊戯王カードを集めたり任天堂ゲームキューブをプレイすることが好きな、のんびりした普通の少年だった。
この店でカルボナーラを食べたある夜のことを鮮明に覚えている。なにか特別な出来事があったわけではないが、今でも何故か忘れられない記憶の一つである。それは当時劇場公開されていたディズニーの『モンスターズインク』を母と妹と観に行った日のことだ。
大野城サティにはシネマコンプレックスのワーナー・マイカル・シネマズ大野城が4階に併設されていた。運営がワーナーだったから、上映前のマナーを教えたりする映像にはバックスバニーが出てきていたのを覚えている。そこでモンスターズインクを鑑賞したあと、カプリチョーザで夕食をとった。
その時に食べたカルボナーラは大きな丼みたいな器で運ばれてきた。確か3,4人前を注文し、母と分けて食べたんだったと思う。妹はナポリタンか何かを注文していた。全部食べ切れるの?と聞かれた私は自信を持って食べ切れるといった。当時カルボナーラが大好物だったからだ。チーズの深みのある味わいやブラックペッパーのスパイシーな香りの良さもついこの前理解したばかりな年頃だった。平日だったが店は繫盛していた。
この映画のラストシーンで、サリーとマイクとブーの再会をしっかりと描かなかったことに少年の私は少々不満だった。母はそうは思っておらず、カルボナーラを食べながらラストシーンについて意見を交わした。今では母の気持ちがわかる。続きのシーンを描くのは蛇足でしかない。
今もこの施設はイオン大野城という名前で営業しているが、カプリチョーザはないし、映画館はイオンシネマになっているためバックスバニーもトゥイーティーも上映前の映像には出てこないだろう。この日のことは私のなかでは幸せな思い出の一つである。
私がこれから子供をもうけたら、その子を連れて家族で映画館で映画を観て、最寄のレストランに行き、映画の感想を話し合ったりしたいと思う。
その日のことがその子にとっての良い思い出になることを願う。
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