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医者がなぜMBAを受講するか。

自分が歳をとった時に過ごしたい地域はどんな場所でしょうか?
いろいろな要素があると思いますが、僕は職業柄から、「病気になっても安心して過ごせる」ということがあります。そのためにMBAがあった方がいいと判断しました。

医者が経営というと「金儲けか?開業でもするのか?」などと言われることがありますが、そうではありません。

もう聞き飽きるくらい高齢化という言葉を聞いていると思いますが、高齢化するということは、多くの人が介護が必要になり、いずれは最期を迎えるということです。

しかし、医療の現場では「高齢者の治療」というコンテキストで、物事が話されることは非常に多いのに、介護が必要になるとか、最期を迎える点についての話は相対的に少ないです。これは「病気を治すために医者になった」と話す医師が多いことからもわかりますが、治らないということにどこか追い目を感じている部分もあるのだと思います。ですが、生きるか死ぬかでいえば医師の勝率は0%です。当たり前ですが、人はいつか必ず死ぬからです。

そして、一般に高齢者は病気をたくさん抱え、介護が必要になるが、これらには非常に労力がかかります。多職種が関わり、介入が必要なことも増えていきます。

一方でそれらを提供する若い世代の人口は減り続けており、以下のレポートのように労働者が不足し、社会インフラの維持が困難になるかもしれません。

このレポートでは2030年に341万人余、2040年に1100万人余の労働供給が不足すると予測されています。

これは医療にももちろん影響のあることで、もっと効率よくなんて生半可なことではなく、医療の運営をなんとかしないといつか破綻してしまうと思いました。これでは病気になっても安心して過ごせません。病気の勉強だけしていても、この問題を解決するのは難しそうに感じていました。

そんな漠然とした不安を抱えていた時に緩和ケアの勉強をするために留学する機会に恵まれました。その緩和ケア科では指導医が経営大学院を卒業され、部門の運営にそのスキルを存分に発揮されていることを目の当たりにしました。私が勤務していた際は全国から集まった約20名の医師が在籍していました。これはおそらく日本最大の緩和ケア部門ではないでしょうか。緩和ケア医が不足しているという日本でこれほど充実したスタッフ数をもつ施設は多くないでしょう。

経営にはヒト、モノ、カネが関わりますが、どれかが欠けてもうまく機能しないと言います。病院ではモノ(医学)はたくさん学ぶが、他の2つについて学ぶ機会は少ないです。ヒトもカネも少なくなっている日本ではこの2つをうまく活用できるようになる必要があると思いました。ヒトが働きやすいこと、黒字であることは持続可能な経営・運営には必要なことだと思うのです。留学先の取り組みをモデルケースに自分でもできることをしていきたいと思っています。

まだ、手が届く範囲は大したことはないかもしれないですが、せめて自分の手が届く範囲だけでも少しずつ良いものにしていきたいと思っています。

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