発達障害と二つの解決法について

このnoteでは発達障害当事者の目線から語る発達障害への(当事者からの)対処法と、それを通した「問題解決へのアプローチ」について語ろうと思う。

科学的根拠があるわけではないが、論理としては破綻していない、基本的なものの考えだと思っているので、少しばかりお付き合いいただきたい。


まず、「発達障害とは何か?」について前提を共有しておこう。

発達障害とは、「なんか知らんけど、忘れ物が多かったり、集中力が散漫で困っている」状態のことである、とここでは定義させてもらう。

待て待て、発達障害は脳の障害だ、と思った方も多いと思う。実際発達障害を抱える人間の中には、脳の一部の機能が弱い人もいるらしい。

しかし、発達障害と脳の因果関係は未だ解明されておらず不透明なことである。それ以上に、当事者として言わせてもらえば、脳のつくりがおかしいことが問題なのではなく、「できないこと」があることが問題なのだ。というわけで、「発達障害」という言葉はここではこういった使い方をさせてもらう。


発達障害を抱えることは、日常生活にさまざまな問題をもたらす。それに対する対処法は、大きく分けて二つあると私は考えている。「治す方法」と「治さない方法」だ。

前者は発達障害を前述したように脳機能の障害ととらえ、投薬などによる治療によって解決しようとするアプローチだ。それに対して後者は、発達障害はなくならないものと諦めて、それに対する付き合い方を学習していくアプローチだ。

「治す方法」でやろうとしていることは、発達障害を消すことだ。かつて人類を脅かした結核が治療可能な病に変わったように、発達障害も「消し去ることができるもの」に変えようとしているのだ。

しかしこの方法はいくつかデメリットがある。

結核のように治療可能な病にする、と書いたが、発達障害は脳の障害であるため、永続的な治療が必要となる。発達障害を病と認識した時点で、発達障害者は不治の病を背負うことになる。薬が一生手放せなくなる上、定期的な通院が必要となる。

また、2020年8月現在においては、発達障害は投薬でマシになることはあっても、完治するものではない。完治しない、永続的な病を持つことを告げられた時に、人は自信を失うものであると私は思う。

大人がそういったことを告げられるならまだいい。私は小学二年生の時に発達障害と告げられて、自分が他者より劣ると医者に保証されてしまった劣等感や、障害に苦しむことのない健常者への敵意を味わった。こういった幼少期の経験がその後の人間性に影響を与えることは想像に難くない。

結核のように綺麗に取り除けるものではない以上、発達障害を「治す」方向でアプローチしていくのは、当事者に多少の苦痛が伴うものである。


では、「治さない」アプローチとはどういうものなのか。例えば、家の鍵を家の中でよく失くしてしまう人がいたとする。そういった人が、家の壁に鍵かけを設置して、いつでも目に入る場所に置いておく。こういった、行動や習慣の改善により発達障害を軽減していこう。という試みである。

こういった試みは健常者の小学生相手にも一般的に行われていると思われる。このアプローチの長所は、医療行為を伴わないため、発達障害と診断されていない人間にも行うことができることだ。

脳の障害を伴う発達障害者でも、そうではないただ忘れっぽい人も、「鍵かけ」を用意しておく、という対処法は有効であるわけで、こうしたやり方で日常生活を円滑に送れるのならば、自身が「障害者である」といった劣等感に苦しむ必要もないのだ。

実際発達障害は投薬だけで完治できるものではない以上、きちんと話を聞いてくれる精神科医ならば、こういった方向でのアプローチも勧めてくれるとは思う。発達障害者は「治す」方法と「治さない」方法の両方、あるいは後者のみを使って日常生活を送っている、というのが現状だと思う。


障害の対応方法には二種類ある、とお話したが、この考え方は発達障害以外の障害にもある程度応用ができると考えている。

例えば、新型コロナウイルスに対する医療従事者への差別を問題として考えたとき、コロナウイルスへのワクチンを開発してコロナウイルスの脅威を下げる、といった解決法は「治す方法」に該当するし、SNSなどで医療従事者への感謝を述べたりするのは「治さない方法」に当たる。

一方で、「治す方法」が使えない場面も存在する。人種差別や女性差別、LGBTに対する差別は、人種や性別、性的嗜好が変えられないものである以上、それを根絶するといったやり方は使えない。

しかし、問題に対する解決法が「治す方法」なのか「治さない方法」なのか、また「治す方法」が本当に現実的なのか、については検討する価値のあることだと考えている。この二分法は問題解決方法の基礎であり、この考え方が浸透してくれれば、Twitterでの無駄な議論も改善する……かもなぁと思っている。

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