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田中英義プロがNOTEで書いていたことは本当だったと実感した2ヶ月半ぶりのサーフィン

5月25日に千葉県も緊急事態宣言が解除され、そのきっかけを待っておよそ2ヶ月半ぶりにサーフィンしました。

奥さんの病気をきっかけに昨年来タバコをやめて、ご飯がまたそれまで以上に美味しくなってしまった影響で、昭和のアイドル並みにガリガリだった体重体型が、知らぬ間に三段腹の見事な中年太りにトランスフォーム完了。

こりゃマズイってことで、愛犬リンダの散歩をリンダに負けないスピードで最後まで走り切る、という無謀なダイエットを行った結果、三日で膝がぶっ壊れるという事態となったのが、ちょうど2ヶ月半前なのです。

なので、このコロナ騒動の最中テレビなどで湘南鵠沼海岸に密集するサーファーたちの映像が流され県知事さえも海にくるな発言をするという珍事も、自粛警察VS呑気なサーファーとの応酬も、僕の自粛には実を言うとまったく関係がないのです。

最初の1ヶ月間は膝が痛かったからで、そこからの半月はピザ窯作りに熱中してあまりサーフィンのことが気にならなかったし、残りの1ヶ月はただただ海辺に流れるネガティブな雰囲気が嫌で、サーフィンする上で一番重要な“気持ちよさ”を失わせるには充分なほどの濃度を持って漂っていたから、なんとなくやらなかっただけなのです。

で、話は戻るのですが、2ヶ月半ぶりのサーフィンは、やっぱり最高でした。

うちの奥さんも2ヶ月ぶりのサーフィンで、彼女の場合はとても根が真面目なので、プロサーファー達やショップのオーナーさん達が自粛解除をしない限りサーフィンしないと、頑なに我慢を続けていて、馴染みのプロサーファーから、

「ここで我慢してまじめに自粛していたサーファーには、絶対に自粛が明けたらいい波がやってくるよ!」

と言われたことを励みにして頑張っていただけに、この日は久しぶりに海の中でいつもラインナップにいるメンバーと再会することができて本当に楽しそうでした。

2ヶ月半ぶりのサーフィンで何が一番変わったかというとパドル力です。

いつもなら、毎日とは言わないまでもだいたい週に2〜3度は海に入っているので、狙った波は置いていかれることなく、ちゃんといいタイミングで、いいポジションから乗れるはずなのに、2ヶ月半サーフィンしていないといつものタイミングでテイクオフ出来ないのです。スピードもパワーもなくなっていて、立ちあがる動作も1テンポ遅れてしまう。

実はサーフィンの場合、このテイクオフがどんな高度なテクニックよりも重要で、思いっきり大雑把に解説してしまうと、テイクオフさえ誰よりも速く完璧にできるのであれば、どんな波にだって乗れるし、後のテクニックは後々なんとでもなったりするのです。

パドル力の低下はやはり奥さんも同じだったようで、意気込んでショートボードでパドルアウトしたはいいものの、パドルがなかなか進まず、いいタイミングでテイクオフできないでいました。

何本か波に乗っていたけれど、どうにもこうにも本人的には納得がいっていないようで、海の中で僕の使っていたミッドレングスと取り替えろと迫ってきたのです。

なんてったって2ヶ月半ぶりのサーフィンだったので、僕は少しでも楽に波に乗ろうと、奥さんのボードであるこのミッドレングスを持ち出していました。

このボードは奥さんのためにロックダンスの添田トモヒロが作ってくれたボードで、実は僕も乗れるように密かにチューニングしてあるボードです。

僕にとっても奥さんにとっても、マジックボードと呼べるボードですが、所有権はあくまでも奥さんです。

なので、奥さんには充分強制的にボードを取り替えろと迫る権利があるのですが、如何せん奥さんのショートボードは体重的にも僕には乗れません。久しぶりの割には調子よく波に乗れていただけに、できれば取り替えたくはないけれど、仕方ありません。

沖でリーシュコード(流れどめ)を外してボードを交換して、またリーシュコードを足首にはめ直す。

そんなことを普段から友人や馴染みのプロたちとやっているので、僕は慣れたもんでその動作もその場でだいたい10秒くらいでできますが、奥さんはその間波を喰らうのを嫌がって、誰よりも一番沖までパドルアウトして、波がブレイクしない安全圏でゆっくりとボードに跨ってしっかりと装着していたのでした。

そこはロングボーダーよりも沖のポジションで、間違いなく波のブレイクする場所ではないはずでした。

ところが……

そんな奥さんの目の前に、その日一番のビッグセットがやってきたのです。いわゆるおばけセットってやつです。

今まで一回もそんなセットは入ってこなかったので、僕も含めて他のサーファーたちのポジションからでは間に合いません。

うねりの大きさ、形、全てにおいて今日一番の波です。

誰からともなく、みんなが同じタイミングで

「GOGO!」と叫びました。

こんな完璧なユニゾンはそうはないだろうというくらい一斉にです。

奥さんは一瞬困惑した「え?!」な顔をしたかと思えば、すぐに意を決したようにキリッとした表情に変わり、パドルを開始しました。

ちょっとスパルタかもしれませんが、誰かからGOと言われたらパーリングしてもいいから行けと教えてあります。

ローカルスポットで波に乗るローテーションの中に入るには、どんな波であろうとこういうチャンスをもらった時に、芋引くことなく絶対に行くんだという意思を示すことがとっても重要なのです。メイクするかパーリングするかではなく、ビビるかビビらないかです。

ここでビビって引いてしまうと、二度と自分に波に乗る順番は回ってきません。

この教えが効いてかどうかは分かりませんが、奥さんはビビることなく波を捉えて、完璧なポジションから完璧なタイミングでドロップをメイクし、そのまま綺麗な波のフェイスをインサイドまできっちりとクルージングして行きました。

ローカルの重鎮から若手プロサーファーの卵達まで、やんややんやの大喝采です。中には旦那よりも上手いんじゃないかという人もいました。みんなから褒められて奥さんも嬉し恥ずかし状態です。僕もまるで自分が褒められているみたいで誇らしい気持ちでした。

ラインナップを包んでいたのは、とても幸せでポジティブなバイブレーションでした。

「ここで我慢してまじめに自粛していたサーファーには、絶対に自粛が明けたらいい波がやってくるよ!」

田中英義プロがnoteで言っていたこの言葉は、やっぱり本当でした。

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