『恋する惑星』(原題『重慶森林』)は、1994年の香港映画。
先日、同じく香港映画の『ルージュ』(原題『胭脂扣』)についての記事を投稿した。
『ルージュ』は「隠れた名作」として紹介したが、『恋する惑星』の方は、香港でも日本でも、公開当初から大ヒットした話題作だ。
映画は、前半と後半に分かれ、2つの別々の物語のオムニバスだ。
前半の物語の舞台は、香港九龍地区の繁華街、尖沙咀(チムサーチョイ)にある雑居ビル「重慶大厦 Chungking Mansion」。
後半は、香港島蘭桂坊(ランカイフォン)にあるファストフード店「ミッドナイト・エクスプレス Midnight Expess」。
2組の男女の出会いと恋の行方をスタイリッシュに描いた異色の映画だ。
まずは、予告編を見てみよう。
キャストは、
林青霞(ブリジット・リン)
梁朝偉(トニー・レオン)
王菲(フェイ・ウォン)
金城武(かねしろたけし)
台湾、香港、中国、日本、と出身がバラバラの豪華メンバーが揃った。
前半は、失恋した刑事とドラッグディーラーの女の一夜限りの出会いと別れの物語。
後半は、恋人と別れたばかりの警官とファストフード店で働く女性の物語。
さて、この映画のラストシーンを見てみよう。
633 に恋をしたフェイが、1年後、CA(キャビンアテンダント)になって彼と再会するシーンだ。
↑↑↑ この動画の1分40秒からのセリフを切り取ってみよう。
633 が開店準備をしていると、CA 姿のフェイが現れる。
633は、1年前、フェイが紙ナプキンに書いた搭乗券を持ってくる。
フェイが紙ナプキンに搭乗券を書き始めると、王菲が歌う主題歌「夢中人」が流れ、エンドロールになる。
『恋する惑星』は、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督の名を一躍世界に
知らしめた。
映画は、2組の男女の、どこにでもありそうな話。
ストーリーはごく単純だ。
魅力的なのは、4人の名優の絶妙な演技、至極自然で洒落たセリフ、そして目まぐるしい独特なカメラワークだ。
とても凝った作りで、心憎いばかりの細かい演出が随所に見られる。
美貌で名高い林青霞は、サングラスのまま一度も顔を見せない。
梁朝偉の扮する警官は、香港警察の認識番号 633 で呼ばれるだけで、一度も
名前が出てこない。
そんなところもまたスタイリッシュで好きだ。
『恋する惑星』は、映画全篇に90年代香港の体臭がむんむんと漂う。
映画には、いわゆる人気観光地のロケが一切ない。
グルメやショッピングでは見えてこないリアルな生の香港、まだ活気に溢れていた頃のカオスな香港が舞台になっている。
香港好きにはたまらない映画だ。
香港が変容してしまった今、香港が香港であった時代が恋しい。
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