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なめちゃダメ!          『貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)』

*今回の記事には炎症の激しい皮膚病の写真が掲載されています
*ステロイド軟膏の使用を否定するものではありません
*ステロイド軟膏は適切に使用すれば皮膚病にとても有効な薬です


①貨幣状湿疹ってなに?

貨幣状湿疹ってなに?
なかなか聞きなれない皮膚病ですよね
もう名前の通りの皮膚病なんです

・1円玉~500円玉ぐらいのま~るい皮膚炎
・とにかく痒い
・ジュクジュク滲出液がでることも
(補足)
・冬に多い ・下肢に多い
・高齢者に多いが全年代に生じる

↓以下写真を参考にこんな感じです

腕の貨幣状湿疹
首の貨幣状湿疹

お金(貨幣)のような形ですよね
これだけ見ると
「たいしたことない皮膚病じゃん」
「病院行ってステロイド塗れば治るでしょ」
と思われるかもしれません
おっしゃる通りにステロイドを塗って治れば OK 問題ありません

問題は
なかなか治らず掻き壊してしまう場合
思いもよらぬ厄介な皮膚病になってしまうんです(^_^;)

②貨幣状湿疹が治らず掻き壊すと…

見ていただくのが早いのですが
以下が貨幣状湿疹を治せずその貨幣状湿疹を掻き壊し悪化した状態です

まったく「貨幣」の形ではありませんよね(所々貨幣っぽい場所もあります)
これは貨幣状湿疹の放置(ステロイド等でしっかり治せない)により引き起こされる貨幣状湿疹が悪化した皮膚病なんです

③自家感作性皮膚炎
(じかかんさせいひふえん)とは

貨幣状湿疹から引き起こされる皮膚病とは?

貨幣状湿疹をそのうち治るだろうと放置する

2週間から数週間経過

上の写真の様に「左右対称に」(←ここ特長)
痒みの激しい湿疹が多発

範囲が広くステロイド使用も追いつかずさらに広がる

この状況が『自家感作性皮膚炎』です!

 

これは
貨幣状湿疹部位をかき壊す

かき壊された皮膚に生じる
変性タンパク(*1)や細菌(*2)が血液にのって体をめぐる

身体の各部位で(*1)(*2)の影響により炎症がおこる

痒いので掻き壊す

(*1)(*2)が体をめぐり各所で炎症

広範囲のためステロイド軟膏の使用が追いつかない

最初の小さな貨幣状湿疹をそのうち治ると甘く見ると  (なめちゃうと(-_-;))
とんでもなく広範囲に広がる自家感作性皮膚炎になることがあるんです
(これが実はけっこう多い)

④貨幣状湿疹・自家感作性皮膚炎の症例

*多くは冬場に下肢 (特に両膝下) に出ることが多い
下肢に貨幣状湿疹が出たら要注意です

下肢に出た貨幣状湿疹

自家感作性皮膚炎は左右対称にでるのが特徴です
炎症はなんとかコントロールできますが
症状が酷い場合は色素沈着の改善に時間がかかります

非常に痒みが強く・左右対称に広がります


炎症がおさまった後の色素がとれにくい場合も


⑤じゃあどうする

・とにかく『原発疹(げんぱつしん)』を治す

□ 貨幣状湿疹の段階ではでた湿疹をとにかく治す(傷を塞ぐ)
□ 自家感作性皮膚炎になったとしても広範囲の湿疹に対応しながら
 一番初めに出た貨幣状湿疹を治すことを重視する

・原発疹や滲出液のひどい部位は
ステロイド軟膏+亜鉛華軟膏の重層療法

□ 原発疹や滲出液の酷い部位にはステロイド軟膏使用後に
上から亜鉛華軟膏を重ねガーゼでおさえて包帯をします(テープではなく包 
帯やネット包帯 テープかぶれを防ぐため)
□ またはステロイド軟膏使用後に
亜鉛華軟膏がすでに塗布してあるガーゼでおさえる

(注意)
□ この方法は患部でのステロイド軟膏吸収量が多くなるため短期2~3日使用したらステロイドは使用せず2~3日は保湿剤でしのぎまた重層療法を2~3日
□ 必ず医療従事者の指示を仰ぐ

・漢方薬と上記「重層療法」の併用が超効果的

私の仕事柄これぜったい触れないとなところです(^^)

実際にはステロイド軟膏の副作用も考え重層療法ばかり多用できません
重層療法で傷を閉じ炎症を抑え痒みが軽減したら
その状況を漢方薬の内服でいかに抑え
重層療法の期間を短くするかorやめるかが重要です
(*漢方薬を使うのと使わないのとでは改善の速さがまったくちがいます)

⑥実際の改善例(漢方薬+重層療法)

貨幣状湿疹があまり広がりがない場合は
漢方薬+重層療法+スキンケアがかなり奏功します

【軽度の貨幣状湿疹】

以下のお客様は
・皮膚科で半年以上ステロイド軟膏を使用
マイザー軟膏(非常に強い)を毎日ただ塗るだけを半年)
・初めは肘近くの丸い湿疹だけだった
・3~4か月前から手にも症状が出る
・どんどん症状が酷くなり手の痒みと痛みで眠れない

そこでただステロイド軟膏を塗るのではなく
「漢方薬+重層療法」をしていただきました

「漢方薬+重層療法」前 初来店時
「漢方薬+重層療法」実施後

いかがでしょうか?
おさらいですが原発疹を治すのが最優先!
(今回は原発疹と手の酷い部分に重層療法)
使用したステロイド軟膏は同じマイザー軟膏です
亜鉛華軟膏による重層療法をやるだけで同じ軟膏でもここまで違います

後は漢方薬+スキンケアで OK !
あやしい悪化の兆候が見られたら一時的に「漢方薬+重層療法」です


【症状が複雑な貨幣状湿疹(自家感作性皮膚炎)】

以下のお客様は
・だいぶ前に皮膚科を受診
・その後はステロイドを塗ったり自己判断で痒み止めをぬったり
・ほぼ放置してしまって以下写真の状態
・原発疹がどこかはっきりしない

この場合は原発疹がはっきりしませんので
・症状が酷い場所・滲出液が酷い場所全体に重層療法を行います
これだけ広がると1回の重層療法では改善しません
①ステロイド軟膏+亜鉛華軟膏の重層療法を3日間
②その後保湿クリームだけで4日間(ステロイド軟膏+亜鉛華軟膏は休む)
③またステロイド軟膏+亜鉛華軟膏の重層療法を症状により1~3日間
①②③を3ターンほど実施していただきます
もちろん漢方薬も併用

貨幣状湿疹は初めは小さいのですが放置すると500円硬貨より大きくなります
貨幣状湿疹は初めは小さいのですが放置すると500円硬貨より大きくなります

炎症症状は早いうちに改善しますが
これだけの炎症があると
炎症がひいたあとの色素沈着改善に時間がかかります

いかがでしょうか
少しでも参考になればいいのですが
貨幣状湿疹はこれからの寒い季節に多くなります
最初の対応が大事!
改善ないのに「そのうち治る」で放置は絶対ダメですからね

*重層療法は自己判断ではなく必ず医療関係者に相談
*自家感作性皮膚炎は貨幣状湿疹だけでなく
 ・アトピー ・虫刺され ・接触性皮膚炎 ・水虫
 等を放置することでも起こることがあります
*医療機関に通っているのに広がり出したらセカンドオピニオンも検討
とにかく中途半端に放置しない

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