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出会い目的でネットビジネスの勧誘に乗ってみた。

「毎日スマホを1時間触るだけで稼げます!!」

「副業でSNSやブログで収入を得ることに興味ありますか??」


もしあなたがSNSを利用しているのならこんなダイレクトメッセージが来たことが一度はあると思います。

私はこの文章を見る度に「なぜこうも一辺倒な勧誘しかできないんだ。。。」と呆れると同時にあの時を思い出します。

そう。。。

まだ「大人になる」という言葉の意味を履き違えていた、あの青い春を・・・


大学四年生。4月。

私は就職活動をしていました。

とは言っても、周りの子に比べたら何倍も意識が低く

「どうせお笑いやるからな・・・」って程度にしか将来のことを考えていませんでした。

もちろんそんな意識では厳しい就職活動を乗り切ることはできません。

大して行きたくもない大手にとりあえずエントリーシートを送っては、不合格通知を受け取る日々。

なんの努力もしてないのに、自分を否定されたような気分だけは一丁前に感じていました。

そんな中、例によって私のツイッターにこんなメッセージが届いたのです。

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(実際のメッセージ)


またか・・・

またこんな勧誘DMが来た。

なんだ?こーゆー人達って「胡散臭い」を司る神経死んでるのか??

本気でこのメッセージを鵜呑みにして話に乗ってくれると思ってるのか??

そんな思考力の奴らが稼げる世の中なのか?!

それなりの高校から決して悪くない大学に進学した私ですら就職できないと言うのに・・・


いつも通り、無視を決め込もうとしたとき、この人のメッセージのある一文が引っかかった。


「"フォロー返してくださってて"」

そう。私はこの人にフォローされて

更にフォローを返しているのだ。

もちろん、無意識に返した可能性もある。

しかし、こんな胡散臭いインチキアカウントなんかにフォロー返すだろうか・・・

居ても立っても居られなくなった私はこのアカウントのツイート内容を覗いてみた。



なるほど。

無茶苦茶可愛い。

可愛すぎるんだ。この人。

芸能人で言うところの中村アン。

色気の権化。

だから若干、勧誘臭くてもフォロー返したんだ。

そうだそうだった。

ここでこの人の印象が変わった。

「怪しいネットビジネス勧誘してくる鬱陶しい奴」

から

「DMを送ってきてくれた中村アン」

に完全に切り替わったのだ。

これはすごい切り替わり。

前者と後者に一見、共通項がないように思える。

まあ正確に言うと

「ネットビジネスに勧誘してくる中村アン」

と言ったところだろうか。


この波。。。。


乗らないわけにはいかない。


早速返信をした。

【レスポンスは迅速に】 ビジネスの基本だ。

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うむ。

我ながらなかなか虫唾が走る返しだ。

相手が警戒され過ぎないために取って付けたような「遊び相手」というワードにのみ食いついてみせたのだ。

しかしこのメッセージで

相手が勧誘にしか頭がないのか、俺と本当に仲良くなりたいのか。

篩にかけることができる。

もしここで好意的なメッセージが届けば

私は晴れて中村アンと恋仲になることできるのだ。


ドキドキワクワク


すぐには返信は来なかった。

きっと彼女も困惑しているのだろう。

今までの男とは違うメッセージに。

初めての、漢からのメッセージに・・・


返信が来たのは夜が明けてもうお昼になろうかという時間帯だった。


返信はシンプルなものだった。



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理解してくれた。

人間関係において一番大切とされている

「理解」

を彼女はしてくれたのだ。

私は悦びに浸った。

しかし、私はこのメッセージに対してどのように返信すればいいのか分からなかった。

ラインで言うところのスタンプとほぼ同意義のこの

「そうなんですね!わかりました!」

というメッセージに対して、どのように返信をしてもキモおじ(キモイおじさん)っぽくなってしまう。


考えろ・・・


そこで私が出した答えは1つ・・・

彼女が言う「SNSやブログで稼ぐ」ことに興味を持った振りをすることだった。

こんな染みったれた人生。

中村アンから逆ナンされることなんてもう2度とないだろう。

ここは1つ。

自分の心に嘘をついて、中村アンと出会うことだけを目的に話に乗ってみることにした。


以後まとめるとこんな感じ

佐野「具体的にどんなことをして収益を得るんですか?」

アン「ネット上で稼げる仕組みを作るんです!」

佐野「ちょっと想像つかないです・・・」

アン「インターネット上で稼げるんです!スマホを1日1時間触るだけなので簡単ですよ!」

佐野「それは簡単ですね!!でもそんな美味しい話あるのかな・・・」


と言った感じで彼女は具体的な計画は話してくれず・・・

どんだけ無理をしても彼女の話を鵜呑みにすることができず・・・

でも・・・

中村アンと出会える!!という事案が、自分自身に嘘をつくことで実現できるという現実に逆らえず

私は馬鹿なフリをして彼女の話を信じ続けた。

そして・・・

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マッチング・・・成功!!!!!


アンに会える。アンと話せる。アンと・・・


若干22歳。

盛りのついた成人男性にとって

中村アン(ネットビジネスver)との密会がどれほどに刺激的で

脳内を支配するに十分なイベントか、想像に難しくないだろう。



それから私達はラインを交換し

会うまでの1週間、毎日のように連絡をとった。

話題は主にアンさんが今日どんな買い物をしてきたか(高いバッグを買ったとか)

女性とは何気ない報告が大好きな生き物であると昔地元の駄菓子屋の爺ちゃんが言ってたっけ。

彼女は毎日のように高級な料理を食べたという報告をしてくれた。

もちろんその食事にはお相手もいるだろう。

きっと彼女なりに私に焼きもちを焼かせようと必死なのだ。

可愛い。

非常に可愛い。

彼女は食べた食事の金額まで教えてくれた。

「このフレンチ、2万円するんですよ~♪」

など。

きっと僕との将来を考えて

お互いの食費に関する価値観を擦り合わせようとしてるのだろう。

彼女がそんな話題を振ってきているとき、私はローソンの菓子パンで飢えを凌いでいた。

彼女の食事や装飾品に対する金銭感覚はきっと若気の至りだ。

人間は付き合う相手で価値観が変わる。

きっと私と付き合ったら毎晩のように高級レストランに行かなくても満足できる価値観になってくれるだろう。

そこに関しての不安要素はなかった。


ただ少し気になるのはラインが少しだけ一方通行というか・・・

何度かこっちからしている恋愛に関する質問を完全にスルーするのだ。

「好きなタイプ」「今、いい感じの人がいるのか」という質問をしても

「今日は心斎橋で買い物しました~♪」

とかしか返ってこないのだ。



流石に、こんな私でも悟った・・・・




彼女は過去に重い恋愛のトラウマを抱えている。

私が、、、、

救い出すしかない・・・



そしてその日は来た。

彼女とついに対面するのだ。

場所は梅田のサンマルクカフェ。

大きいココアがあるお店だ。


彼女は既にサンマルクカフェにいるとのことなので早速向かった。

どちらかと言うと不安や恐怖の方が大きかった。

もうほとんどマッチングアプリみたいなもんだ。

逆ナンとは言え、彼女は私のことは画像でしか見たことがない。

実際に動く佐野を目の当たりにした時にどう思われるだろうか。

今日は2時間くらい話をする予定だ。

初めての人と2時間2人きり・・・

これも大きな不安要素だ。

今でも割とそうだが、私は初対面の人と会話をすることに激しくストレスを感じてしまう。

カフェで向かい合って2時間・・・

ラインですら上手くキャッチボールが出来てないのに・・・


そんな不安が脳を支配している間に、私はサンマルクカフェに到着していた。

「到着しました。」


こんな営業先に送るような堅苦しいメッセージを送るとすぐに既読になり

「わかりました♪🌈」

そんなメッセージと共に一人の女性が店の中から出てきた。


思っていたよりも少し小柄で

でもその顔立ちやスタイルは思っていたよりもずっと輝かしくて

なによりも弾ける笑顔が印象的な

ネットビジネスさえやっていなければ中村アンの名を欲しいがままにできたであろう。

「はじめまして!!今日は来てくださってありがとうございます!!」

声も・・・かわゆい・・・


彼女に案内されるがままに私は席についた。

いつもと同じ、でっかいココアを注文して。




「今日は何をしていたんですか??」

「好きなアーティスト誰ですか??」

「ここのココア美味しいですよね!!」


直接会った彼女はラインとは真逆で

とにかく私のパーソナルの部分を知ろう知ろうとしてくれた。

私「今日は。。。1日寝てました・・・」

アン「そんな日もいいですよね!!私も時々、1日中寝ちゃうことあります♪🌈」

糞みたいな会話に見えるが私は楽しかった。

なぜなら相手が中村アンなのだから。


彼女からの質問に答える。

彼女がその答えに対してリアクションをする。

会話の基本だ。


楽しい。

思えば、女性と2人きりで話すなんてことしばらくしてなかったことに気付かされる。

久しぶりの相手があなたでよかった。

心からそう思えた。


小一時間ほど経っただろうか。

「バイトはなにをしてるんですか??」

こんな質問をされた。

ワイ「宅配と・・・」

アン「えー!!大変ですね!!」

かなり食い気味にきた。

そして

アン「でも私の言うとおりにすればそのバイトも辞めれますから!」




そうだった。

中村アンは中村アンでも

ネットビジネス勧誘の鬼と化したバージョンの中村アンだった。


でもそんなことは今に始まったことじゃない。

一旦、しっかり。ネットビジネスとやらの話を聞いてみよう。

私にはそんな気概もあったのだ。

しっかり話を聞いてもいないのに否定するのは違うと思ったから。

中村アンから話が聞けるならむしろプラスだし。


以下、ざっくり聞いた説明のまとめ

・セミナーが開催されてそこで言われたことを実践すれば稼げる

・1日1時間スマホを触れば稼げる

・同じ目標を持った仲間がいるから楽しいし稼げる

・絶対に稼げる




うん。

DMで聞いた内容と変わらないんだよね・・・


こちらが何個か質問しても彼女は結論を上記の4つ中のいずれかに持っていく。

もう

「何歳ですか?」って聞いても「稼げる」とか言いだしそうなくらいに。


少しだけ彼女が気の毒に思えた。

これは思わぬ感情だった。

お金の話をしてくる彼女の表情を見ていると

今までの人生の中で稼ぐこと以外に楽しさを感じることがなかったように思えるくらいに

稼ぐことに執着しているようだった。


決して、これは「稼ぐ」ことに一生懸命な人を否定しているわけではない。


なにか今までの彼女の人生の空白の青春を「稼ぐ」ことで埋めようとしているように見えてしまったのだ。(推測に過ぎないけど・・・)


私は恐る恐る聞いてみた。

「実際に・・・どれくらい稼いでるんですか・・・??」


かなり攻めた質問であることは理解している。

人の収入なんて聞くもんじゃない。

でもここまで稼ぐことに固執した人間の成果を見てみたくなってしまった。


「普通に働くよりは全然稼げますよ🌈」



まぁ。そうか。。。


彼女は一度就職したが通勤が苦痛で仕事をやめ、今のビジネスに着手したようだ。

同じようにツイッターのDMで誘われて。


普通に働くよりってどういうことだろう・・・


でもきっと所謂、平均収入よりはもらえているということだろう。

深く掘り下げるほど野暮じゃない。


でも私は見逃していなかった。

このココアを注文した時、彼女もコーヒーを注文していた。

お会計は一緒でと言って、お互いに500円ずつくらいだした。(お互いに480円くらいだったから)

そして店員さんが差し出したお釣りの40円を

彼女はスッと自分の財布に閉まっていたのだ。

ここでその40円を奪取する人間が本当に「普通に働く」よりも稼げているのか???


ってかここで割り勘にするより

一杯くらい奢って、金銭の余裕をアピールした方が

私が話を信じやすくなるんじゃないのか??


そんな心理さえも操れない人間が稼ぐことができるのか??ネットビジネスって!!


この「普通に働くよりは」発言で、完全にこのネットビジネス系中村アンに対する恋の炎が消えてしまった。


そんな私の心情なんかお構いなしと言わんばかりに彼女は言った。


「今週末、セミナーがあるのでいらしてください!!」

と誘われた。

もうここまできたんだ。

セミナーも見てみてやろうじゃねぇか!!!!


如何に見た目が中村アンでも

価値観がズレ過ぎてると付き合えない。


そんなことを学んだ大学四年生の春だった。




次回!!!


『ネットビジネスセミナー、騒乱編!!!!』


続。

追記

 セミナーに参加する、と言った途端に周りの席の人達がみんな僕のところに来て『宜しく』と言ってきました。

僕はずっと囲まれてたんです。

こえぇ〜〜

みなさんからのサポートで自分磨いて幸せ掴むぞ♪