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東京タンバリン『みひつのこい』を経て


先日、出演した演劇公演が終演しました。
東京タンバリン『みひつのこい』
ご来場いただいた皆さま、応援していただいた皆さま、本当にありがとうございました。

忘れたくない感情があふれているので、想いが風化する前に書き留めます。



久しぶりの演劇公演

今回の演劇公演への出演は私にとっては4年ぶりの機会でした。
……といっても、4年前に出演したものは朗読劇『はだしのゲン』。朗読劇だったため、演劇公演で考えると2015年ぶりです。

ただ、この4年間、コロナウイルスの感染拡大により出演予定の舞台公演がなくなるなどの問題を受けながら、「このままじっとしてられない!」と、自主的に演劇公演を企画し、出演することは何度かありました。
しかし、それらは基本的に一人芝居であることが多く、人とのかけ合いがあったのは、たのしいくわだてさんと共同企画したバー公演の一人芝居の合間くらいでした。

そのため、一概には"いつぶり"と言えないのですが、とにかく久しぶりの出演機会。稽古期間がはじまる前から、私の気持ちは昂っていました。

そして、なんといっても今回声をかけていただいた劇団は東京タンバリン去年の公演をはじめて観たときから惹かれている劇団だったのです。

▼昨年観て惹きつけられた『絆されて』はこちら

▼『絆されて』を観て楽しくなっていた私の投稿

この『絆されて』は、東京タンバリンの"笑えるサスペンスシリーズ"のひとつ。今回出演した『みひつのこい』は同シリーズの新作でした。

久しぶりの演劇公演へのチャレンジ、
大好きな劇団の新作への出演、
うれしさと緊張感を抱きながら飛び込みました。

一人芝居の「手軽さ」と「危うさ」

前述した通り、私はコロナ禍で出演予定の舞台がなくなる中、「まあ、みんな動けない状況だから」とあぐらをかきはじめようとしていた自分をいなして、一人芝居をはじめていました。

既存のモノローグ台本や、あて書きしていただいた一人芝居台本にチャレンジしたり、生活の中でいそうな人の即興再現動画を毎日公開したり。一人でいつでも手軽に取り組めるため、色々とトライしてきました。

しかし、今回は一人ではありません。
その上、会話劇が特徴の劇団の作品。
稽古がはじまってから、手軽さにできる一人芝居にはらむ"盲目的になる可能性"をはっきりと自覚させられました。

①会話は呼応により成り立つ

まず、当たり前のことですが、会話劇には自分以外のセリフがあります。
そして、そのセリフを発する相手役がいます。
相手の言動に対して、自分も呼応し、それにまた相手が反応し……の連続で成り立つものだと理解しています。

この訓練をそこそこに一人芝居に手を出したばかりに、この、日常生活においても当たり前の、会話の原理原則に立ち返ることが難しい状態になっていました。

一人芝居をする際には、相手のセリフや反応を空想して、空想に反応してセリフを発していました。これがまた、独りよがりになってしまうポイントのひとつなんですよね。

脚本や役の解釈は人それぞれあって、さらに"脚本に書かれた言葉"と"それを演じる役者"のかけ合わせで唯一無二の人物が作り出されるのだと思っています。
一人芝居ではそれを考えることができませんでした。相手を作り出すのも自分の空想。自分の想像の範囲内の反応しか生まれないのです。

これまで多くのお芝居の稽古の場で「相手のセリフを聞け」「相手の行動や反応をちゃんとみて」という言葉を聞くことがありました。
そもそも、「自分!自分!」なお芝居は見ていて辛いし、私は自分がそうなっていることが何よりも嫌だろう。という想いがあったため、その言葉は毎度強く頭の中に響きましたし、意識するようにはしていました。

しかし、それなのに、どうしても視野が狭まってしまいがちなことをあらためて自覚。深く反省しながら、視野を広げる余裕をつくることが必要だと感じました。

②視野を広げる余裕が必要

”視野を広げる余裕”。
今回いろいろな学びがあった中でも、特に自分の課題だと感じたのがこの点です。

前述した”相手の言葉を聞く””相手の反応をみる”という点が困難であったことからはじまり、稽古中、さまざまな場面でそれを実感させられました。

たとえば……
・場面転換中、自分の動きにばかり意識が集中してしまい、自分の動きが影響する人の動きを見る余裕がなく、動きのテンポがズレたり、臨機応変に対応ができないことがあった。
・「次にこの動きをする」という動きに意識を集中しすぎて、言葉と身体の動きが連動しない状態になってしまった。
・ひとつのことに集中すると別の場面でミスが起きてしまった。

余裕がないと、面白いくらいにシングルタスクになることに気づきました。
相手役に呼応しながらも、今後の展開や舞台上の状況や動きを考えながら、セリフを発したり行動をしなければいけない役者は、舞台上では常にマルチタスクではいけないのです。そのためには、余裕が必要。
私には圧倒的にそれが足りませんでした。

仕事をする中でも、会議中に今後のリリース予定を聞きながら、そのためには何が必要か、何が最適か、それを整えるために自分はなにをするべきか、誰になにを依頼すべきか、他の案件との兼ね合いをみるとどんなスケジュールで動けるか、などを同時に考えて会議を進行しつつ、次の動きに向けて頭の整理をする場面があります。

日常の場面でも、AさんとLINEで他愛もない話をしながら、LINEのリマインドでとんできたBさんの誕生日プレゼントを考えつつ、これから会うCさんとの待ち合わせ場所に向かっていたら、取引先のDさんから「急遽**の資料を送ってほしい」というSlackが届いて、待ち合わせ場所までの道中のどこのカフェならPCを開けるか考える、なんという同時並行の動きはよくあることです。

同時並行でなにかをやるということは、仕事や、日常生活を思い返せば当たり前のことなのに、お芝居になるとなぜこんなにも難しくなってしまうのか。それは確実に経験不足と、不器用さが起因していると思います。

……いや、もしかしたら、日常でも相手のことがちゃんと見えていないんじゃないか。ふと、お芝居を超えて自分の言動を振り返るきっかけにもなりました。

③知らなかった自分の癖に気づく

それからもうひとつ。
一人芝居では気づけなかったことは、"自分の癖”です。

昨年自主企画で実施した一人芝居公演は演出サポートとして関根大さんに数回稽古を見ていただきましたが、それ以外では自分の芝居を客観視する機会がほぼありません。
基本的にあるあるネタの一人芝居は動画としてあとから見返せるようになっていますが、定点で撮っていることとフレームの範囲内でしか動けないことから自分の癖を分析できるほどの振り返りはできません。

また、”知らなかった自分の癖”というものは、"自分で見えなくて気づかないもの”"自分の中では当たり前になっていて注目していなかったもの”の大きく2種類があると思うのです。
今回の公演稽古を通して、自分の知らなかった癖、それも治すべき癖に気づくことができました。

指摘していただいた癖は何点かありますが、意識しはじめてからというもの、「確かに! そんな癖がある!」と驚きました。きっと実生活のなかでも身についてしまった癖だと思うのですが、客観的にみて印象がいいものではなかったり、お芝居と向き合うにあたって不要な癖だったため、私のノートに書き留めて、今後も意識していこうと思っています。

とある日の稽古前

好きな劇団を広めたい

東京タンバリン

前項で書き連ねたように(そこにも書ききれないくらいにたくさん)いろいろな学びや気づきをいただいた今回の公演でした。
東京タンバリンの皆さんには感謝しかありません。

そして、あらためて「私はこの劇団が好きだなあ」と深く感じさせられました。
基本的にPRの仕事をしている中でも、<まず惚れる>→<中に入って、知れば知るほど大好きになる>→<第一のファンになる勢い>で熱をもっていくのですが、稽古期間からの約一ヶ月半ですっかり大ファンになりました。

今回こうしてご一緒させていただく前から、小気味よい会話、ほどよいユーモア、ちょっとズレた憎めないキャラクター……と、作品自体にも惹きつけられ、その作品を作り上げる劇団員の皆さんのお芝居にも魅了されていました。
私のなかで「この劇団の作品は新作あるなら絶対観に行く」と決めている劇団が2つあるのですが、東京タンバリンはそのひとつなのです。(出会いが遅かったので、まだ観劇歴は1年ですが……)

それくらい自分のなかでファンとしての土台が確立されてきたところで、今回の出演が決定。感無量でした。そして、この期間で客席側だけでは受け取れない魅力を知ることができました。

①作品を作り上げる皆さんが魅力的
観客席から観るだけでは、どうしても表層の部分しか見えませんが、実際に制作期間をご一緒することで、劇団員皆さんそれぞれの作品づくりへの向き合い方や、技術を目の当たりにしました。面白かったあの作品たちを作り上げた所以を、身をもって体感することができました。
心底尊敬の念を抱きましたし、同じステージに立てたことが夢のようです。
そして、私自身もその皆さんの想いや熱を未熟者なりに刺激として受け取り、まだまだ未熟な部分も多々ありますが、一層真剣に作品づくりに向かおうという気持ちが盛り上がりました。

②細部のこだわりに注目したい
東京タンバリンの作品(特に今回のSCOOLでの作品)は、舞台美術はほとんどありません。壁の装飾と、机と椅子と、その他小物のみ。
今回の作品を観ていただいた方からは壁の装飾について感動の声を多数いただきましたが、シンプルな舞台だからこそのこだわりポイントにも注目したいところ。これは前作で客席から観ていた時にも感じておりました。

壁の装飾がラストには……

また、美術や小道具だけでない部分にも魅力ポイントが。
"笑えるサスペンスシリーズ”は、上演時間一時間の中にぎゅっと展開が詰め込まれているので、初見では物語を追うだけであっという間に終わりを迎えてしまうと思います。しかし、実は後のあの展開を知っていたら笑えて見える言動が前のシーンにあったり、登場人物がさらに愛おしくなってしまうちょっとした癖や小ネタがあったり、と、二度三度と見直して楽しめるのも特長のひとつなのです。
是非とも次回作はリピート鑑賞したいな、と思っております。
(リピーター割引の設定を期待します笑)

私をきっかけに今回観劇をしてくださった皆さんへ

すこし、烏滸がましい話をします。

まずは、今回私をきっかけに観劇してくださった皆さま、それぞれご多用のところにもかかわらず、本当にありがとうございます。
おひとりお一人にご挨拶することがかないませんでしたが、後日あらためて何らかの形でご挨拶ができればと思います。

これまで書いてきた通り、魅力にあふれる劇団なのですが、今回私をきっかけに観劇いただいた方は、今回はじめて東京タンバリンを知ったという方がほとんどかと思います。なかには、「はじめて演劇を観たよ」という方も何人かいらっしゃいました。(本当にありがとうございます)

無理もないのです。
演劇、特に小劇場演劇は、その情報を受け取れる機会がほとんどないからです。たとえ生み出される作品が素晴らしいものであっても、面白いものであっても、それを知るまでの手段があまりに少なすぎるのです。

しかし今回、普段演劇を観ないというお仕事仲間の方にも「こういう作品ならいつでも呼んでよ!」、「おもしろかった!こんな作品があるんだ!」、「最初はこんな場所でなにが……?と思ったけど、どんどん引き込まれてびっくり」、「考えながら観るのもたのしい!二度観たかったな」など、作品を楽しんでいただけた感想を多数いただきました。

ええ、そうなんです。面白いんです。(ファン)

なので、もし今回面白いと思っていただいた方には是非、また東京タンバリンの作品を観て欲しいのです。是非、たくさんの人に私の好きな劇団、作品を知っていただきたいのです。

演劇は映画とちがって予告がないので、実際に劇場に訪れて作品を観るまでどんな作品かわからないものです。この記事の最初に東京タンバリンの過去作のYouTubeを掲載しましたが、記録映像で観るのと舞台で生で観るのとでは全然印象がちがうものです。

では、演劇フリーク以外が、演劇作品を観にいくことを決め手はなにか。

初回の決め手の多くは「知り合いが出ているから」だと思うのです。
そして、それ以降は「過去に見て面白かったから」。
一度観て面白く楽しい時間を過ごすことで、次回作への期待や、次の観劇のハードルが下がるという方は多いのではないでしょうか。

今回、私をきっかけに観劇していただいた方で「面白かった!」を思っていただいた方には、是非とも次回作も観に行っていただきたいのです。
私が媒介となって、大好きな劇団が少しでも多くの人に知られたら、とってもうれしいな、と感じております。

これからの私

「女優をやりたいんだよね?」

ここまで、公演への参加で学び得たこと、大好きな劇団への想いを書いてみました。
ここ数年、独立や起業、プライベートでのとある事件など、自分の人生において大きなターニングポイントを迎える機会が多くありましたが、あらためて、今回の出演機会もターニングポイントのひとつになったと感じております。

突然ですが、私は恥ずかしげもなく"多機能女優”という肩書きを名乗っています。

▼"多機能女優"について書いたnote

こう名乗ることは、自分に自信があるから、ではなく、逃げ腰な自分に喝を入れるためというのが理由のひとつとしてあります。

先日、公演を終えて「役者をやっていきたいんだよね?」という問いを受けました。それに対して「はい」と即答している自分がいました。
今回あらためてお芝居と向き合ってみて、たくさん反省し、同時に「あらためてお芝居に向き合いたい」という想いを強く持ちました。

"多機能女優"という肩書きは、ビジネス上でお会いした方には「面白いね! 女優業も気になる!」とライトに興味を持っていただけますが、実際お芝居メインや、一筋で取り組まれている方からすると、「イロモノだな」「ふざけている」「甘くみているな」など、迷惑に感じられてしまうかもしれません。自分の未熟さや課題点を実感したことで、そう思われても仕方ない、と感じてしまいました。
この気づきをもって、実直にお芝居に向き合われている方とも、真剣にご一緒できるように、一層精進しなければならない、と意気込んでおります。

もちろん、わたしにとっては会社の事業も大事です。
「両立なんて中途半端」なんて意見もよくいただきますし、自分自身そんなに器用なわけではないのも事実ですが、それでもやはり、役者として認められることを諦めたくない、と強く感じているのです。

人生、一層険しくなるだろうなあ
もうすぐ30になるけれど、婚期は逃すだろうなあ
なんて想いはありますが、人生にワクワクしております。

これからも、謙虚に、でも貪欲に、たくさんのことを吸収して、人との対話を大切に、楽しくお芝居にも会社の事業にも取り組んでいきたいと思います。


ラスト、駆け足になってしましましたが、今回の想いはすこしでも書き留めておきたいと想い、noteを開きました。
あらためて、夢のような期間でした。

ご来場いただいた皆さま、応援していただいた皆さま、ご一緒させていただいた東京タンバリンの皆さま、公演に携わってくださった皆さま、本当に本当にありがとうございました!

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