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小説『エミリーキャット』第42章・SOS

新たなバスを乗り換え、サンディエゴから海を渡ってコロナド橋を越える青年の頭の片隅には『個展を置いてきてしまった』という思いが偏頭痛のように、しがみついて離れなかったが彼は明日、日本へ帰国するというミヨコとどうしても離れたくなかった。今、彼女と離れたら、もう二度と逢うことは出来ないのだという気がしたからだ。
ミヨコの日本での住所を聴き、はるばる海を越えて逢いにゆくことが青年にはいくらでも可能な筈なのに、何故か彼は今この時を逃したら、
それはいかなる力を持ってしても変えることの出来ない彼女との絶対的な別れとなるような気がしてならなかった。



それにミヨコは何かを隠している。
その為に怯え、惑い、酷く興奮している。
陽気に、はしゃいで見せれば見せるほどそれは彼女独りでは、到底抱え切れず、また抑えきれない何か得体の知れぬ不安への裏返しに過ぎないということが目には見えない鮮明なコントラストとして青年の目には映るような気がした。


『カリフォルニアの海ってどうしてこんなに綺麗な色なのかしらね、
私はもっとエメラルドグリーンの海を想像していたの、
それよりも遥かに碧いわ、
アクアマリンみたいね、
まるで地球より巨きなアクアマリンを溶かして海ってものにしてしまったみたいだわ、
いつか溶かされたアクアマリンの呪いを受けて地球上から渇いた土地が全て無くなる時が来るかもしれないわ、
そしたら私達は水の上で暮らすことになるのね、帆船や本当に小さな浮島や…あるいは…』
『じゃあアクアマリンを溶かした人は誰だとミヨコは思うの?
神様かい?それともアクアマリンってのは何かをシンボライズしてるのかな?』
『…解らないわ…』
ミヨコは窓からの潮風を顔に受けていたが窓硝子をピシリと閉めて、
可憐だがどこか険しいような横顔を見せて言った。
『私の言うことなんかいちいち真に受けないで、私ったらいつもいい加減なことばかり言ってるんだから…
それにもし神様が居たとしても、
きっと私のことなんか嫌ってるはずよ』
青年は急に投げ槍な口調になったミヨコにアクアマリンのような瞳を瞠目して言った。
『何故?どうしてそう思うの?』『……』
『そんなこと無いよ、だって…』
と言いかけて青年はいきなり列車がトンネルに入り、窓外の風景が斧で断ち切られたかのように急に何も見えなくなるのと似て、その言葉の先を唐突に見失った。


仕方無く彼はチェリー・コークを飲むとその薬品じみた人工甘味料の余りにも技巧的過ぎる甘さ、チェリー・テイストと銘打ちながら、およそフルーツとはかけ離れ過ぎた少しも果実の新鮮味さの欠片(かけら)も無い、
どこか無機質な甘味にふと、子供時代のあの不適切な悦楽を思い出した。
それと同時にエミリーのうっすらソバカスの浮かんだ薄薔薇いろの笑顔と赤みを帯びた金褐色の綿飴のような髪の色が浮かんだ。
彼は脳裡からその胸が軋むような記憶を追い出すように空の缶をミヨコの側からは見えないようにそっと握り潰すとこう言った。
『君はもうアメリカへは帰ってくることは無いの?
明日日本へ帰ったら、アメリカへも、イギリスへも、もう渡航はしないのかい?』
『……』
ミヨコは窓外に放っていた視線を、隣に座る青年へとゆっくりと振り向けると酷く鎮かな口調でこう言った。
『貴方ね、
さっき私のチョコレート・バーを食べたのよ、覚えてる?あっという間も無かったわ』
この時ミヨコが怒気を含んだ口調で真剣な眼を自分に向けているのを見て青年はうろたえた。
『…だから?』
『だから??
私のチョコレートバーを食べたんならそんな風に私を質問攻めにするのはやめてくれない??
私のものを食べておいて私を不愉快にさせるなんて…』
と、彼女はバスの中で何故だか今やカンカンに怒っていた。


『そんなの…そんなの…』
『…うん?』
『…単なる時間の損失じゃない!!』
『…時間の…損失…?』
『そうよ、私、そういうの嫌いなのよ!』
『…解った、解った、
じゃあ、コロナド・アイランドに着いたら僕は君にチョコレート・バーを買って返すよ、
それでいいだろう?』
『そういう問題じゃないわ、
だってあの時、貴方が食べちゃったチョコレート・バーはもう返ってこないのよ、後からお金みたいに補填なんか出来ないわ、
だってあのチョコレート・バーは"時間‘’だったんだから、
大切な…大切な時間だったんだから!私と貴方はチョコレート・バーを通じてどうせもう二度と逢うことの無い間柄でも人生の切れっぱしみたいな…とてもインティメートな‘’何か”を交感出来ていたかもしれなかったのに、
その”何か‘’を失ってしまったんだから、
それはもうそれは新しいチョコレート・バーなんかじゃ取り戻せないわ、』
そう言ったミヨコの瞳は雨に濡れ光る夜の窓硝子のように、
彼の碧い瞳の色を昏い女波(めなみ)に揺らぐボートの破片のように映し出していた。
彼の瞳が映っているというより、
彼の瞳の色だけが虚ろな船の残骸のように形を伴わず、ミヨコの黒鏡のような瞳の上でただ酷く明るい影のように揺れているのを見つめているうちに、青年は自分が昏い夜の海に沈没した難破船に乗っていた船乗りか何かになったような気がした。
彼は生まれて始めて至近距離で見る東洋人の瞳がこんなにも艶めいて、濡れ輝いているものだと知ってミヨコの瞳をミヨコが呆れるほど凝視した。


淡い瞳は光りを通すぶん、色そのものが最も能弁となる。
だが黒い瞳は平板で奥行きに欠ける。白人の瞳のような透明度が低いぶんその艶めきや水々しさや体温や湿度までもが夜の湖面からのように匂いやかに伝わってくる。
、地色が暗いだけに涙ぐんだり渇いたりその変容が陽光を受けてより鮮明に解りやすく見えるのだ。
ミヨコの黒い瞳の奥で時に純金の閃光が遠く小さく花火のように見えたかと思えば、それは彼女の長い睫毛のまばたき一つで終わる一瞬の世界でしかない。
その世界をもっと見たいと彼は願ったがミヨコがまばたきする都度、
塗れた黒曜石のような黒い瞳はその平板な暗さの中に複雑な見えない色を咲かせては消え、瞬いては流れ星のようにそれは瞬時に消えて無くなった。
青年は何故かニューヨークへ帰ったら、セイレーンの絵を描きたいと唐突に思った。

モデルはミヨコだ。
黒い大きな瞳と絹のようになめらかな黒髪を持つ東洋人のセイレーン。そんなセイレーンなどまだ誰も描いた者は居ない筈だ、と彼は思った。

竪琴を奏で、もの哀しげな歌声で船乗り達を誘(おび)き寄せてはその船を沈没させてしまうというセイレーンは伝説上の妖魔だ。
人間の魅力的な女の姿で現れることもあれば、人魚(シレーヌ)として現れることもある、かと思えば巨大な翼と鉤爪を持つ半鳥人のという厳めしい姿で大空を舞うこともある、
セイレーンは水陸両棲の女の魔物だが、古(いにしえ)の芸術家達もその妖美な伝説に惹かれ絵に描き、文学に登場させていることも珍しくはない。


セイレーンの美しい歌声という目には見えない蜘蛛の糸に囚われたように船乗りの乗る船は彼女に手繰り寄せられて崩壊していったとして、彼らは果たしてそれが不幸なことだったのだろうか?誰もが恐ろしいことと感じるであろうその伝説を、青年はふと船乗り達がもしかしてそれを望んでいたのではないかという気がしてならなかった。
セイレーンの歌声に耳をかさなかった船乗りも居たという話もある。
だが引き寄せられていった船乗りは…と青年は思った。
陸で生きていてとても虚しく孤独だったに違いないと…

青年はミヨコの瞳に映る自分の瞳の色がいろんな形に移ろいながら、
その潤いの被膜に添って揺れ動くのを、ただぼんやりと夢見るように見つめていた。
やがて彼はいつの間にか昏い波間に碧い眼をした船乗りとなって、自分の眼の色と同じ碧い塗料に包まれた船の残骸に取りすがり、ただ大海原に浮かんでいた。
誰か助けに来て欲しいような、
このままこのミヨコという女の瞳の中の昏い海にたゆたっていたいような…


どうしたらいいのか解らない気持ちの中で、彼はミヨコの瞳の中に揺らぐ黒い波間の碧く明るい影に意識が全てくるくると回って左回転し、その渦に吸い寄せられるような気がした。


黒目がちの彼女の瞳の傍の白目は、さながら青磁のように幽かに薄荷(はっか)のような涼やかな青みを帯びていて、下瞼の辺りにさっき泣いた時に溶けたマスカラの黒いカスのようなものが僅かに付着していた。
頬の上を伝い落ちた落涙の跡もグレーの筋道のようにしっかりと残っている。
彼は片恋を寄せる東洋のセイレーンの顔にこびりついた黒いマスカラの溶けカスを指でふと気がつくと、
丁寧にこすり落としていた。
こすり落とされながら、
ミヨコはひたすらに不機嫌な顔を崩そうとはしない、
『私のチョコレートバ…』
と怒って言おうとした彼女の唇は青年の唇で塞がれた。
バスの中での時間はとても熱く長く、また悩み深く感じられた。
青年がそっと顔を離した時、ミヨコはまだ怒ったままの顔でいた。
だが青年を見つめたままやっと発したその声はもう怒ってはいなかった。
かといって嬉しそうなわけでもなく、戸惑っているわけでもない、
それは失意にも似て諦観を帯びた、酷く大人びた声だった。
『いいわ、じゃあ貴方にチョコレート・バーを買ってもらうことにするわ、コロナドに着いたらね、
そしたら私も貴方に本当のことを教えてあげる、』
『…本当のこと?』
『そうよ、
でもそれを知ったらきっと貴方は私に今したことをきっと後悔するに決まってるわ、』
『そんな…またなんでそんなことを言うんだ』
『なんでかはまだ答えられないわ、まだよ、だってまだ島に着いてないわ、到着したら…
私に買ってちょうだい、
私のチョコレート・バーを、
私だけのチョコレート・バーよ、
貴方の為のものじゃなくて、私のチョコレート・バーよ』


『解った』
彼は真剣に頷いた。
頷きながら彼はこんなに真剣に誰かに頷いたのは生まれて初めてだと思った。
ふたりはバスから降り、観光客達が皆、テキサス辺りからなのであろうか?強い南部訛りの英語や、外国語混じりの会話や笑い声と共に散り散りに立ち去ってゆく中、ふたりは見つめ合ったまま、やがて無人となったバス・ストップに立ち尽くしていた。
『…行こう』
と青年は言った。
そして彼は心の中で何故か荒ぶる心を抑えて思った。
‘’後悔なんか絶対しない、
するもんか、僕は君に本気なのに、何故そんなことを言うんだ?
君の為に大切な個展まで放り出してこんなとこまでやって来たと言うのに後悔?
どうしてそんな言葉が君の唇から出てくるんだ?
キスしたのに何故君は僕に微笑んではくれない??‘’
『売店のあるどこか…
すぐに見つかるさ、
君の言う『時間』を買ったら、
どこか見晴らしのいいカフェテラスで何か飲もう、何かマトモな飲み物が欲しいな、チェリーコークなんかのお陰でかえって喉が渇いたよ、』
『ミルクティーが飲みたいわ、
美味しいイギリスのトワイニングのがいいわ』
『……』青年がそれを聴いて思わず曇り空に晴れ間が覗いたような笑顔を浮かべた途端、ミヨコは言った。『いえ、やっぱりタンカレーが欲しいわ、うんとドライなマティーニにして飲むの』
『…いいよ、でも君、アルコール飲めるんだね、てっきりチョコレート・バーとかグルグッドスやチョコレートプディングみたいな甘いお菓子のほうが好きなのかと思ってた』
『……』
抜けるような青空を切り裂く悲鳴のような声を上げて海猫が飛んでいくのをミヨコは怯えたような瞳を向けて見送ると、青年の瞳をわざと見ずに空を見たまま彼女もまた半ば叫ぶように言い放った。
『お酒を沢山飲んだら私の中から流れて出て行ってくれるかしら?
ダニエルの面影も私の嫌いな私も…
あと、もう一人も…』
『…ダニエルって…誰?
君のその…恋人?君、恋人居るのかい?』
『まだ解らない?貴方、
貴方、善い人過ぎるのよ、
私、妊娠しているの!
妊娠しているのよ!!
だから言ったでしょう?私にキスしたこと絶対後悔するに決まってるって!』
『……ニンシン…』
青年は平素、理解しているその単語の意味が眩し過ぎるフラッシュを焚いた後のように、頭の中も目の前も一瞬真っ白と化してしまい、全てをもう一度理解する平常心に立ち返れるまでにおよそ一分とかかった。
『もうチョコレート・バーは要らないわ、
だってもう時間はバスの中とそしてたった今、全て使い切ってしまったもの、
新しく買ったって、きっともうその継ぎ足しにもならない…』
そう言うとミヨコは遠くに水着姿の海水浴の観光客や日焼けの為にローションやオイルを塗って裸の背中を向けて横たわる象のような有閑マダムやそのご令嬢達が見える白い浜辺に、向かっていきなり背(そびら)を返すと駆け出して行った。


『ミヨコ待って!』
ほんの数メートル駆けたくらいでミヨコは簡単に、サラサラしているようで案外深いビーチの真砂に足を捕られて顔から突っ込むように直角にバタリとまるでマネキンのように倒れ伏した。
『ミヨコ!大丈夫か??』
青年は驚愕の声を上げて走り寄ると、砂の上に突っ伏したままのミヨコの躰の傍らへ膝まづき、すっかり捲(まく)れ上がったミニスカートを、大きな手のひらで、ささくれを返すようにそっとヒップに触れないように注意深くそのフレアーの襞を直してやった。
彼女の小さなヒップを包む小さなパンティには白地に赤い文字でデカデカと『SOS!』と印刷されていた。
ミヨコの長い豊かな黒髪に覆われた背中に手を置くと、彼女は声を出さずに泣いているのが解る、


激しく波打ち隆起するその背中に、彼女の逃げ場の無い、血路を塞がれた者の絶望と恐怖感と息も出来ない孤独とが青年の手のひらを通じて、彼の心臓にまでまるで電流のようにヒリヒリと痛いほど伝わってきた。


『…ねえ、ミヨコ、
やっぱりチョコレート・バーは買おう、もっと君の話を聴きたいんだ、
一体何があったのか?
全て聴かせてくれないか?
場合によっては僕はもしかしたら、なんらかの形で君の力になれるかもしれない、
君をほっとけないんだ、
君をこのまま置き去りにして僕は帰れないよ、
何かとても深い事情があってそうなったんだろう?
そうでないはずが無いよ、
だったらそれを僕に教えて欲しいんだ、君を助けたいから…
だからここから早く立ち去ってどこかでチョコレート・バーを買おう、
君のチョコレート・バーを、
でも君のだけじゃない、僕のでもある、


僕らのチョコレート・バー(時間)を買おう、それだけの価値はきっとあるはずだ、
君の身に一体何が起こったのか…
理解したいし、それと何よりもそんな風に独りぽっちで泣いて欲しくないんだ、
絶望しないでミヨコ、大丈夫だよ、僕は君にキスしたこと後悔なんか微塵もしていない、
むしろ君には今何よりも人の助けが必要なんだ、僕にはそれがよく解る、何故なら僕もまた君と同じように飢え渇いているからなんだ、
君が云ったインティメートなものにね、愛や助力や共感や誠意だなんだ…
そういった今や恐竜と同じくらい遺物となってしまったその“何か”に…そして多分それらを育むであろう君の云うチョコレート・バーも…
君にも…そして僕にも同じくらい必要なんだよ』


ミヨコは白い砂を満遍なくまぶした泣き塗れた顔を上げると青年を見て言った。
『貴方、変わってるわね、
私も変わってるってよく言われるけど…私は自分勝手な変わり者だもの、そういった変わり者は同じ変わり者でも世の中物凄く沢山居るのよ、だから私はただの無能で凡庸な変わり者なの、
でも貴方は……
貴方は少し違うみたい、
やっぱり芸術家は“本当の変わり者”が多いっていうけれど、本当に本当にそうなのね、
貴方はとても優しくて善良だけど、でもちょっぴり…きっとお馬鹿さんなんだとも思うわ』
『…みんなそう言う、
特に兄はね、お前はいつかその為に身を滅ぼすかもしれないって、
それがとても心配だなんて言ってるよ、』


彼は肩をすくめて淋しげに言った。『でも君だって本当は誰かに助けて欲しいんだろう?
もっと素直になれよ、
だってお尻にそう書いてあったぜ、“SOS”って』
ミヨコの色白の頬に見る見る血潮が登った。
彼女は咄嗟に自分のヒップに手を当てて、スカートがちゃんと直っているのを確認すると、泣きそうな顔を左右に振りながら言った。
『あれは違うの、
あれは違うのよ、だってあれは妊娠なんか夢にも思わない時にロンドンで買ったんですもの、
わざとじゃないわ』
その言葉は最後まで言うことは出来なかった。
青年の唇に封じられミヨコは抗弁することを諦めた。
と同時にミヨコはそっと瞳を閉じ、そのまま白い砂浜に横たわった。
目尻から涙が一筋伝い落ち、ビーチの砂の上へ小さな真珠のように水分を弾いてこぼれ落ちた。
青年はミヨコを抱き締めたまま、
気がついたら自分も泣いていた。
ミヨコに気がつかれないように声を殺して泣いていた積もりだったのに、急に緊張の解けた青年はいつの間にか号泣していた。
ミヨコはいつの間にか青年の背中を優しく撫でさすり、その頭を自分の胸に抱き寄せると労るように言った。
『いいのよ、有り難う、
ショックを与えてしまってごめんなさい、
もういいの、いいのよ、
いつも悪いのは私なの、
いつも悪役は私一人、だから神様も私を嫌ってるんだと思うわ』
『そんな…そんなことないよ、
そんなことない!僕がそんなことないって証明して見せる、
君に証明して見せる、
君にはそういうことが必要なんだよ、僕なら君の代わりに証明して見せることが出来るよ、きっと、
だって君が好きなんだ!
初めて逢った時から…初めて君を見た…あの夕暮れ時のあの日からずっと…』


声を上げて泣く青年を胸に抱きしめたままミヨコは砂浜に人魚のように座っていたが、やがて玉虫色に光る珍しい貝殻を見つけると片方だけハイソックスのずれ落ちた脚を伸ばしてそれを懸命に掻き寄せた。
ミヨコはその貝殻を耳を当て小首を傾げると、他人事(ひとごと)のように呑気に青空を仰ぎ見た。
そして‘’海鳴りの音が聴こえる”と思った。
だが海は本当にすぐ彼女の目の前に在った。




To be continued…





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