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『ショートショート とってもふしぎな創作ドリル』から短編「月を吸う」を公開!

こんにちは、広報Sです。
6月の新刊が発売しました。パチパチパチ!

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どちらも力作なので、書店で見かけたらどれどれ、と手に取っていただけると嬉しいです。『英熟語図鑑』は中学生以上ならお役に立つと思います。

ショートショート とってもふしぎな創作ドリル』は先日、編集担当Nが熱い裏話を書きました。

上記noteでも最後に告知がありますが、6月5日(金)21時からYouTubeで「おはなし」の続きを放送します。作家・心理カウンセラーの五百田達成さんと一緒に本ドリルにある短編の続きを実際に考えます。

明日の放送に備えて、ドリルに掲載している短編「月を吸う」をnoteに公開します。ぜひ読んでお待ちいただければと思います。では、どうぞ!

月を吸う

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誕生日に買ってもらった望遠鏡を試そうと、ぼくは近所の公園へと出かけていった。
今日は、黄金色のまん丸の満月が空に出ている。それを観測しようと思ったのだ。
と、月のクレーターを眺めながら、まるで泡がはじけた跡みたいだなぁなどと思っていたとき、人の気配を感じてあたりを見た。すると、少し離れたところに、少年の姿を発見した。

なんとなく気になって見つめていると、月明かりの中、少年は何かを手にして口元にあてた。それは一本のストローで、少年はストローを空に向けて飲み物を吸うようなしぐさを見せた。
「ねぇ、なにやってるの?」
ぼくはそちらに近づいて、思い切って話しかけた。
少年はストローをおろしてこちらを向くと、平然と言った。
「なにって、月を吸ってるんだよ」
「月を吸う……? なに言ってるの? 月なんて吸えるわけがないじゃない」
ぼくが首をかしげると、少年はふしぎそうな顔をした。
「そっちこそ、なに言ってるの? 月はこんなにおいしいのに。そしたらさ、ちょっとそこで見ていなよ」
そう言うと、少年はストローを口にくわえて、その先っぽを夜空の満月のほうへと向けた。その瞬間、ふしぎなことにストローの先っぽは満月の中へと入っていったように見え、その黄金色も少しだけゆれた気がした。

そして、少年がストローを吸ったと思った、その直後のことだった。彼の手にしていたそれが先っぽのほうから輝きはじめ、あっという間に全体が光で満たされた。まるで黄金色の液体を吸いこんでいるかのようで、ぼくは先ほどの「月を吸っている」という言葉を思いだした。

少年は、本当に月を吸いこんでいるのかもしれない──。
ぼくはたまらず、彼に聞いた。 
「ねぇ! 月ってどんな味なの?」
「すごく甘いよ」
「ぼ、ぼくも吸ってみたい!」
身をのりだすと、少年はポケットから別のストローを取りだして、「はい」と言って渡してくれた。
「やってみなよ」
ぼくはそれを受け取ると、見よう見まねで月に向かってストローをつきだしてみた。
「もっと右だよ。そうそう、そのへん」
少年に言われながら位置を決めて、勢いよくストローを吸いこんでみた瞬間だった。ハチミツよりも、もっともっと甘い味が口の中へと一気に流れこんできた。
「うわあ……おいしい……!」
紅茶みたいな上品な香りも、すーっと鼻から抜けていく。
ぼくは少年と一緒になって、夢中で月を吸いつづけた。

やがて満腹になってきたころ、ぼくはあることに気づいて声をあげた。いつのまにか、月が少し欠けていたのだ。
それを伝えると、少年は言った。
「吸えば少なくなるのは当たり前でしょ? 月っていうのは、こうやって吸うから欠けるんじゃない」
「ええっ! でも、それだと吸いつづけたらなくなるんじゃ……」
「そうだよ。どんどん欠けて、ぜんぶ吸い終わったときが新月ってわけ。そのあとは、放っておくと少しずつもとに戻っていって、満月になったら、また吸うの」
そんな話は初めて聞いたが、自分も体験した以上、何も言うことはできなかった。
ぼくが、ぷっくりふくらみ黄金色に輝いているお腹をさすっていると、少年は言った。
「じゃあ、そろそろ帰るね。あっ、でも、最後にアレやろっ」
そう言うと、少年はまたストローを空にかざした。

*************

おはなしは、ひとまずここまで。
このあと、少年は何をするつもりなのでしょうか?
このおはなしの続きを、田丸先生と五百田さんがYouTubeで考えますよ。どんな続きになるんでしょうか。6月5日(金)21時放送のYouTubeに乞うご期待!

ちなみにドリルには、田丸先生によるおはなしの続きが書いてあります。でもおはなしの続きに正解はありません!ぜひ創作する楽しさを体験してみてください。本書の漢字にはふりがながふってあるので、小学校4年以上なら一人で取り組むことができます。親子で続きを考えるのも楽しいですよ。

本書には不思議なおはなしが15本掲載されています。


私が好きなのは「骨のオシャレ」「喉の手」「星捕り」「雨のコーヒー」です。どれも「世にも奇妙な物語」ですぐに映像化されそう(テレビ局の方、ご連絡お待ちしております!)。短編はすぐに読めるし、気分転換にもいいですよね。
ではでは!

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