読書で心をデトックスする。『すべての人にいい人でいる必要なんてない』
「人間関係で悩みがあるでしょう?」
これは、占い師がよく使う言葉だそうです。
たいていの人は人間関係に何かしらの悩みを持っているので、「すごい、当たってます!」と驚くのだとか。
でも確かに、人間関係には悩みがつきものです。
友達、恋人、家族、親戚、同僚、それから、友達未満・知り合い以上みたいな関係の人。
どんな間柄にも多かれ少なかれ問題は存在していて、ときには耐えられないほど、心が重く苦しくなってしまうこともあります。
そんな辛さを和らげてくれる、エッセイのような、詩のような読み物があります。
韓国の文筆家、キム・ユウンさんがしたためたこの本には、さまざまな人間関係が描かれています。
恋人との楽しさ。
別れの哀しさ。
家族との心地よさ。
ふいに襲ってくるわずらわしさ。
友達と共有できる嬉しさ。
わかりあえなかったときの苦しさ。
それらがときにエッセイ風に、または詩のように、あるいは小説のかたちをとって、「わたし」や「ぼく」の一人称で書かれています。
その心のありようが、とても細やかに、的を射て描写されているので、「これは私のことだ」と胸を突かれるひとことが随所に見つかります。
ときには読んでいて嫌な思い出が浮かんでしまい、少ししんどさを感じることもありますが、読後感は不思議にすっきりしたものです。
本書は人間関係の悩みの解決策を提示してくれるわけでも、マインドセットのやり方を教えてくれるわけでもありません。
ただただ人と付き合っていく中での心の動きが表現されているのみです。
でも読んでいるだけで、心の中に渦巻いているもやもやがどんどん言語化されて、ふわふわと消えていくのに気がつくはずです。
それはたぶん、筆者に悟りきっているようなところがなく、今もまさに悩んでいる等身大の女性として、私たちと同じ目線に立ってくれているからでしょう。
繰り返しになりますが、この作品集にはさまざまな人間関係が描かれています。
その中には、もちろん、自分自身との関係も。
タイトルの『すべての人にいい人でいる必要なんてない』。
このあと、あなたならどう続けますか?
筆者の回答のひとつはこうです。
すべての人に対していい人でいることを放棄した。
自分にとっていい人になることにした。
(文=安岐はづき)
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