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社会人向けアイデアソン「SPIKEグランプリ」で「準グランプリ」に選ばれました!

2024年3月31日、「SPIKE Ideation Project Grand Prix 2024(SPIKEグランプリ)」にて、私たちのチーム「ミューチュアル」のアイデアが「準グランプリ」(賞金30万円、2チーム)に選ばれました!

「SPIKEグランプリ」は、2011年に東京大学i.schoolのディレクター陣によって創業されたコンサルティングファームであるイノベーション・ラボラトリ株式会社(i.lab)が主催する「業務経験5年以上の社会人を対象者とした、プロジェクトの設計や実施能力を競い合うグランプリ(フライヤーより)」です。

最大3人のチームで応募し、与えられた期間とテーマで「事業アイデア」を考え、そのアイデアと、アイデアに至るまでの「プロセス」が評価されます。

2日間のセミファイナル

メンバーの経歴とチームの編成理由、そして取り組みたいテーマなどをまとめた書類による選考で「セミファイナル」に選ばれたのは70チーム以上。

与えられた期間は2日間。テーマは以下の3つの中から1つを選び、「アイデア」「プロセス」「フリーフォーマット」の3ページからなる資料にまとめて提出するというものでした。

  • 「飲み会」のオルタナティブ


  • 「部活」のオルタナティブ

  • 
「タワマン」のオルタナティブ

この中から私たちが選んだテーマは、人によって好き嫌いが分かれる「飲み会」。人それぞれに意見がありますが、「個人」の視点だけでなく、「会社」にとっての飲み会や、「社会」にとっての飲み会といったより広い視点から見ることで、飲み会が多くの人に嫌われてしまう背景や、飲み会の本来の意義を明らかにしました。

かつて、親戚同士のつながりや地域のつながりが強かった頃は、結婚式や法事や地域のお祭りなど、たくさんの飲み会が生活の中に頻繁にあり、子供の頃から飲み会という場に居合わせる機会が多くありました。

しかし、核家族化、少子化、地域のつながりの希薄化などによって、そうした機会が少なくなった結果、飲み会という場に慣れていないために有効活用できず、飲み会に苦手意識を持つ人が増えたのでは無いかと考えました。

飲み会は、所属や世代を超えた対話を通して、個人の視野を広げ、個人の成長につながるだけでなく、相互理解によって会社の仕組みのアップデートが行われ、仕事がよりスムーズに進むようになるなど、会社全体の成長にもつながります。

「飲み会」の良い面を、誰もが享受できるようにするにはどうすればいいかと考え、たどり着いたのが、ファシリテーターによって対話を促す「ダイアログ酒場」というアイデアでした。

そして、このアイデアが評価され、「ファイナル」に進む9チームの中に残ることができました。

1ヶ月間のファイナル

「ファイナル」の期間は1ヶ月。テーマは「〇〇のオルタナティブ」でした。つまり「〇〇」にどんな言葉を当てはめるかは各チームに委ねられる形になりました。どんなテーマを選ぶかも評価につながる重要なポイントになります。

「アイデア」と「プロセス」の概要を2ページの資料にまとめ、最終日に、8分間のプレゼンテーションと5分間の質疑応答を行い、ゲスト審査員による審査を経て受賞が決まります。

私たちが、テーマとして着目したのは「家族」でした。

プロセス:調査、分析、統合

「孤独・孤立」「ヤングケアラー」といった「家族」に関わる現代の社会問題を起点に、時代を遡りながら「家族」を知り、個人の「心理」というミクロな視点と、「組織」や「社会」といったマクロ視点を行き来することで、現代社会の歪みを明らかにしたのち、AIを駆使したマッチングアプリの「バチェラー」や、子育て支援マッチングの「ファミリーサポートセンター」など、自分たちの実体験も頼りに事業アイデアを考えていきました。

むかしの「家」には、「たくさんの仕事」があり、「たくさんの家族」が支え合って生活していました。家族の仕事を見て、憧れ、学び、貢献し、「みんなの役に立てた感」が、新たな挑戦へのモチベーションになります。家族のサポートがあることで、失敗を恐れずに挑戦し、得意なことや好きなこと、自分の可能性を見つけ、成長していくことができました。お互いを高め合う好循環がありました。

しかし、社会的分業が進み、家族がそれぞれ別々の仕事に就くようになった結果、核家族化が進みました。仕事はより高度で専門的になり、国際分業も進み、生活を支える仕事の多くが、直接目にすることのできないものになっていきました。

現代の家族は、外で働き、稼いだお金で生活しています。助けてくれるのは便利な製品やサービスで、憧れの対象は、例えばインフルエンサーなど、メディアの情報によって作られるようになりました。その結果、家族のニーズや社会のニーズに応えることができなくなり、構造的に「みんなの役に立てた感」を得にくくなりました。

一人暮らしをする人も多くなった現在、人々の生活は、他者から見えにくいものになり、必然的に支え合いの関係が失われていきました。

社会が見えにくいため、孤独感、疎外感、閉塞感が募っていきます。社会が見えにくいため、誰にも認められずに自暴自棄になったりします。こうして、多くの人が道を見失い、社会全体の停滞に繋がっています。巨大で複雑で、目に見えない社会に対して、「自分に何ができるか」を見つけるには、とにかくいろんなことをやってみるしかありません。

アイデア:「ホーム」のオルタナティブ

かつて「家」の中で得られた「お手伝い」の体験を、「社会全体」で再現する仕組み、「手伝いを必要とする人」と「手伝える人」を「マッチングする仕組み」が必要なのではないか。たとえ、血のつながりはなくても、「支え合いの経験」によってつながる関係で、自分の「存在価値」を感じられる、「ホーム」と呼べるようなものが今、必要ではないかと考えました。

いろんな人の、いろんな「お手伝い」を通して、「みんなの役に立てた感」を得て、自信が生まれ、たくさんの「出会い」から、憧れ、理想、「やってみたい」と思うことを見つけ、挑戦と成長につながるという、かつての「家」にあった好循環が生まれ、知らなかった世界や、自分の可能性に、気付くきっかけになります。

しかし、「手伝ってほしい」と、声を上げるのにはハードルがあります。そこでヒントになったのが「ゲーム」でした。

大人も子供も、たくさんの時間と能力を「ゲーム」に使っています。ゲーム感覚で、「手伝ったり」「手伝ってもらったり」が、気軽に楽しくできたらどうでしょうか?

「クエスト」として「手伝ってくれる人」を募集、報酬は「ポイント」でやり取り。いろいろな仕事をこなして、条件をクリアすると、バッジをもらえたり、より難しいクエストに挑戦できる、といった仕組みによって、「単純作業」もゲーム感覚で楽しめます。

「クエスト」の作成も、「AIとのチャット」で、より簡単に、「みんなが "やってみたい!"と思えるようなクエスト」を作成することができるのではないかと考えました。

「得意なこと」や「暇な時間帯」を設定すると、「手伝ってください!」と声がかかり、クエストを受けると、物語の主人公になります。大した事ない依頼でも、助けてもらった人にとっては「ヒーロー」です。

クエスト後、手伝った人手伝ってもらった人、双方で評価しあったものを、AIがマイルドな言葉で成績表にまとめます。客観的な自分の評価がみれることで、新たな一面を知ったり、成長を感じられ、モチベーションを維持できると共に、よりピッタリなクエストとマッチングしやすくなります。

3人のストーリー

具体的な使われ方を考えるにあたって、3人のユーザーストーリーも考えました。

ストーリー1:独身一人暮らしの30代女性

起:友人たちが結婚して子どもを産んでいく中で、人生について悩んでいました。仕事も趣味も日々充実しているけど、両親や自分の老いを感じ、仕事も日々知っていることの繰り返しで、漠然と将来への不安を抱えていました。
承:候補に出てきた「スナック営業前のお掃除」というクエストに目が留まりました。これまで入ってみたいけど入る機会がなかった近所のスナック。何気なく応募しました。
転:スナックでのクエストでは、いつもの生活では味わえない空間に居場所と仲間ができました。スタッフへのママの教訓話は、彼女にとって新鮮で、惹きつけられるものでした。
結:クエストで持ち帰った異なる領域の知識や経験を活かすようになり、仕事やプライベートが以前よりも楽しくなってきました。彼女は、日々、新たなクエストに挑戦することを、楽しんでいます。

ストーリー2:両親が共働きの小学生

起:放課後の時間は習い事でいっぱいでした。本当は、自由に外を探検したり、新しい人々と出会ったりしたいけど、両親は、習い事に行って誰かと安全に過ごしていて欲しいと考えていました。
承:「近所のおばあちゃんの家の柿の収穫」というクエストが候補に出てきて、両親と相談。おばあちゃんの評価もいいし、柿が大好きな彼女は、収穫の経験がないながらも、ワクワクしながらそのクエストに挑戦することにしました。
転:当日、両親と共に、おばあちゃんの家の柿を、夢中で収穫しました。収穫後、おばあちゃんと一緒に縁側でお茶を飲みながら、会話を楽しみました。たくさんの柿を分けてもらい、両親も喜んでくれました。
結:それから、週に1日は習い事の代わりに様々なクエストをするようになりました。おばあちゃんの家にもよく遊びに行っています。地域にたくさんの知り合いができたことで、両親も安心。新しいことにワクワクしたり、憧れる大人や寄り添ってくれる大人を見つけ、友達が増えて楽しそうです。

ストーリー3:定年を迎えた60代後半の男性

起:家では妻が自営業をしており、昼間は居場所がありません。今後の生活に寂しさと不安を感じていました。父親が定年後に元気をなくしたことを思い出し、自分もそうなるのではと心配になっていました。
承:「ラーメン屋での試食と意見募集」というクエストを見つけ、自分でも意識してなかったけどラーメン好きの彼は、このクエストに挑戦してみることに。
転:当日、店主と他の参加者と共に新作のラーメンを試食、皆のラーメン談義は盛り上がり、文化祭のようで、やりがいを実感!
結:店がオープンしてからも、時々店を訪れたり、試食会のメンバーとラーメン屋巡りを楽しんでいる彼。また、ラーメンブログを始めるなど、新しい趣味を見つけました。自分のスキルを活かし、新しい出会いや仲間を得た彼は、充実した日々を送っています。

まとめ:「ホーム」のオルタナティブ、始めましょう!

本当の家族はみんな忙しそうだったり意外と日々での関係が薄かったりします。「家族」という固定観念にとらわれず、自分にあったライフスタイルで、たとえ一生独身だったとしても、「家族」のような「温かいつながり」を持てるような、血縁や出身にも縛られない、もっと柔軟な社会に!お互いを高めあう、成長を促す好循環。得意なコトを見つけて、より輝ける自分の居場所を見つけられる!そんな、生き生きとした社会のために!「ホーム」のオルタナティブ、始めましょう!

結果発表:「準グランプリ」に選ばれました!

結果として、私たちの「地域のお手伝いマッチング」というアイデアは、その検討の「プロセス」が特に評価され「準グランプリ」に選ばれました!

「今の家庭の問題」を起点に、昔に遡って「そもそもの家族のあり方」を振り返ってから、「未来の家族」を考えるという「時間軸」と、「個人の問題」「家族の問題」「社会の問題」といった範囲の広さを変えながら考えるという「空間軸」。この2軸を行き来しながら、多面的に「家族」を捉えて具体的なアイデアにつなげていったという点を高く評価していただきました。

アイデアとして詰めきれていない部分もあり「グランプリ」には及びませんでしたが、他のチームの方からも「アイデアに共感した!」「プレゼンが分かりやすかった!」などうれしい言葉をたくさんいただくことができました。

まとめ

今回、この「SPIKEグランプリ」に参加したことで、他の参加者の方々の発想やプロセスを知ることができ、同時に、自分たちの強みも改めて実感することができました。

さまざまな知識とアイデアを、柔軟に論理的に組み立てて、収束させていく加藤と、あれもこれも、なんでも取り込んで想像を広げ、アイデアを発散させていく松本、この2人だからこそ成し得た「準グランプリ」だったのではないかと思います。

もしかしたら、日々取り組む思考トレーニング「きょうの正解」の効果もあったのではないかと感じました。これからも柔軟に「発散」と「収束」が共存するようなチームでいられるように精進します!