(詩)似合うよ 2021.6.9

あの日あなたは私に服を買ってくれた。

「似合うよ」と。


その服を着て友達に会った。

「いつもとイメージが違うけどよく似合ってる。かわいい」

そう言われた。うれしかった。


だけど私は、その服が好きじゃなかった。



ある日あなたは言った。

「ファッションは自分の表現だ」

「だからちゃんとこだわっておしゃれをしなくちゃいけない」


それなら私は、

もうあの服を二度と着ない方がいい。

あの服を着れば着るほど

よくわからない息苦しさがまとわりついてきたから。


私はこういう人間じゃないって、

その服を着ている私の心がつぶやいていたんだ。

きっと。



私はこっそり、あの服を捨てた。

そして、

自分を取り戻した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?