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読了「カラフル」

こんにちは。ヒノカンです。

暑いですね、残暑じゃなくて酷暑ですね。
クーラーの冷気ばかり浴びて、体の感覚が変になってます。
だからと言って外に出るのも暑すぎて、生きずらい世界です。

外に出られないから、と。
家の本棚を整理して、小学校の時に読んだ『カラフル』という小説を見つけて、
10年ぶりほどに読みました。

そうしたら、昔読んだ記憶が、蘇るようで、ページをめくる指の動きが止まらず、
1日で読了。昔「面白い」と夢中になって読んだ本は今でも面白いな、としめしめと実感した。確か、小学校の時これを初めて読んで、”ぼく”が小林真の肉体に入り、小林真として染まっていき、生きることに執着していく心境の変化が面白くて、何度も読み返した気がする。

内容は・・・
私が説明しなくても皆さん既に読まれているんじゃないでしょうか。
前世に大きな過ちを犯した魂が、厳選なる抽選の結果、もう一度生まれ変わり人生を見つめ直す、という物語。”ぼく”の魂が、自殺した小林真の肉体に仮住まいをし、人生をやり直してみる、という俗にいう転生系ノベル(語弊)

仮住まいの人生だからこそ、”ぼく”は、小林真の身の回りの人々、感情に対して常に傍観者気味。フットワークも軽く、思い切りで行動する。だからこそ、傍若無人に相手に対して率直に発言し、元小林真が勇気を出して言えなかったカミングアウトや口喧嘩をする。例えば、母の不倫を問い詰め、初恋の相手のひろかがおじさんに身体を売ろうとする所を引き止めた。
 腹を割って話せて行動したからこそ、相手と話し合え理解することもできた。そして、早乙女くんという友人もできた。元小林真に眼中になかった、唱子が"真に話しかけてきた。

 登場人物の会話をみる限り、元小林真は、どこか話しづらいオーラがあったそうだ。引っ込み思案で、意気地なしで、ぼさっとどこか遠くを見つめていた。
 しかし、中身(魂)が変わり、New小林真は、(仮住まいの肉体だからこそ)思い切りがよく、制限付きの人生だからこそ目の前の事柄と人間関係に真剣だった。

 ・・・とまとまりの無い感想を書いてきたが。

 この小説は、「夏休み読書感想文おすすめブックリスト」に毎年載るほど、学びの多い小説だ。取り上げる問題は、数え切れないほどある。
 家庭問題、母親の不倫、兄弟関係、恋愛、進路、そして自死について。

 どの問題を視点に考えても、「カラフル」は考え甲斐がある。しかし、文章量が膨大になってしまう。どうしよう。一つに絞ろう。

 人生始まったばかりで何もわからないから、賭けのように飛び出してみる必要があるってことをこの本から感じた。

 いじめられても、兄から皮肉を言われたり、現実世界に辛いことがあっても、美術室で絵が描けれさえいれば幸せだった真。特徴のない顔立ちと、伸びない身長、意気地なしで想いを伝えることが下手な真だが、絵を描く時だけ、自分の吸収した美しい自然風景を、思うがまま、画面に素直に表現していた。自分を唯一表現できる方法である絵を描くことで彼の心は浄化されて静まっていた。それはなんだか、自分の精神を落ち着かせる儀式のようで、読んでいて、真が絵を描く時だけ、ゆっくりと時間が過ぎていくようだった。

 元々の「人生再挑戦ゲーム」としての”ぼく”の使命は、”ぼく”の人生の過ちを思い出すこと。そもそも”ぼく”は何だったか思い出せずに雲をつかむような無理難題のゲーム。「ぼくは何か」を探すって、この”ぼく”じゃなくて、常に私たちが行なっていることではないかと考えた。特に学生は、進路決めとともに自分の人生の方向を絞っていく。果たしてそれが良いのかどうかはわからなくて、「充実した人生とは何か」を雲をつかむように探す。
 ・・・という私、日野寒月も大学生で、進路を決める大きな時期の真っ最中である。この決定が幸せか、失敗かは誰もわからない。だから怖くて前に進めない。「カラフル」での小林真もどれが正しい正解か、わからず前に進めなかった。身長を気にして、身長を誤魔化すためにシークレットブーツを買ったり、地味な印象をぶち壊すために、真っ赤なシャツを買ったりした。だけど周りが何か言うこと(特に兄)や、変化することに気後れしてしまっていた。

 だんだん、平坦で味気ない人生で飽きてきて、ある出来事の連鎖で絶望して死んでしまった小林真。

 でもそうではなくて、人生とは、失敗覚悟で挑戦も必要だってこと。客観的人生を送れたNew小林真は、挑戦に気後れがなかった。だからこそ周りの人間関係が変化し、経験も様々したことで度胸がついた。

 さらに、物語中盤部分の父親の言葉が印象に残る。

父さんの人生は父さんなりに、波乱万丈だ。いいこともあれば悪いこともあった。それでひとつだけ言えるのは、悪いことってのはいつかは終わるってことだな。ちんまりした教訓だが、ほんとだぞ。いいことがいつまでも続かないように、悪いことだってそうそう続くもんじゃない

 人生に「成功」「失敗」で決まらず、悪いことも良いことも繰り返し起こり、自分で切り返すから充実するということに気づかされた。自分がどう、挑戦し苦境に乗り越え、幸せな、極彩色の人生にできるかは自分の行動次第なんだと深く思えた。

 随分と長くなってしまったが、そういうことを22歳で10年ぶりに「カラフル」を読んで感じた。10年分学んだだけ、この本を読んで吸収する学びが多かったと、視点も多くひらけて読んでいて面白かった。

皆さんも、自分が小さい頃読んでいた本をもう一度本棚から引っ張り出して読んでみるのはいかがでしょうか。

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『カラフル』森絵都 
文春文庫 505円+tax
公式ページ 

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